マンション大規模修繕とカビの意外な関係|外壁・シーリング・結露を一体で考える

大規模修繕は、建物の寿命を延ばすための大きな投資です。一方で、カビバスターズ北海道には「修繕工事のあとから室内の結露がひどくなった」「外壁を直したのにカビが止まらない」というご相談が届きます。これは工事が雑だったという話とは限らず、外部の防水性能を上げることと、内部の湿気を逃がすことは別の問題だからです。
この記事では、管理組合・オーナー様向けに、大規模修繕とカビの関係を整理します。工事の前に確認しておきたいこと、工事中に見ておくべきこと、終了後の確認を中心にまとめました。
1. 工事時期と降水量の関係
北海道の外装工事は、雪のない時期に集中します。下のグラフは札幌の月別降水量(気象庁 平年値)です。

8月は126.8mm、9月は142.2mmと、年間でもっとも雨が多いのは8・9月です。この時期は工事の繁忙期と重なります。外壁の下地が含水したまま塗膜をつくると、水分の逃げ道が閉ざされ、後からフクレや剥離の原因になることがあります。
工程表を見るときは、雨天時の取り決めと、下地の含水率をどう確認するかが記載されているかを見てください。気象条件の判断基準が書いてある工程表は、それだけで信頼できる材料になります。
2. 修繕後に結露が増えることがある理由
外壁の防水を高め、シーリングを打ち直すと、建物の気密性は上がります。これ自体は良いことですが、次の2つが同時に起きます。
変化 | 室内への影響 |
すき間からの自然換気が減る | 生活で出た水蒸気が抜けにくくなる |
外壁の含水が一時的に残る | 外壁面の内側が乾きにくくなる |
つまり、工事前と同じ換気の使い方をしていると、室内の水蒸気量が相対的に多くなるのです。工事の直後に居住者から申告が集中するのは、この変化に気づかないまま冬を迎えるからです。
居住者への周知が効く
工事完了のタイミングで、「換気設備を止めないこと」「給気口を塞がないこと」を改めて周知するだけで、翌冬の申告件数は変わります。工事のお知らせに一行加えるだけのことです。
3. 工事前に確認しておきたいこと
確認項目 | なぜ必要か |
共用部・専有部の結露・カビの現状 | 工事前の状態を記録し、後の判断材料にする |
地下・機械室・駐輪場の湿気 | 外壁だけでは解決しない範囲を把握する |
過去の漏水履歴 | 内部に残った水分の有無を確認する |
換気設備の種別と状態 | 気密性向上後の換気量を見積もる |
バルコニーの排水ドレン | 詰まりは上階からの浸水の原因になる |
とくに1つ目の「工事前の現状記録」は、後でもめごとを避けるうえで大きな意味を持ちます。工事のせいにされるのではないかという施工側の懸念にも応えられます。
4. カビの観点で見る工事項目
工事項目 | カビ・湿気との関係 | 見ておくべきこと |
外壁塗装 | 透湿性の違いで壁内の乾き方が変わる | 使用材料の仕様と下地の含水確認方法 |
シーリング打替 | 雨水の侵入経路を止める最重要項目 | 窓まわりと目地の施工範囲 |
屋上防水 | 最上階の天井カビの直接原因 | ドレンの数と樂廻の取り方 |
バルコニー防水 | 下階への浸水につながる | 排水ドレンの清掃と勾配 |
サッシ周辺の改修 | 結露量に直接影響する | 内窓追加の可否と換気とのセット |
換気設備の更新 | 気密性向上後の湿気排出を担う | 修繕計画に含まれているか |
多くの修繕計画は、建物の外側を直すことに重点が置かれます。それは正しい優先順位ですが、最後の「換気設備の更新」が計画に入っているかどうかは、居住者の満足度に大きく関わります。一度確認してみてください。
5. 工事中に見ておくべきこと
足場がかかっている期間は、普段見られないところを見れる貴重な機会です。
場所 | 確認すること |
外壁の北面 | 藻・黒い汚れの広がりと乾き方 |
窓下の外壁 | 結露水が流れた跡、塗膜の膨れ |
連絡バルコニーの隔て板下部 | 排水の滞りと堆積した汚れ |
パラペット内側 | ひび割れと雨水の回り込み |
空調スリーブの周囲 | コーキングの劣化と雨水侵入 |
この機会に写真を残しておくと、次回修繕までの12年前後の間に何が起きたかを判断する基準になります。管理組合の役員が交代しても引き継げる資料になるという点でも意味があります。
6. 工事後にカビが残った場合
外部を直しても、すでに内装の下地に入り込んだカビは自然にはなくなりません。次のような状態は、別途の対応が必要です。
サイン | 示唆される状態 |
工事後も同じ場所にカビが戻る | 内装下地に残存している |
壁紙を張り替えても浮いてくる | 下地ボードが含水している |
共用部のにおいが消えない | 地下・パイプスペースなどに発生源 |
複数の住戸から同時に申告 | 換気・断熱など建物全体の要因 |
弊社では、修繕工事とは別に、カビの除去と防カビ処理だけを切り出してお受けすることもできます。修繕の履行中に、別途専有部の対応を並行させるといった進め方も可能です。
7. 相談するかどうかの判断基準
判断軸 | 相談を検討する目安 |
申告件数 | 同じ内容の申告が複数の住戸から出ている |
共用部 | 廄下・階段・地下ににおいや変色がある |
再発 | 清掃・内装やり直し後も戻る |
説明責任 | 総会や理事会への説明資料が必要 |
時期 | 修繕計画の検討段階にある |
とくに「修繕計画の検討段階」でのご相談は、もっとも選択肢が広いタイミングです。修繕の範囲に含めてしまうのか、別途対応にするのかを、予算とあわせて検討できます。
8. MIST工法®という選択肢
カビバスターズ北海道が採用するMIST工法®は、素材の状態に合わせて専用剤を調整し、強くこすり落とさずにカビを除去することを基本とした工法です。共用部の仕上げ材を削らずに処理できるため、原状回復の範囲を抑えられる場合があります。除去後は防カビ処理を行います。費用は面積・素材・作業環境によって変わるため、現地確認のうえでお見積りをご提示しています。管理組合様向けに、調査報告書の作成も承っております。
9. まとめ
札幌の降水量は8月126.8mm、9月142.2mmと年間で最も多く、外装工事の繁忙期と重なります(気象庁 平年値)。
外部の気密性が上がると、同じ暮らし方でも室内の水蒸気が抜けにくくなります。
工事前の現状記録と、居住者への換気周知の2つで、翌冬の申告は大きく変わります。
既に内装下地に入ったカビは、外部を直してもなくなりません。別途の対応が必要です。
大規模修繕は12年前後の間隔で行われることが多く、次の機会はなかなかやってきません。このタイミングでカビ・湿気の視点を入れておくことは、長い目で見て大きな差になります。
出典
気象庁「過去の気象データ検索 平年値(1991〜2020年)」札幌
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
建築基準法に基づく24時間換気設備の義務化(2003年施行)
【補足】よくいただくご質問
Q. 内窓(二重窓)を入れれば結露はなくなりますか
窓ガラスの表面温度が上がるため、窓での結露は大きく減ります。ただし、室内の水蒸気量そのものは変わりません。行き場を失った水蒸気が、次に冷たい壁面や収納の奥に回るということが起きます。内窓を入れるときは、換気の見直しとセットで考えるのが原則です。
Q. 専有部のカビは管理組合の費用で対応できますか
管理規約や総会の決議によりますので一概には言えません。実務上は、発生原因が共用部分(外壁・配管・屋上など)にあるのか、専有部分の使用方法にあるのかで切り分けるのが一般的です。この切り分けのために、客観的な調査資料が役に立ちます。
Q. 修繕工事中に並行してお願いできますか
可能です。足場がかかっている期間は、普段は入れない場所にもアクセスしやすく、居住者への周知も一本化できます。ただし、工程の干渉を避けるために、施工会社・管理会社との事前のすり合わせが必須になります。日程の調整を含めてご相談ください。
Q. 一度除去すればもう出ませんか
除去と防カビ処理を行えば、同じ場所に戻りにくくなります。ただし、結露を生む条件(断熱・換気・暮らし方)が変わらなければ、時間をかけて同じ条件に戻っていきます。だからこそ、大規模修繕のように建物側に手を入れられるタイミングは、もっとも効果が出やすい機会といえます。
【補足】修繕後の初めての冬に向けた周知文例
居住者への周知は、長い文章よりも短く具体的なほうが伝わります。以下は、掲示板や回覧にそのまま使える形での参考例です。
項目 | 伝える内容の例 |
変化の説明 | 修繕工事により建物の気密性が高まっています |
お願いしたいこと1 | 24時間換気のスイッチを切らないでください |
お願いしたいこと2 | 各部屋の給気口を家具やテープで塞がないでください |
お願いしたいこと3 | 家具は外壁面から5センチ以上離してください |
連絡先 | 結露やカビに気づいたら、写真と日付を添えて管理会社へ |
この5行を周知するだけで、居住者側の対応は大きく変わります。とくに「写真と日付を添えて」と伝えておくことで、後から原因を切り分ける際の材料が自然に集まります。管理会社の対応工数も減らせます。
修繕後の最初の冬は、建物の条件が変わって最初のシーズンです。ここでの情報収集が、次の12年の管理の質を左右します。北海道内のマンション・集合住宅であれば、現状のご相談からお受けします。
【補足】道内の集合住宅で特に多い相談場所
場所 | 背景にあること |
最上階の天井・壁の上部 | 屋上防水の劣化、小屋裏の換気不足 |
北側の審室とクローゼット | 日射がなく、家具で空気が止まる |
パイプスペースの周囲 | 配管の結露と点検口の閉鎖 |
地下駐輪場・自転車置場 | 地中温度と融雪水の持ち込み |
廄下の突き当たり | 空気が流れず温度差が大きい |
このうち、最上階と地下の2つは、居住者の使い方ではどうにもならない領域です。建物側の対応が必要になるため、修繕計画の中で優先順位を付けて検討する価値があります。
逆に、北側の居室やクローゼットは、家具を壁から離す・扉を開けるといった周知でも相当改善します。建物で対応すべきところと、周知で対応できるところを分けると、限られた修繕予算を効かせやすくなります。この切り分けを含めて、調査の段階からご相談いただけます。




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