倉庫・物流施設のカビと在庫損害|段ボールの吸湿と床面結露を防ぐ実務ポイント

倉庫や物流センターでのカビは、「建物が汚れる」だけの問題ではありません。保管している商品そのものに値段がつかなくなる、回収・廃棄コストが発生する、取引先からの信用を損なう——といった形で、直接の損失につながるのが倉庫のカビの厢いところです。しかも、発見されるのは出荷直前や納品先であることが多く、その段階では既に選択肢が限られています。
この記事では、北海道の倉庫・物流施設でカビが発生する仕組みを、露点温度という共通のものさしで整理し、現場ですぐに確認できるポイントと、対策の優先順位をまとめます。
1. 倉庫のカビは「床と外壁に接する面」から始まる
倉庫の内部は、居室のように常時空調されているわけではありません。大空間で、断熱は最小限、シャッターの開閉で外気が一気に入る——この条件下では、コンクリート床と外壁面が周囲よりも遅れて温度変化するため、この2つの面が結露の起点になります。
下のグラフは、室温と相対湿度から求めた露点温度です。「この温度を下回った面には水滴がつく」という、現場で使える実用的な目安です。

2. 露点温度を現場でどう使うか
上のグラフを表にしたものが下記です。倉庫内の温湿度を測れば、「何℃以下の面が危ないか」がその場で分かります。
室温\相対湿度 | 50% | 60% | 70% | 80% |
15℃ | 4.7℃ | 7.3℃ | 9.6℃ | 11.6℃ |
20℃ | 9.3℃ | 12.0℃ | 14.4℃ | 16.4℃ |
25℃ | 13.9℃ | 16.7℃ | 19.1℃ | 21.3℃ |
例えば夏の倉庫で室温25℃・湿度80%なら、21.3℃より冷たい面はすべて結露の候補です。地中温度の影響を受けるコンクリート床は、真夏でもこの温度を下回ることがあります。これが、盛夏に床面が濡れる現象の正体です。
測るべきは3点
測定箇所 | 使う道具 | 見るもの |
倉庫中央の空気 | 温湿度計 | 室温と相対湿度→露点温度を算出 |
コンクリート床の表面 | 非接触温度計 | 露点温度を下回っていないか |
北側外壁の内面 | 非接触温度計 | 床と同じく露点温度との差 |
非接触温度計は数千円台から入手できます。この2つの道具を現場に置くだけで、「なんとなく湿っぽい」を数値に変えられます。
3. 在庫そのものが湿気を抱え込む
倉庫の湿気問題が建物だけで説明できないのは、保管物自体が吸湿性を持つからです。
保管物 | 湿気との関係 | 現れ方 |
段ボール | 空気中の水分を吸って保持する | 底面のシミ、角のふやけ、潰れ |
木製パレット | 吸湿しやすく乾きにくい | 裏面の黒変色、釘部の錐び |
紙・布・飼料 | 有機物で栄養源になりやすい | 表面の白い粉、におい |
金属部品 | 結露で錐、包装材がカビの場に | 包装の内側だけが黒い |
とくに段ボールは、周囲の空気が乾くと放湿し、湿ると吸湿するという性質を持ちます。直置きのパレット最下段だけがやられるのは、床からの冷えと水分をもっとも受ける位置にあるからです。
4. 北海道の倉庫にある四季のリスク
時期 | 起きやすいこと | 優先する対応 |
3〜5月(融雪期) | 地盤の水分が上がり床面が湿る、外周の排水不良 | 床面の水分確認、外周排水の清掃 |
6〜8月(高湿期) | 外気の高湿が入り、冷たい床・壁で結露 | シャッター開閉時間の管理、除湿 |
9〜11月(温差期) | 日中と夜間の温差で内部結露 | 夜間の換気、最下段在庫の確認 |
12〜2月(凍結期) | 凍結と融解の繰り返しで水分が残る | 暖房区画と非暖房区画の境界を点検 |
もっとも相談が多いのは、意外に思われるかもしれませんが夏と融雪期です。どちらも、外から入る水分量が大きく増える時期です。
5. 現場ですぐに取り組める7つの対策
優先度 | 対策 | コスト感 |
1 | 在庫を床から浮かせる(パレットを必ず使う) | 低 |
2 | 外壁から30センチ以上離して積む | 低 |
3 | シャッターを開ける時間帯を決める | 低 |
4 | 温湿度計と非接触温度計を常備する | 低 |
5 | 床面の清掃を乾式中心に切り替える | 低 |
6 | 循環ファンで滞留をなくす | 中 |
7 | 業務用除湿機を区画単位で導入 | 中〜高 |
実行しやすさと効果のバランスがもっとも良いのは1・2・3です。物理的に離す、空気を動かす、湿った外気を入れない——この3つで、多くの現場は確実に改善します。
シャッター開閉の考え方
「換気のために開ける」は、条件によっては逆効果になります。外気の露点温度が倉庫内の床面温度より高いときに開ければ、入ってきた空気がそのまま床で結露します。時間帯ではなく、外気の露点温度で判断するのが原則です。
6. 在庫損害を防ぐ点検フロー
頻度 | 点検内容 | 記録方法 |
毎日 | 床面の濡れ、におい、最下段の箱の状態 | 日報にチェック欄を追加 |
週次 | 室温・湿度・床面温度の記録 | 表に書き取り推移を見る |
月次 | 外周排水、雨樋、シャッター下部 | 写真を残し前回と比較 |
季節の変り目 | 壁面・天井・架台奥の目視確認 | 受入・出荷の閒期に実施 |
大がかりな管理は続きません。日報に1行追加するところから始めるのが現実的です。記録があれば、万が一在庫損害が発生したときの原因特定も、保険や取引先への説明も格段に楽になります。
7. 自社対応の限界を示すサイン
清掃と換気で改善するケースは多くあります。一方で、次のような状態になっている場合は、現場の運用だけでは収まりにくいと考えてください。
サイン | 示唆される状態 |
除去しても1ー2か月で同じ場所に戻る | 下地や目地の内部に残存している |
倉庫全体ににおいが回っている | 見えている範囲外に発生源がある |
天井・高所の架台にも広がっている | 空気の循環で胞子が拡散している |
出荷先から指摘を受けた | 商品側に影響が及んでいる |
従業員から環境への不安の声が出ている | 労務・衛生面の課題になっている |
とくに「出荷先からの指摘」は、社内での優先度が一気に上がるサインです。この段階では、除去だけでなく「再発しないことをどう説明するか」まで含めて検討する必要があります。
8. 相談するかどうかの判断基準
判断軸 | 相談を検討する目安 |
範囲 | 床面・壁面の複数箇所、または高所に及んでいる |
商品影響 | 在庫に変色・におい・潰れが出ている |
再発 | 清掃後短期間で戻ることが2回以上 |
説明責任 | 取引先・監査への説明資料が必要 |
稼働停止 | 作業を止めずに進めたい事情がある |
倉庫は止められない、というのが現実だと思います。弊社では、稼働を止めずに区画を分けて進める施工計画もご提案しています。まずは現地を見せていただき、どこから手をつけるべきかを整理するところからで構いません。
9. MIST工法®という選択肢
カビバスターズ北海道が採用するMIST工法®は、素材の状態に合わせて専用剤を調整し、強くこすり落とさずにカビを除去することを基本とした工法です。除去後は防カビ処理を行い、再発しにくい環境づくりまでを一連で行います。費用は面積・素材・下地の状態・作業環境によって変わるため、現地確認のうえでお見積りをご提示しています。調査・お見積りのみのご依頼も承っております。
10. まとめ
倉庫のカビは、床と外壁面という「周囲より冷たい面」から始まります。
室温と湿度から露点温度を出し、床面温度と比べるだけで、リスクは数値で把握できます。
段ボールや木製パレットはそれ自体が吸湿します。床から浮かせ、外壁から離すだけで大きく違います。
シャッターの開閉は時間帯ではなく、外気の露点温度で判断するのが原則です。
在庫損害は、発生してしまってからでは取り戻せません。「この気配がしている」段階でのご相談が、もっとも損失を小さくします。北海道内の倉庫・物流施設であれば、まずは現状のご相談からお受けします。
出典
露点温度はMagnus式(a=17.62、b=243.12℃)による計算値
気象庁「過去の気象データ検索 平年値(1991〜2020年)」札幌
【補足】よくいただくご質問
Q. 除湿機を入れれば解決しますか
区画を区切って使えば効果は出ます。ただし、シャッターを频繁に開ける大空間では、除湿した側から次々に外気が入り、能力の大部分を外気の除湿に使ってしまうことがあります。まずは対象区画を閉じること、その上で容量を選ぶことをおすすめします。なお、気温が低い時期は方式によって除湿能力が大きく落ちるため、選定時の確認が必要です。
Q. 床に防水塗装をすれば防げますか
床下からの水分上昇には有効な場合があります。一方で、室内の空気が冷たい床面で結露する現象には塗装だけでは対処できません。水がどちらから来ているのかを先に切り分けないと、工事しても変わらないという結果になりかねません。切り分けには、床面にビニールシートを貼って一晚置き、裏側が濡れるか表側が濡れるかを見る方法が簡便です。
Q. カビ臭のついた段ボールは差し替えればいいですか
商品を守る意味では有効です。ただし、周囲の環境が変わらなければ新しい段ボールも同じことになります。交換と同時に、その場所の温度・湿度・空気の流れを確認してください。
Q. 食品を扱っています。施工中の影響が心配です
取り扱い品目や常温・冷蔵などの条件によって、適した進め方は変わります。在庫の移動可否、作業可能な時間帯、養生の範囲などを含めて、現場の運用に合わせた計画を事前にすり合わせしてから着手します。ご懸念の点は、調査の段階で遠慮なくお伝えください。
【補足】低温倉庫・冷蔵区画で注意すること
低温ならカビは生えない、と考えられがちですが、実際には低温域でも発育するカビは存在します。さらに問題になりやすいのは、常温区画と低温区画の境界部です。扇や前室、ドックシェルターの周辺は、温度差が大きく、人も台車も頻繁に出入りするため、湿った空気が冷たい面に触れやすい位置にあたります。
場所 | 見るポイント |
前室・風除室 | 天井と壁の境界、扇の上部レール |
ドックシェルター | ゴム幌の裏側、台座の継ぎ目 |
冷却器のドレン | 排水配管の詰まり、受け皿の汚れ |
常温への出口 | 台車タイヤが運ぶ水と汚れの蓄積 |
こうした境界部は、日常の清掃動線から外れやすい場所でもあります。月に一度、意識して見上げる・覚き込む時間をつくるだけで、発見の早さは大きく変わります。倉庫のカビは、現場の日々の運用と建物の条件が重なって起きます。どちらか一方だけを見ても、原因にはたどり着けません。カビバスターズ北海道では、除去だけでなく、現場で続けられる運用の提案までを含めてご相談を承っています。




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