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新築1年目に出るカビの正体|高気密高断熱住宅の「初期含水」と乾燥期間

2 日前
読了時間: 8分

「新築なのにカビが出た」というご相談は、意外に多く寄せられます。新しい家なのになぜ、と驚かれるのは当然だと思います。しかし、建物の仕組みから見れば、新築1年目は家がもっとも多くの水分を抱えている時期です。この記事では、北海道の高気密高断熱住宅で起きる「初期含水」の問題を整理し、入居1年目をどう過ごせばリスクを下げられるのかをまとめます。

1. 新築の家は「濡れた材料」でできている

住宅に使われる材料の多くは、施工時点で水分を含んでいます。基礎のコンクリート、モルタルや左官材、木材、接着剤、壁紙の糊——これらが乾き切るまでには相応の時間がかかります。とくにコンクリートは、硬化後も長期にわたって水分を放出し続けます。

この水分が室内に出てくることを、一般に「初期含水」または「建設水分」と呼びます。昔の住宅はすき間から抜けていきましたが、気密性の高い現代の住宅では、抜け道は換気設備しかありません。ここが新築1年目の難しさです。

下のグラフは札幌の月別日平均気温です。暖房を使わずに窓を開けて乾燥を進められるのは、実質的に5〜9月の限られた期間だけです。


2. 入居1年目に起きやすい5つの現象

現象

背景にあること

発生しやすい場所

窓の結露が多い

室内の水蒸気量が多い

北側の窓、寝室、子供部屋

収納の奥が湿っぽい

空気が動かず湿度が滞留

クローゼット、押入、床下収納

クロスの継ぎ目が浮く

下地と糊の水分が抑えられていない

外壁面の壁、天井角

特定の部屋だけカビ臭い

換気経路から外れている

ドアを閉めがちな部屋

床がべたつく

室内の相対湿度が高い

1階全体、キッチン周辺

これらは建物の不具合とは限りません。多くは「まだ乾いていない家に、人の暑らしが加わった」状態です。人が住めば、料理・入浴・洗濯・呼吸で毎日水蒸気が加わります。そこに建設水分が重なるのが1年目です。

3. 高断熱の家ほど換気が生命線になる

2003年の建築基準法改正以降、住宅には24時間換気設備の設置が義務付けられています。これはシックハウス対策を契機とした制度ですが、湿気を排出する上でも決定的な役割を果たしています。

やりがちなこと

起きること

寒いからと給気口を閉じる

排気だけが回り、十分な換気量が確保されない

音が気になり換気扇を止める

湿気とにおいが室内に残る

フィルターを掛けっ放しにする

目詰まりで風量が落ちる

家具で給気口を塞ぐ

部屋ごとの空気の流れが途切れる

北海道の冬は、給気口から入る外気が冷たいため、閉めたくなるのは自然な感覚です。ただし、換気を止めると室内の水蒸気が逃げ場を失い、もっとも冷たい面に集まります。寒さが気になる場合は、給気口の位置を変える、ガラリを調整するなど、止める以外の方法を先に検討してください。

4. 入居1年目の月別アクション

時期

やること

ねらい

5〜9月

晴天の日に窓と収納の扉を全開

建設水分を一気に抜く

9〜10月

家具を壁から5センチ以上離す

壁面の空気を動かす

11月

暖房は家全体をゆるやかに上げる

局所的な温度差をつくらない

12〜2月

毎朝窓の結露を拭き取る

サッシ・幅木への浸透を防ぐ

3〜4月

収納・床下・化粧室を点検

冬の間に出た変化を確認

とくに大切なのは最初の夏です。この時期にどれだけ乾燥を進められたかで、最初の冬の結露量が変わってきます。

5. 「新築だから大丈夫」がつくる落とし穴

新築の住宅は、断熱性能も気密性能も昔とは比べものにならない水準になっています。そのため、「高性能な家なのだから湿気の心配はいらない」と思い込んでしまうことが、もっとも多い落とし穴です。

実際には、性能が高いことは「内部の環境をコントロールしやすい」ということであって、放っておいても良い状態になるという意味ではありません。密閉性の高い容器ほど、中に入れた水分は抜けにくい——と考えると分かりやすいかもしれません。

引き渡し直後にやっておきたいこと

項目

内容

換気設備の仕様確認

種別(第1・第3種など)と、各室の給気・排気位置

フィルターの交換方法

型番、交換頑度、入手先を控えておく

床下・小屋裏の点検口

場所を把握し、一度開けて中を見ておく

温湿度計の設置

居室・寝室・収納に1台ずつ

この4つを把握しておくだけで、何か起きたときの切り分けが格段に楽になります。

6. 保証・アフターサービスとの関係

新築住宅には、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑞疵担保責任が定められています。カビそのものが対象になるわけではありませんが、雨漏りや施工不良が背景にある場合は、まず施工会社への連絡が優先です。

状況

最初の連絡先

天井・壁にシミがある

施工会社(雨漏りの可能性)

特定の壁だけ冷たい

施工会社(断熱の施工状態)

換気量が足りない感じ

施工会社・設備業者

生活の中で出た表面のカビ

カビ専門業者への相談が有効

弊社でも、原因が建物側にあると見られる場合は、その旨をお伝えして施工会社への確認をおすすめしています。

7. 自力対処の限界を示すサイン

サイン

示唆される状態

拭いても1か月以内に同じ場所へ再発

下地の内部まで及んでいる

換気してもにおいが戻る

見えていない位置に発生源がある

クロスを押すと柔らかい

下地ボードが含水している

複数の部屋で同時に発生

換気・断熱など建物側の要因

8. 相談するかどうかの判断基準

判断軸

相談を検討する目安

範囲

1か所が手のひらを超える、または複数箇所

再発

同じ場所に2回以上

位置

壁の内部・床下・小屋裏が疑われる

記録

施工会社との協議に客観的な資料が必要

新築の場合、「どこに連絡すればいいのか分からない」というご相談も多くいただきます。弊社は工事を前提にせず、現状の見立てと、どこに何を伝えるべきかの整理からお手伝いします。

9. MIST工法®という選択肢

カビバスターズ北海道が採用するMIST工法®は、素材の状態に合わせて専用剤を調整し、強くこすり落とさずにカビを除去することを基本とした工法です。新築の内装・造作材を削らずに処理できる点は、入居間もない住まいではとくに意味を持ちます。費用は面積・素材・下地の状態によって変わるため、現地確認のうえでお見積りをご提示しています。

10. まとめ

  • 新築1年目は、建設水分と暮らしの水蒸気が重なる、家がもっとも湿っている時期です。

  • 札幌で窓を開けて乾燥を進められるのは実質5〜9月。最初の夏の使い方が1年目を左右します。

  • 24時間換気を止めない、給気口を塞がない。これが最大の対策です。

  • 再発・残るにおい・下地の柔らかさがあれば、早めに相談を。

新築のお家は、これから何十年も使っていくものです。1年目の扱い方が、その後の状態を大きく左右します。気になる点があれば、小さなうちにご相談ください。

出典

  • 気象庁「過去の気象データ検索 平年値(1991〜2020年)」札幌

  • 建築基準法に基づく24時間換気設備の義務化(2003年施行)

  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)による10年間の瑞疵担保責任

  • 【補足】よくいただくご質問

    Q. 入居1年目は除湿機を回したほうがいいですか

    有効な場面は多いです。とくに梱雨のない北海道でも、6〜9月は外気の相対湿度が71〜75%と高く、窓を開けるだけでは乾かない日もあります。ただし、除湿機は置いた部屋の空気しか扱えません。収納の扉を開ける、サーキュレーターで空気を回すといった工夫とセットで使ってください。

    Q. 引き渡し前にできることはありますか

    引き渡し前の内見の際に、床下・小屋裏の点検口を開けて中を見ておくことをおすすめします。後日何かあったときに、引き渡し時点でどうだったかの写真があることは、大きな意味を持ちます。新築引渡し前の菌検査をご依頼いただくケースもあります。

    Q. カビが出たことを施工会社に言ってもいいのでしょうか

    伝えてください。原因が生活側にあるのか建物側にあるのかは、見てみないと分かりません。伝えるときは、発生日・場所・広がり・そのときの室温と湿度をあわせて伝えると、話が進みやすくなります。

    Q. 小さなカビを自分で拭いてもいいですか

    手のひら程度で、下地が硬ければ、市販品での拭き取りで構いません。ただし、新築の内装は塩素系の漂白剤で色抜けすることがあります。目立たない箇所で試してから使ってください。ご心配な場合は、拭く前に写真を送っていただければ見立てをお伝えできます。

    Q. 2年目以降は安心していいですか

    建設水分の影響は年々小さくなりますが、暮らしから出る水蒸気はずっと続きます。つまり、1年目に身についた換気の習慣が、その後もそのまま効いてきます。特別なことを続ける必要はありません。

  • 【補足】最初の冬をどう乗り切るか

    新築1年目の冬は、建物の水分がまだ多く残っている状態で迎えるため、2年目以降よりも結露量が多くなりやすいと考えてください。「こんなに結露するのは欠陥ではないか」と心配になられる方も多いのですが、まずは次の3点を試してみてください。

やること

ポイント

朝一番に窓の水滴を拭く

サッシ下枠と幅木の境目を優先する

寝室のドアを少し開けて寝る

部屋ごとの温度差を小さくする

部屋干しは換気扇の近くで

水蒸気を直接外へ抜く

それでも改善しない場合や、窓以外の場所(壁面・収納・床)に濡れやカビが出ている場合は、建物側の確認が必要な段階です。写真と、そのときの室温・湿度を揃えてご相談いただければ、見立ての精度が上がります。

【補足】入居前に知っておきたい収納の使い方

引越しの直後は、段ボールを収納に詰め込んだままになりがちです。段ボールは周囲の湿気を吸って保持するため、収納の奥に長期間置くのは避けたい使い方です。中身を出したら早めに箱を処分し、できれば収納の底にすのこを敷いて、壁面との間に数センチの隔たりをつくると安心です。

また、入居直後は収納を満杯にしないこともポイントです。容量の8割程度にとどめておくと空気が動き、扉を開けたときの入れ替わりも良くなります。小さなことですが、1年目の収納トラブルはこの一手でかなり減らせます

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