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農業倉庫・作業場のカビと保管品被害|収穫期から冬囲いまでの温湿度管理

6 日前
読了時間: 8分

農業倉庫や作業場のカビは、建物の問題である以上に、保管しているものの価値に直結する問題です。収穫物、资材、飼料、包装資材、機械の部品——どれも湿気とカビの影響を受けます。しかも、発見されるのは出荷直前や次シーズンの準備を始めたときで、その段階では打てる手が限られています。

この記事では、北海道の農業施設でカビが発生する仕組みを、収穫期から冬囲いまでの流れに沿って整理します。現場ですぐ確認できることと、対策の優先順位を中心にまとめました。

1. 収穫期の外気は思ったより湿っている

下のグラフは、収穫期にあたる7〜9月の平均相対湿度を、道内3地点で比較したものです(気象庁の平年値)。


内陸の旭川で7月77%・8月79%・9月79%、道東の釧路では7月88%・8月87%・9月84%。収穫期の外気は、高い地域では平均でもむ8割前後です。この空気を倉庫に入れ、地盤に接した冷たい床面や北側の壁に触れさせれば、そこで結露が起きます。

「シャッターを開けて風を通す」こと自体は悪くありません。ただし、外気の露点温度が倉庫内の床面温度より高いときに開ければ、入ってきた空気がそのまま床で結露します。時間帯ではなく、条件で判断するのが原則です。

2. 農業倉庫でカビが出やすい6か所

場所

理由

確認のしかた

コンクリート床の周辺

地中温度で冷え、地盤の水分も上がる

非接触温度計で床面温度を測る

北側外壁の内面

日射がなく温度が上がらない

壁に手のひらを当てて温度差を見る

シャッターの下部レール

雨水・雪と土砂がたまる

レールの滞留水と土を確認

天井裏・小屋組の木部

上部に湿った空気がたまる

明るい日に懐中電灯で見上げる

直置きのパレット最下段

床からの冷えと水分を受ける

一番下の箱の底面を見る

間仕切り・休憩スペース

人の出入りで湿気と温度差が出る

においと天井面を確認

このうちもっとも相談が多いのはコンクリート床の周辺です。床は地中の温度に引っ張られるため、外気や室内の気温に遅れて変化します。真夏でも床だけが冷えている、という状態が普通に起きます。

3. 保管するものごとのリスク

保管物

湿気との関係

現れ方

段ボール・紙袋

空気中の水分を吸って保持する

底面のシミ、角のふやけ、潰れ

木製パレット・コンテナ

吸湿しやすく乾きにくい

裏面の黒変色、釘部の錐び

飼料・藦・敷料

有機物で栄養源になりやすい

表面の白い粉、におい、発熱

包装資材・ラベル

吸湿で寸法と糊が変化する

積んだ内側だけが黒い

機械・金属部品

結露で錐、包装材がカビの場に

防錐紙やカバーの内側の変色

とくに段ボールと木製パレットは、周囲の空気が乾くと放湿し、湿ると吸湿するという性質を持ちます。建物の条件を変えなくても、保管の仕方を変えるだけでリスクは下がります。

4. 収穫期から冬囲いまでの管理

時期

起きやすいこと

優先する対応

8〜9月(収穫期)

高湿の外気を取り込み、床面で結露

外気の露点温度で開閉を判断する

10〜11月(冬囲い期)

収穫物と资材を一気に搬入する

搬入前に床と壁を乾式で清掃する

12〜2月(積雪期)

出入りの少なさで異変に気づかない

月に一度は入り、においと床を見る

3〜5月(融雪期)

地盤の水分が上がり床が湿る

外周の排水と雨樋を清掃する

6〜7月(準備期)

前年の残さしにカビが進む

空にして一度全体を確認する

もっとも見落とされやすいのは積雪期です。出入りが減る上に、逸した雪が外周に残り、融雪期に一気に地盤へ入ります。雪を建物の壁際に寄せないだけでも、春の状態は変わります。

5. 作業場・出荷調製室で気をつけること

作業場は人が出入りし、水を使う場面もあるため、倉庫とは別の管理が必要になります。

場所

見るポイント

洗い場・排水溝の周辺

常時濡れている部分と壁の接合部

作業台の下・脚元

水がたまり、拭き残しが残る

防寒カーテン・ビニール

両面の温度差で結露しやすい

換気扇のフォード

目詰まりで換気量が落ちる

休憩スペースの壁

人の湿気と温度差が集まる

清掃の方法もポイントです。水を多く使う洗浄は、そのあとの乾燥ができて初めて意味を持ちます。乾かせない場所は、乾式中心の清掃に切り替えるという判断も必要です。

6. 自社対応の限界を示すサイン

サイン

示唆される状態

除去してもシーズン内に同じ場所へ戻る

下地の内部に残存している

倉庫全体ににおいが回っている

見えている範囲外に発生源がある

天井・小屋組にも広がっている

上部の湿った空気が滞留している

出荷先から指摘を受けた

保管品側に影響が及んでいる

毎年同じ時期に繰り返す

建物側の条件が変わっていない

7. 相談するかどうかの判断基準

判断軸

相談を検討する目安

範囲

床面・壁面の複数箇所、または高所に及ぶ

保管品

保管しているものに変色・においが出ている

再発

清掃後の再発が2回以上

時期

次の収穫期までに整えておきたい

農業施設は、使う時期と空く時期がはっきりしています。空いている期間に手を入れられることは、他の施設にない大きな利点です。次シーズンの準備の一環としてご検討いただければと思います。

8. MIST工法®という選択肢

カビバスターズ北海道が採用するMIST工法®は、素材の状態に合わせて専用剤を調整し、強くこすり落とさずにカビを除去することを基本とした工法です。農業施設では、小屋組や柱など、削ると強度に影響する木部が少なくありません。除去後は防カビ処理を行い、再発しにくい環境づくりまでを一連で行います。費用は面積・素材・作業環境によって変わるため、現地確認のうえでお見積りをご提示しています。

9. まとめ

  • 収穫期の外気は、旭川で月平均77〜79%、釧路で84〜88%(気象庁 平年値)。外気を入れることは、湿気を入れることでもあります。

  • シャッターの開閉は時間帯ではなく、外気の露点温度と床面温度の関係で判断します。

  • コンクリート床周辺、北側外壁、シャッター下部レールの3か所が特に見落とされがちです。

  • 保管物を床から浮かせ、外壁から離すだけでも、被害の大きさは変わります。

収穫物や资材は、一年の仕事の結果そのものです。発見が遅れると、取り戻しがきかない損失につながります。「この気配がする」段階でのご相談が、もっとも損失を小さくします。

出典

  • 気象庁「過去の気象データ検索 平年値(1991〜2020年)」札幌・旭川・釧路

  • 露点温度はMagnus式(a=17.62、b=243.12℃)による計算値

【補足】よくいただくご質問

Q. 倉庫に除湿機を入れれば解決しますか

区画を区切って使えば効果は出ます。ただし、シャッターを頻繁に開ける大空間では、能力の大部分を外気の除湿に使ってしまうことがあります。まずは対象区画を閉じること、その上で容量を選ぶことをおすすめします。気温が低い時期は方式によって除湿能力が大きく落ちる点にもご注意ください。

Q. 土のついた長靴や道具がカビ臭いです

土や植物残渣は有機物で、湿ったままにするとカビの栄養源になります。使用後に土を落とし、乾かしてからしまうだけで大きく違います。保管場所にすのこを敷く、壁から離すといった工夫も有効です。

Q. 古い倉庫です。建て替えないと無理ですか

そうとは限りません。ご相談の多くは、保管の仕方と換気のタイミングを変えるだけで改善する余地が残っています。その上で、現在の汚染を一度リセットするという順番です。建て替えを前提にしない提案もご用意できますので、まずは現状をお聞かせください。

【補足】露点温度を現場で使う早見表

「今、シャッターを開けていいのか」を判断するには、温湿度計と非接触温度計の2つがあれば十分です。下表はMagnus式による露点温度の計算値です。

気温\相対湿度

60%

70%

80%

90%

15℃

7.3℃

9.6℃

11.6℃

13.4℃

20℃

12.0℃

14.4℃

16.4℃

18.3℃

25℃

16.7℃

19.1℃

21.3℃

23.2℃

使い方はシンプルです。外気の温度と湿度から露点温度を読み、倉庫内の床面温度と比べます。床面のほうが低ければ、開けた瞬間に床で結露が始まるということです。例えば外気25℃・湿度80%の日は、床面が21℃を下回っていれば危険という判断になります。

非接触温度計は数千円台から入手できます。この2つを現場に置くだけで、「なんとなく湿っぽい」を数値に変えられます。スタッフ間で判断を共有できる点も、現場にとっては大きな利点です。

【補足】今シーズンからできる7つの対策

優先度

対策

コスト感

1

保管物を床から浮かせる(パレットを必ず使う)

2

外壁から30センチ以上離して積む

3

シャッターを開ける判断を露点温度で行う

4

外周の排水と雨樋をシーズン前に清掃する

5

床面清掃を乾式中心に切り替える

6

循環ファンで上部の滞留をなくす

7

除湿機を区画を閉じて使う

中〜高

1・2・3の3つは、費用をかけずに今日から始められます。物理的に離す、空気を動かす、湿った外気を入れない——この3つで多くの現場は確実に改善します。それでも同じ場所に戻る場合は、建物側の条件に原因が残っていると考えてください。

弊社へのご相談は、工事の依頼でなくても構いません。現状の見立てと、どこから手をつけるべきかの整理からお手伝いします。北海道内の農業施設であれば、まずは現状をお聞かせください。

【補足】複数の棟を管理している方へ

農場では、倉庫・作業場・機械格納庫・試験室など、用途の違う建物が並んでいることがよくあります。すべてを同じ基準で見る必要はなく、中に入っているものの価値と、損なわれたときの影響の大きさで優先順位をつけるのが現実的です。

建物

優先度の目安

出荷前の収穫物を置く倉庫

高。損失が直接金額になる

包装資材・ラベルの保管場

高。使えなくなると出荷が止まる

资材・肥料の倉庫

中。品質変化と作業環境の両面

機械格納庫

中。錐と電装部品への影響

使っていない旧倉庫

低。ただし胞子の供給源になりうる

最後の「使っていない旧倉庫」は、優先度は低いものの、隔てられていない場合は隣の建物への影響を考える必要があります。館内の空気がつながっている場合は、まずそこを区切るだけでも意味があります。どの棟から手をつけるべきかの優先順位づけも、ご相談の中で一緒に整理していきます。

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