カビ臭の正体はMVOC|においから発生場所を探す方法と札幌の住まいのチェック手順
更新日:17 時間前
「目に見えるカビはないのに、部屋に入るとカビ臭い」「押入れを開けるとむっとしたにおいがする」「雨の日になると家の一部がにおう」。こうしたカビ臭さのご相談は、札幌でも一年を通して寄せられます。においは、目に見えないところで何かが起きていることを知らせてくれる大切なサインです。
カビ臭さの正体は、カビなどの微生物が生きていく中で出す、揮発しやすい化学物質です。これらはまとめてMVOC(微生物由来揮発性有機化合物)と呼ばれます。においの元がどこにあるかを突き止めれば、隠れたカビを早い段階で見つけられる可能性があります。
この記事では、MVOCの基礎知識と、においの特徴から発生場所を絞り込んでいく具体的な手順を紹介します。あわせて、札幌の住まいでよくある、カビ臭と間違えやすい下水臭や排水トラップのにおいの見分け方も解説します。
この記事の結論 カビ臭の正体は、カビや細菌などが出すMVOCと呼ばれる揮発性の物質です。ごくわずかな量でもにおいとして感じられるため、目に見えるカビがなくても、においが隠れたカビの存在を知らせてくれることがあります。においは住まいからの大切なサインです。
カビ臭の正体「MVOC」とは
MVOCは、英語のMicrobial Volatile Organic Compoundsの略で、カビや細菌が栄養を分解したり、成長したりする過程で出す揮発性の有機化合物の総称です。揮発性とは、常温で気体になって空気中に広がりやすい性質のことです。私たちは、この気体になった物質を鼻で感じ取って「カビ臭い」と認識しています。
代表的なものとしては、キノコのようなにおいがする1-オクテン-3-オールや、土や湿った地面のようなにおいがするジェオスミン、墨汁のようなかび臭さを持つ2-メチルイソボルネオール(2-MIB)などが知られています。ジェオスミンや2-MIBは、カビだけでなく放線菌という細菌の仲間や藍藻類も作り出す物質で、水道水のカビ臭の原因物質としても知られています。
これらの物質は、ごくわずかな量でも人がにおいを感じ取れるのが特徴です。たとえば水道水の水質基準では、ジェオスミンと2-MIBの基準値はいずれも1リットルあたり0.00001mg以下と定められています。これほど少ない量で基準が設けられていること自体、これらの物質が非常に低い濃度でもにおいとして感じられることを物語っています。
出典:環境省「水質基準項目と基準値(51項目)」(ジェオスミン・2-メチルイソボルネオール:各0.00001mg/L以下)
住まいのカビ臭も同じで、目に見えるカビがほんの少しでも、あるいは壁の中や床下などの見えない場所でカビが育っているだけでも、においとして感じられることがあります。逆にいえば、においがあるのに目に見えるカビが見つからないときは、見えない場所を疑う必要があるということです。

においの種類から考えられる発生場所
カビ臭と一口にいっても、においの感じ方にはいくつかの種類があります。においの特徴と、においが強まる場所や条件を組み合わせると、発生場所をある程度絞り込むことができます。下の表は、住まいでよくあるにおいの傾向をまとめたものです。
においの感じ方 | 考えられる原因 | よくある発生場所 |
土っぽい・湿った地面のよう | カビや放線菌の繁殖 | 床下、基礎まわり、地下室、外壁側の壁の中 |
キノコのよう・むっとする | 湿った木材や紙でのカビの繁殖 | 押入れ、クローゼット、畳、家具の裏 |
古い本・段ボールのよう | 紙や布に付いたカビ | 書棚、物置、段ボール保管場所 |
酸っぱい・雑巾のよう | 湿ったままの布製品での菌の繁殖 | 洗濯物、タオル、カーペット、エアコン内部 |
下水・卵が腐ったよう | 排水の封水切れや配管の不具合 | 洗面台下、浴室・洗濯機の排水口、床下配管 |
最後の「下水のようなにおい」は、カビではなく排水まわりのトラブルであることが多いにおいです。カビ臭と混同されやすいので、次の章で詳しく見分け方を説明します。においの種類は人によって感じ方が違うため、家族にも嗅いでもらい、表現をすり合わせておくと判断の助けになります。
札幌で多い、カビ臭と間違えやすいにおい
札幌の住まいでよくあるのが、排水トラップの封水切れによる下水臭です。排水トラップとは、洗面台や浴室、洗濯機の排水口の下に水をためて、下水のにおいや虫が上がってこないようにする仕組みです。この水(封水)がなくなると、配管の奥のにおいが室内に上がってきます。
北海道では、冬の間に長く家を空けるときや、空き家・別荘で、水道管の凍結を防ぐために水抜きをすることがあります。水抜きの際には、排水トラップに不凍液を入れるなどの対応がとられることもありますが、封水がなくなった状態が続くと下水臭が上がってきます。また、長く使っていない洗面台や客間の排水口も、封水が蒸発してにおいの原因になります。
見分けるポイントは、においの出どころが排水口のまわりに集中しているかどうかです。排水口に水をしばらく流して封水を戻し、においが弱まるようであれば、排水トラップが原因の可能性が高いといえます。水を流してもにおいが続く場合や、排水口から離れた壁や床からにおう場合は、カビや配管からの漏水を疑いましょう。
使っていない洗面台・浴室・洗濯機の排水口に水を流して封水を戻す
水抜きをした後は、使い始めに各排水口へ十分に水を流す
排水口の周辺の床や壁が湿っていないか、手で触って確認する
水を流してもにおう場合は、配管の漏水や床下の湿気を疑う
においから発生場所を絞り込む手順
においの元を探すときに気をつけたいのが、嗅覚の「慣れ」です。人の鼻は、同じにおいを嗅ぎ続けていると、しだいに感じにくくなります。家の中に長くいる家族ほどカビ臭に気づきにくく、来客に指摘されて初めて気づくということもよくあります。においを探すときは、外から帰ってきた直後や、朝起きてすぐのタイミングを選びましょう。
窓や扉を閉めたまましばらく置き、においがこもった状態をつくる
外から戻った直後に玄関から順に各部屋を回り、においの強い部屋を記録する
においの強い部屋で、押入れ・クローゼット・引き出しを一つずつ開けて嗅ぐ
床に近い位置、部屋の角、家具の裏、コンセントや配管まわりに鼻を近づける
床下点検口や天井点検口がある場合は、開けた瞬間のにおいを確かめる
においが強い場所を写真と簡単な図で記録しておく
においは空気の流れに乗って移動するため、においを感じる場所と発生場所が離れていることもあります。たとえば、床下で発生したにおいが、壁の中を通ってコンセントのすき間や巾木(はばき)のすき間から出てくることがあります。においが強い場所の近くにあるすき間や開口部にも注目してみてください。
確認する場所 | 確認の方法 | 注意したいサイン |
押入れ・クローゼット | 扉を閉めて数時間後に開けて嗅ぐ | 奥の壁のしみ、床板の湿り、白い綿状のもの |
家具の裏の壁 | 家具を少し動かして壁と床の角を見る | 壁紙の黒い点、浮き、冷たく湿った感触 |
洗面台・キッチンのシンク下 | 扉を開けて配管まわりを嗅ぎ、底板を触る | 底板の変色やふくらみ、配管の水滴 |
床下点検口 | ふたを開けた瞬間のにおいと湿り気を確認 | 土臭さ、水たまり、断熱材の垂れ下がり |
コンセント・スイッチまわり | プレートのすき間に鼻を近づける | 壁の中からのにおい、周囲の壁紙のしみ |
においが強まる条件を記録する
カビ臭は、いつも同じ強さとは限りません。においが強くなる条件を記録すると、原因を絞り込む手がかりになります。特に、雨の後、暖房をつけた後、長く閉めきった後、入浴や洗濯の後などは、においの変化に注目してみましょう。
雨の後ににおいが強まる場合は、床下や外壁、屋根まわりなど、雨水の影響を受ける場所が疑われます。気象庁の平年値では、札幌の降水量は9月が142.2mmで最も多く、8月が126.8mm、10月が109.9mmと、夏の終わりから秋にかけて雨の多い時期が続きます。この時期ににおいが強まるかどうかを確かめておくと、原因の見当がつきやすくなります。

図:札幌の月別降水量(平年値)。札幌の降水量は9月が142.2mmで最も多く、8月がそれに続きます。雨の多い時期は床下や外壁まわりが湿り、においが強まることがあります。 出典:気象庁「過去の気象データ検索」札幌 平年値(1991〜2020年)
暖房をつけた後ににおいが強まる場合は、暖められた壁や床、家具の裏などから、においの物質が揮発しやすくなっている可能性があります。札幌では10月から11月にかけて暖房を使い始める時期で、夏の間に湿った場所があると、暖房をつけたときに初めてにおいに気づくことがあります。暖房の使い始めは、においの点検に向いたタイミングともいえます。
出典:気象庁「過去の気象データ検索」札幌 平年値(1991〜2020年)(降水量)
においが強まる条件 | 考えられる原因 | 次に確認すること |
雨の後・雪解けの時期 | 床下・外壁・屋根まわりへの水の影響 | 床下点検口、外壁側の壁、天井のしみ |
暖房をつけた後 | 湿った壁や床から物質が揮発しやすくなる | 暖房器具の近くの壁や床、家具の裏 |
長く閉めきった後 | 収納や空き部屋に湿気がこもっている | 押入れ・クローゼット・使っていない部屋 |
入浴・洗濯の後 | 水回りの湿気が抜けずにこもる | 浴室の天井、洗濯機まわり、脱衣所の壁 |
においの元が見つからないときの考え方
家の中を一通り探しても発生場所がわからない場合は、壁の中、床下、天井裏など、目で確かめられない場所でカビが育っている可能性があります。こうした場所は、表面の掃除や消臭剤では解決できません。消臭剤や芳香剤でにおいを覆い隠すと、においの変化に気づきにくくなるので注意しましょう。
見えない場所を調べるには、専門的な調査が役立ちます。当社では、壁や床の含水率測定で湿気の分布を確かめたり、ファイバースコープで壁の中や床下を確認したり、浮遊菌検査(有料オプション)で空気中のカビの状況を調べたりして、においの元を探す手がかりにしています。むやみに壁や床をはがす前に、まず状態を確認することが大切です。
また、においが気になる状態が長く続き、体調面で気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関にご相談ください。住まいの調査と並行して、生活のなかで気になる点を記録しておくと、相談の際にも役立ちます。
カビ臭を出しにくくする日頃の習慣
においの元を取り除いた後は、再びカビ臭が出にくい環境を保つことが大切です。基本は、湿気をためない、ほこりをためない、空気を動かす、の三つです。どれも特別な道具は必要なく、毎日の暮らしの中で少しずつ続けられることばかりです。
湿気をためないためには、24時間換気を止めず、入浴後や調理後は換気扇をしばらく回し続けます。洗濯物の室内干しは除湿機を使う部屋にまとめ、濡れたタオルや雑巾を丸めたまま放置しないようにしましょう。札幌の冬は窓の結露も多いため、朝のうちに拭き取っておくと、窓まわりのカビ臭の予防につながります。
ほこりはカビの栄養になるため、収納の中や家具の裏、ベッドの下など、掃除の手が届きにくい場所も季節ごとに掃除します。空気を動かすためには、押入れやクローゼットの扉をときどき開け、家具を壁から少し離して置くことが有効です。長く使わない部屋も、週に一度は扉を開けて空気を入れ替えましょう。
24時間換気・換気扇を止めずに運転する
濡れた布製品はすぐに広げて乾かす
収納・家具の裏・ベッド下のほこりを季節ごとに掃除する
使っていない部屋や収納も定期的に扉を開けて換気する
においの変化に気づいたら、日付と条件をメモしておく
よくある質問
Q. 消臭剤を置けばカビ臭は解決しますか。
A. 消臭剤はにおいを一時的に和らげることはできても、においの元であるカビや湿気を取り除くものではありません。においが続く場合は、発生場所を探して原因に対処することが必要です。
Q. においはするのにカビが見つからないのはなぜですか。
A. カビ臭の原因物質は、ごくわずかな量でも感じ取れるためです。壁の中や床下、家具の裏など、目に見えない場所でカビが育っていることがあります。
Q. 冬になるとカビ臭が強くなるのはなぜですか。
A. 暖房で壁や床が暖められてにおいの物質が揮発しやすくなることや、窓を閉めきる時間が長くなりにおいがこもることが考えられます。結露によって新たにカビが育っている場合もあるため、窓際や外壁側の壁も確認してください。
Q. 新築や築浅の住宅でもカビ臭がすることはありますか。
A. あります。建築時の材料に含まれていた水分が抜けきらないうちに閉めきった生活が続くと、床下や収納でカビが育つことがあります。築年数にかかわらず、においに気づいたら早めに発生場所を確認しましょう。
まとめ
カビ臭の正体は、カビや細菌などが出すMVOCと呼ばれる揮発性の物質です。ごくわずかな量でもにおいとして感じられるため、目に見えるカビがなくても、においが隠れたカビの存在を知らせてくれることがあります。においは住まいからの大切なサインです。
においの元を探すときは、鼻が慣れる前のタイミングを選び、閉じた場所を一つずつ開けて嗅ぎ比べ、においが強まる条件を記録していきましょう。札幌では排水トラップの封水切れによる下水臭など、カビ臭と間違えやすいにおいもあります。探しても見つからないときや、においが続くときは、専門業者による調査も検討してみてください。
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