使っていない客室ほどカビる|北海道宿泊施設の湿気管理
更新日:1 日前

「満室に近い週末の翌週、しばらく予約が入っていなかった部屋を開けたら、なんとなく空気がこもっていて、水まわりからにおいが上がってきた」というお話を、宿泊施設の運営に携わる方からうかがうことがあります。稼働している客室は日常的に空調や換気が動きますが、予約が入っていない客室は空調が止まったまま長時間放置されがちです。北海道の宿泊施設では、この「使われていない時間」の湿気管理が、カビや臭気の発生に関わっている可能性があります。ホテル・旅館・ペンション・民泊など施設の形態にかかわらず、稼働率の波が大きい客室ほど、こうした管理の抜け漏れが起きやすい傾向があるのではないでしょうか。
この記事の結論 今回お伝えしたポイントを振り返ります。第一に、北海道の客室稼働率61.2%という数字の裏には、年間を通じて一定割合の客室が使われていない時間帯が存在するという事情があります。第二に、使われていない客室では空調・換気の停止や排水トラップの封水切れ、冬季の低い外気温による結露などが重なり、湿気やにおいの問題が進みやすい条件がそろいます。第三に、未使用期間の長さに応じた点検・換気のルールをあらかじめ決めておくことが、レビューやクレームにつながる前の予防につながると考えられます。閑散期やシーズンオフを迎える前に、自社の客室管理の体制を一度見直してみてはいかがでしょうか。
この記事の要点
北海道の客室稼働率は61.2%で、年間を通じて4割前後の客室に稼働していない時間帯が存在すると考えられます
使われていない客室では空調・換気が止まり、排水トラップの封水が蒸発することで、湿気やにおいの問題が進みやすい条件がそろいます
未使用期間の長さに応じた点検・換気の手順をあらかじめ決めておくことが、レビュー評価やクレームの予防につながると考えられます
客室稼働率61.2%が示す「使われていない客室」の時間
観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(速報値)によると、北海道の客室稼働率は61.2%で、全国11位、前年差は+1.4ポイントでした。全国の客室稼働率は61.8%(前年差+2.2ポイント)となっており、北海道は全国平均に近い水準まで回復してきています。
「稼働率61.2%」を裏返して考える
稼働率が61.2%ということは、単純に裏返すと、年間を通じて客室が使われていない時間帯が一定の割合で存在するということでもあります。もちろん実際には満室の日と空室が多い日が混在しており、すべての客室が均等に4割休んでいるわけではありませんが、平日や閑散期には空調を止めたまま数日から数週間使われない客室が生じやすい構造は、多くの施設に共通していると考えられます。稼働率の数字は集客状況を示す指標であると同時に、「客室をどのくらいの頻度で休ませているか」を考えるきっかけにもなります。前年からの改善幅は全国が+2.2ポイント、北海道が+1.4ポイントであり、稼働率は上向いているものの、閑散期には依然として空室が続く客室が一定数存在することに変わりはないと考えられます。館内の客室すべてを均一に管理するのではなく、稼働の波が大きい客室ほど手厚い点検が必要になる、という視点を持つことが役立ちます。
未使用客室でカビが進みやすいメカニズム
予約が入らず使われていない客室では、いくつかの条件が重なって、カビや臭気が発生しやすい環境になることがあります。
空調・換気の停止
宿泊客がいない客室では、省エネの観点から空調を止めているケースが多いと考えられます。空調が止まると室内の空気が動かなくなり、家具の裏や窓まわりなど風の通りにくい場所に湿気がこもりやすくなります。使用中の客室であれば清掃や換気で定期的に空気が入れ替わりますが、長期間予約が入らない客室は、その機会自体が失われてしまいます。
排水トラップの封水切れとにおい
洗面台や浴室の排水口には、下水からの臭気や虫の侵入を防ぐために水を溜めておく「封水」という仕組みがあります。この水は使われない時間が長く続くと少しずつ蒸発し、封水が切れると排水管からのにおいが室内に上がってくることがあります。チェックインした宿泊客が最初に感じる違和感として、こうした水まわりのにおいが挙げられることは珍しくありません。
冬の外気温と結露のリスク
北海道は冬の外気温が低く、気象庁の平年値によると札幌の1月平均気温は氷点下3.2℃です。暖房を止めた客室では、外壁側や窓まわりの表面温度が室内の他の部分より下がりやすくなります。露点温度の考え方では、たとえば室温20℃・相対湿度60%の場合の露点はおよそ12℃とされ、表面温度がこの露点を下回ると結露が生じます。暖房を落とした客室は表面温度が下がりやすいため、わずかな湿気でも結露が起きやすい状態になりやすいと考えられます。結露が繰り返されると、窓まわりのパッキンやカーテン、壁紙の裏側などにカビが発生する条件が整いやすくなります。特に建物の角部屋や最上階・最下階など、外気の影響を受けやすい客室では、他の客室よりも先に変化が現れることがあるため、巡回の優先順位を考えるうえでの目安になります。

上のグラフは、札幌における月別の平均気温を示したものです。厳寒期は外気温が氷点下となり、暖房を止めた客室の表面温度が下がりやすいことが分かります。閑散期の客室管理では、この季節ごとの気温差を踏まえた点検頻度の見直しが参考になります(出典:気象庁「過去の気象データ 札幌 平年値(1991〜2020年)」)。
未使用期間別の客室管理チェック表
客室が使われていない期間の長さによって、注意したいポイントは変わってきます。以下は未使用期間の目安ごとに、起きやすいことと実施したい管理をまとめたものです。
未使用期間の目安 | 起きやすいこと | 実施したい管理 | 確認しておきたい箇所 |
3日以内 | 空気のよどみが出始める程度で、大きな変化は少ない | 清掃時に短時間でも窓や換気扇で空気を入れ替える | 室内のにおい、窓まわりの結露の有無 |
1週間程度 | 排水トラップの封水がやや減り始める。空気のこもりを感じやすくなる | 洗面・浴室の水を流して封水を補充し、短時間の換気を行う | 排水口まわりのにおい、クローゼットなど閉め切った収納内部 |
1か月程度 | 封水切れによるにおいが上がりやすくなる。湿気がこもりやすい場所で表面の変化が出始めることがある | 定期的な通水と換気に加え、可能であれば空調を一時的に稼働させる | 浴室のパッキン、窓下・巾木まわり、家具の裏側 |
シーズンオフの長期休止 | 結露や湿気が繰り返され、表面の変色やにおいの定着が進みやすい | 定期巡回のスケジュール化、通水・換気の担当者と頻度をあらかじめ決めておく | 外壁側の壁・窓まわり、水まわり全般、寝具・カーテンなどの布製品 |
こうした区分を目安に、自施設の客室ごとの稼働状況に合わせて点検の頻度を調整していくと、限られた人員でも優先順位をつけやすくなります。
清掃スタッフが気づける初期サインとレビューへの影響
初期サインの例
客室を最初に確認する清掃スタッフは、カビの初期サインに気づきやすい立場にあります。具体的には、入室した瞬間に感じるいつもと違うにおい、窓のパッキンやカーテンの裾に見られる小さな点状の変色、浴室の目地や換気扇まわりの湿った感触などが挙げられます。こうした小さな変化を「気のせいかもしれない」と見過ごさず、報告・記録する仕組みを整えておくことが、早期の対応につながると考えられます。チェックシートに専用の記入欄を設けたり、写真を添えて共有する運用にしたりするだけでも、担当者が変わっても情報が引き継がれやすくなります。
クレーム・レビューへの影響
宿泊客が客室でにおいや汚れに気づいた場合、その場でフロントに伝えられるとは限りません。滞在後の口コミやレビューという形で、においや清潔感に関する指摘につながることがあります。特にオンラインの宿泊予約サイトのレビューは今後の予約検討者の目に触れやすいため、一件の指摘が施設全体の印象に影響することも考えられます。日頃からの点検と早期対応は、こうした指摘を未然に防ぐための備えとして位置づけられます。予約が集中する繁忙期の直前は特に、長期間空けていた客室から順にチェックを行い、においや見た目に問題がないかを確認したうえで販売を再開するという運用も、指摘を防ぐ工夫の一つと考えられます。
自社対応の範囲と専門業者に相談する判断基準
通水や換気、目視での点検といった日常的な管理は、清掃・管理スタッフの巡回体制の中で対応できる範囲です。一方で、次のような状態が見られる場合は、自社での対応だけでは再発を防ぎきれない可能性があります。壁紙の裏側や断熱材の内部など目視で確認できない場所まで湿気が及んでいると考えられる場合、複数の客室で同時期ににおいや変色の指摘が繰り返される場合、あるいは客室の稼働を止めてまで原因を調べる必要がある場合などです。専門業者に相談する際は、客室単位での応急対応だけでなく、建物全体の湿気の経路や換気計画まで確認してもらえるかどうかが、再発防止を考えるうえでの判断材料になります。複数の客室を抱える施設では、一室で見つかった問題が他の客室でも同時に進行している可能性があるため、似た構造・似た使用頻度の客室をあわせて確認してもらうという相談の仕方も一つの方法です。費用については建物の規模や状況によって変わるため、現地確認のうえで見積りを取ることが一般的です。
よくある質問
Q. 未使用の客室は、どのくらいの頻度で換気すればよいですか。
A. 施設の状況によって違いますが、定期的に窓を開けたり、空調や換気設備を運転したりして、空気を入れかえることが大切です。点検の頻度を決めて記録しましょう。
Q. 客室のにおいについてお客様から指摘がありました。どうすればよいですか。
A. においの場所や原因を確認し、換気や清掃で改善しない場合は、壁の中や空調設備の状態も含めて調査をご相談ください。
Q. 繁忙期の前に点検しておくとよいですか。
A. 繁忙期の前に、未使用の客室の状態を確認しておくと、においやカビに早めに気づきやすくなります。
まとめ
今回お伝えしたポイントを振り返ります。第一に、北海道の客室稼働率61.2%という数字の裏には、年間を通じて一定割合の客室が使われていない時間帯が存在するという事情があります。第二に、使われていない客室では空調・換気の停止や排水トラップの封水切れ、冬季の低い外気温による結露などが重なり、湿気やにおいの問題が進みやすい条件がそろいます。第三に、未使用期間の長さに応じた点検・換気のルールをあらかじめ決めておくことが、レビューやクレームにつながる前の予防につながると考えられます。閑散期やシーズンオフを迎える前に、自社の客室管理の体制を一度見直してみてはいかがでしょうか。
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