カビとアレルギーの基礎知識|公的情報で整理する札幌の住まいの注意点
更新日:15 時間前
「家のカビとアレルギーは関係がありますか」というご質問を、カビの調査や除去の現場でいただくことがあります。カビは住まいの中にあるアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)の一つとして、国や自治体の情報でも取り上げられています。一方で、症状の原因が何か、どのような治療が必要かは、医療の専門家が判断することです。
この記事では、医療的な判断には立ち入らず、厚生労働省の補助事業として運営されている情報サイトや、自治体が公開している住まいの指針など、公的な情報に書かれている内容を整理します。そのうえで、札幌の住まいの特徴である冬の乾燥と結露の両面から、住まいの側でできる湿気とカビの管理をまとめました。
体調で気になる症状がある場合は、住まいの対策とは別に、必ず医療機関にご相談ください。住まいの環境を整えることは、医療に代わるものではなく、並行して進めるものと考えていただくのがよいと思います。
この記事の結論 カビは住まいの中のアレルゲンの一つとして、アレルギー疾患対策基本法の考え方や、厚生労働省の補助事業によるアレルギーポータル、東京都の指針など、公的な情報でも住まいの環境との関わりが取り上げられています。公的な情報に共通しているのは、湿気の管理がカビ対策の基本だということです。
公的な情報では、住まいのカビはどう扱われているか
国の制度としては、2014年に「アレルギー疾患対策基本法」が制定されています。この法律の基本理念には、アレルギー疾患が生活環境に関わる多様で複合的な要因によって発生し、重症化することが書かれており、国が講じる施策の一つとして、建築構造等の改善の推進を含む生活環境の改善が挙げられています。住まいの環境は、国の施策の中でも意識されているテーマです。
出典:厚生労働省 法令等データベース「アレルギー疾患対策基本法」(平成26年法律第98号)
家庭向けのわかりやすい情報としては、厚生労働省の補助事業として一般社団法人日本アレルギー学会が運営する「アレルギーポータル」があります。同サイトの室内環境の整備についてのページでは、カビとダニそれぞれについて、増えやすい条件と住まいでできる対策が紹介されています。
また東京都は「健康・快適居住環境の指針」の中で、住まいのカビを取り上げ、湿気が一番の原因であるとして、室内の風通しをよくしてカビの発生を抑えるよう呼びかけています。国立医薬品食品衛生研究所の研究者による資料でも、住環境のカビと呼吸器のアレルギーとの関係が研究テーマとして取り上げられています。
これらの情報に共通しているのは、住まいのカビを「湿気の管理」という身近なテーマとして扱っていることです。特別な設備や薬剤よりも先に、換気、除湿、収納の風通し、掃除といった日々の工夫が挙げられています。この記事でも、その考え方に沿って、札幌の住まいで続けやすい対策を中心に紹介していきます。
また、公的な情報は全国に向けて書かれているため、北海道の冬のように外気が氷点下になる地域の事情までは詳しく触れていないことがあります。窓や外壁の冷え、雪を持ち込む玄関など、札幌の住まいに特有の点は、この記事の後半で補って整理します。
出典:アレルギーポータル(日本アレルギー学会/厚生労働省補助事業)「室内環境の整備について」、東京都「健康・快適居住環境の指針」、国立医薬品食品衛生研究所 シンポジウム資料「住環境を汚染するカビと住人の呼吸器アレルギー」
カビとダニが増えやすい条件

アレルギーポータルでは、カビは温度20〜35℃、湿度70%以上で増殖しやすいとされ、ダニは60%以上の湿度と25〜30℃程度の温度が必要とされています。どちらも温度は人が暮らしやすい範囲と重なるため、住まいの側で調整しやすいのは湿度だということがわかります。
出典:アレルギーポータル「室内環境の整備について」
項目 | カビ | ダニ |
増えやすい温度 | 20〜35℃ | 25〜30℃程度 |
増えやすい湿度 | 70%以上 | 60%以上 |
住まいで多い場所 | 浴室・台所・靴箱・押入れ・エアコン | 寝具・カーペット・布製のソファ |
主な対策 | 除湿・換気・収納の風通し | 乾燥・掃除機・寝具の洗濯 |
出典:アレルギーポータル「室内環境の整備について」の記載をもとに当社で表に整理
この表からわかるのは、カビとダニは同じ住まいの中で、同じように湿気の多い場所を好むということです。湿度を管理することは、どちらの対策にもつながります。一方で、札幌の冬は暖房で室内が乾燥しやすく、湿度を下げることだけを考えればよいわけではありません。次の章で、札幌の気候に当てはめて考えます。
ここで気をつけたいのは、湿度70%という数字が部屋の中央の数字ではなく、カビが実際に生える場所の数字だということです。壁や窓、収納の奥のように周りより冷えた場所は、部屋の湿度が60%に満たなくても70%を超えることがあります。反対にダニは寝具やカーペットなど、人が長く過ごす場所で増えやすいため、寝室の湿度と寝具の乾燥がポイントになります。
札幌の住まいは「乾燥」と「結露」が同居する
札幌の外気の相対湿度は、気象庁の平年値で冬も60%台後半あります。ところが、冬の冷たい空気に含まれる水蒸気の量はわずかです。気象庁の平均蒸気圧の平年値をもとに計算すると、1月の外気をそのまま20℃に暖めた場合の相対湿度は15%程度にしかなりません。換気で入ってきた外気は、暖房で暖められると非常に乾いた空気になるということです。

図:札幌の外気の相対湿度と、20℃に暖めた場合の相対湿度。冬の外気は相対湿度が60%台でも水蒸気の量はわずかで、20℃に暖めると20%を下回ります。夏は反対に、外気を室内に入れるだけで湿度が高くなります。 出典:気象庁「過去の気象データ検索」札幌 平年値(1991〜2020年)の平均相対湿度・平均蒸気圧。20℃にした場合は平均蒸気圧をもとにMagnus式で求めた計算値(室内での水蒸気の発生は含まない)
出典:気象庁「過去の気象データ検索」札幌 平年値(1991〜2020年)、20℃換算はMagnus式による計算値
実際の室内では、調理、入浴、洗濯物の室内干し、人の呼吸などで水蒸気が加わるため、ここまで乾くわけではありません。それでも、冬の室内が乾燥しやすいのはこのためです。そこで加湿器を使うと、今度は窓や外壁側の冷えた面で結露が起こりやすくなります。部屋の中央は乾いていても、窓際やカーテンの裏、外壁側の収納はカビの増えやすい湿度になっている、という状態が札幌の冬の住まいでよく見られます。
夏はその逆で、7月と8月の外気は20℃に冷やすと80%を超える計算になります。窓を開けて外気を取り入れるだけで室内の湿度が上がり、カビやダニの増えやすい条件に近づきます。札幌の住まいでは、冬は乾燥と結露のバランス、夏は除湿を意識するのが基本です。
季節ごとに気をつける点が違うため、年間を通じて同じ対策を続けるより、夏は除湿、冬は結露の拭き取りと適度な加湿、春と秋は窓を開けた換気というように、季節に合わせて切り替える考え方が札幌の住まいには合っています。
湿度の目安と、温湿度計の使い方
住まいの湿度に法律上の基準はありませんが、参考になる公的な目安はいくつかあります。多くの人が利用する事務所などの建築物については、厚生労働省所管の建築物衛生法にもとづく管理基準で、相対湿度を40%以上70%以下に保つよう定められています。保育所については、こども家庭庁のガイドラインで冬の室温20〜23℃、湿度60%という目安が示されています。
出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」、こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年5月一部改訂)」
湿度の範囲 | 住まいで起こりやすいこと | 対策の方向 |
40%未満 | 暖房した冬の室内で起こりやすい乾燥 | 加湿は少しずつ、窓の結露を見ながら |
40〜60% | 多くの公的な目安と重なる範囲 | この範囲を保つよう温湿度計で確認 |
60〜70% | ダニが増えやすい湿度に入る | 除湿・換気、寝具の乾燥 |
70%以上 | カビが増殖しやすい湿度 | 除湿を優先し、発生場所を点検 |
出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」、アレルギーポータル「室内環境の整備について」をもとに当社で整理
温湿度計は、部屋の中央に1つ置くだけでなく、寝室の窓際や外壁側の収納の中など、冷えやすい場所にも置いてみると、住まいの中の湿度の差がわかります。冬の朝に部屋の中央が45%でも、窓際が65%を超えていれば、そこがカビの増えやすい場所です。数字を記録しておくと、加湿器の設定や家具の配置を見直す手がかりになります。
温湿度計を選ぶ時は、最高・最低の値を記録できるものや、数字を記録してスマートフォンで見られるものを使うと、夜間や明け方の変化もわかります。安価な製品は数%程度の差が出ることもあるため、複数の部屋で比べる時は同じ種類をそろえると比較しやすくなります。
公的な情報にもとづく住まいの対策
アレルギーポータルで紹介されているカビとダニの対策を、札幌の住まいに当てはめて整理すると、次のようになります。どれも特別な道具がなくても始められることばかりです。
浴室と台所の換気扇は、使っている間だけでなく使った後もしばらく回す
除湿機やエアコンを使って、湿度の高い季節は湿気を下げる
靴は陰干しして湿気を抜いてから靴箱にしまう
押入れや収納はすのこで空気を通し、物を詰め込みすぎない
家具は壁から隙間を空けて置く
エアコンのフィルターはこまめに掃除する
寝具は日光や風に当てるか乾燥機で乾かし、掃除機はゆっくり動かす
カーテンは洗いやすいものを選び、定期的に洗濯する
出典:アレルギーポータル「室内環境の整備について」をもとに札幌の住まい向けに要約
札幌の住まいならではの注意点として、冬の窓の結露は毎朝拭き取り、カーテンが窓に触れて濡れたままにならないようにすることを加えておきます。また、雪で濡れたコートや靴を玄関でしっかり乾かしてから室内の収納へしまうことも、住まいの中に湿気を持ち込まない工夫になります。
カビを掃除する時は、マスクと手袋を着け、換気をしながら行います。市販のカビ取り剤は製品表示に従って使い、塩素系の製品と酸性の製品は混ぜたり続けて使ったりしないでください。広い範囲に出ている場合や、掃除で胞子を舞い上げてしまいそうな場合は、無理をせず専門業者に相談する方が安全です。
札幌の住まいで湿気がたまりやすい場所
公的な情報で挙げられている浴室、台所、靴箱、押入れ、エアコンに加えて、札幌の住まいには冬ならではの湿気のたまり場があります。いずれも、暖房した部屋の空気が冷えた面に触れる場所か、雪や水を持ち込む場所です。どこから点検するか迷った時は、次の順番で見ていくと効率的です。
一つ目は窓まわりです。サッシの下枠、カーテンの裾、窓際に置いた家具の裏は、冬の朝に結露水が集まる場所です。二つ目は外壁に面した収納と、北側の部屋です。暖房の届きにくい部屋は壁の表面温度が下がり、部屋の空気が入り込むと湿度が上がります。三つ目は玄関と玄関フードで、雪で濡れた靴やコート、ベビーカーなどが一度に持ち込まれます。
四つ目は、24時間換気の給気口や換気扇が止まっている部屋です。寒さを理由に給気口を閉じたり、換気扇を止めたりすると、部屋の水蒸気が逃げにくくなります。こうした場所を季節の変わり目に一度ずつ確かめるだけでも、カビの早期発見につながります。
窓まわり:サッシの下枠、カーテンの裾、窓際の家具の裏
外壁側の収納と北側の部屋:壁の表面、床付近、収納の奥
玄関・玄関フード:靴箱の中、濡れた物を置く床
換気が止まりがちな部屋:給気口のまわり、換気扇のない納戸
見えない場所のカビを確かめる方法
住まいのカビは、目に見える場所だけに出るとは限りません。壁の内側、床下、天井裏、エアコンの内部など、見えない場所で増えている場合、においや、同じ場所で繰り返す汚れで気づくことがあります。掃除をしても状況が変わらない時は、見えない場所を確かめる段階です。
当社では、室内の空気中にどの程度の菌が浮かんでいるかを調べる浮遊菌検査(有料オプション)や、壁や床の水分の状態を確かめる含水率測定、壁の中を小さな穴から確認するファイバースコープ調査などで、発生場所の見当をつけてから対策をご提案しています。カビ除去が必要な場合は、素材を削ったり強くこすったりせず、素材に合わせて調整した専用剤でカビを分解・除去し、仕上げに除菌を行うMIST工法®で対応します。
なお、当社の検査や施工は住まいの環境を確かめ、カビを減らすためのものであり、健康状態の診断や、症状の改善をお約束するものではありません。症状については医療機関で、住まいについては住まいの専門家で、と役割を分けて相談していただくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 家にカビがあると、必ずアレルギーになりますか。
A. アレルギーの起こり方には個人差があり、住まいのカビとの関係を一概に言うことはできません。公的な情報では、カビは住まいのアレルゲンの一つとして対策が勧められています。症状が気になる場合は医療機関にご相談ください。
Q. 空気清浄機があれば、カビ対策はしなくてもよいですか。
A. 空気清浄機は空気中の粒子を減らす助けになりますが、壁や収納などで増えているカビそのものをなくすものではありません。湿度の管理と発生場所の掃除・点検を基本にし、空気清浄機は補助として考えるのがよいでしょう。
Q. 冬は加湿した方がよいのか、しない方がよいのか迷います。
A. 部屋の中央と窓際の両方に温湿度計を置き、部屋の湿度が40〜60%程度に収まっているか、窓際で結露が続いていないかを見ながら調整するのが現実的です。結露が多い場合は加湿器を窓から離す、設定を下げるなどで様子を見てください。
まとめ
カビは住まいの中のアレルゲンの一つとして、アレルギー疾患対策基本法の考え方や、厚生労働省の補助事業によるアレルギーポータル、東京都の指針など、公的な情報でも住まいの環境との関わりが取り上げられています。公的な情報に共通しているのは、湿気の管理がカビ対策の基本だということです。
札幌の住まいは、冬は乾燥と結露が同居し、夏は外気を入れるだけで湿度が上がります。温湿度計で冷える場所の数字も確かめ、40〜60%程度を目安に調整すること、窓の結露や収納の湿気をためないこと、見えない場所のカビが疑われる時は点検することが大切です。そして、体調で気になる症状がある場合は、住まいの対策とは別に医療機関にご相談ください。
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