登別 温泉 カビ対策|浴場の天井・脱衣所・換気ダクトと硫黄による設備劣化【室蘭・登別】
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。今回は胆振西部、室蘭市と登別市の温泉施設で私たちが相談を受けることの多い「浴場エリアのカビ」について取り上げます。登別温泉のように湯けむりが絶えない温泉地では、大浴場の天井や脱衣所の壁、換気ダクトの吹出口まわりに黒い点が広がり、清掃しても数週間で戻ってくるという声をよく伺います。さらに温泉地ならではの事情として、硫黄を含む泉質の影響で換気扇のモーターや金属製の吊りボルト、照明器具の金具などが傷みやすく、その劣化が湿気のこもりを招いてカビを呼ぶという「複合型」のトラブルが起こりがちです。室蘭市側でも、港に近いホテルの浴場や、登別の温泉を楽しめる社宅・保養施設の浴室で同じ構図を目にします。本記事では、気象庁の平年値で確認できる室蘭・登別の気候の特徴を押さえたうえで、浴場・脱衣所・天井裏・ダクトのどこでカビが育つのか、硫黄による設備劣化とどう関係するのか、営業を止めにくい施設でどう調査と施工を進めるかを、現場目線でまとめました。旅館・ホテルの施設管理ご担当者、日帰り入浴施設の運営者、社宅や保養所を管理する総務ご担当者の方にお読みいただき、日々の点検や改修計画の参考にしていただければ幸いです。
この記事の結論 登別温泉や室蘭市の旅館・ホテル・日帰り施設・社宅の浴場では、湯気と胆振西部の気候、硫黄成分による設備劣化が重なりカビが再発しがちです。天井・脱衣所・換気ダクトの点検の要点と調査・施工の進め方を解説します。
第1章|室蘭・登別の気候データで見る「湿気が抜けにくい」胆振西部
最初に、室蘭市と登別市がどのような気候なのかを数字で確認しておきます。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、室蘭の年平均相対湿度は78%です。相対湿度とは、その温度で空気が含むことのできる水蒸気の量に対して、実際にどれだけ含んでいるかを示す割合のことです。特に夏は高く、6月が88%、7月が90%、8月が89%と、一年のうちで最も湿った季節になります。太平洋に面し、内浦湾(噴火湾)と外洋に挟まれた地形の室蘭では、夏に海霧が立ちこめる日が多いことが地元でもよく知られています。港から坂を上がる途中で急に視界が白くなる、あの感覚を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
一方の登別については、気象庁のアメダス「登別」の平年値(1991〜2020年)で、年間降水量が1,811.2mmとなっています。同じ期間の室蘭の年間降水量は1,188.9mmですから、登別は室蘭よりも600mm以上多い計算です。月別に見ると登別は8月が297.9mmと最も多く、7月251.7mm、9月259.3mmと夏から初秋にかけて雨の多い時期が続きます。また、降雪の深さの合計は登別が454cm、室蘭が157cm、最深積雪は登別が84cm、室蘭が26cmと、同じ胆振西部でも雪の量には大きな差があります。
項目(気象庁の平年値 1991〜2020年) | 室蘭 | 登別(アメダス) |
年平均気温 | 8.9℃ | 7.4℃ |
年平均相対湿度 | 78%(6月88%・7月90%・8月89%) | 観測項目なし |
年間降水量 | 1,188.9mm | 1,811.2mm |
8月の降水量 | 187.3mm | 297.9mm |
年間日照時間 | 1,728.1時間 | 1,666.5時間 |
年平均風速 | 4.6m/s | 1.9m/s |
降雪の深さ合計 | 157cm | 454cm |
最深積雪 | 26cm | 84cm |
数字を見るときに注意したいのは、平年値はあくまで30年間の平均だということです。年によっては平年より雨の多い夏や雪の多い冬があり、その年の天候次第で浴場の傷み方も変わります。ここでは細かな数字の比較よりも、この地域の建物が置かれている大まかな条件をつかむことを目的にしています。具体的な年ごとの記録が必要な場合は、気象庁の過去の気象データ検索で確認できます。
この表から読み取れるのは、胆振西部が「夏は湿気と雨、冬は雪」という、建物にとって水分の負担が一年中途切れにくい地域だということです。室蘭は海からの湿った空気と霧の影響を受けやすく、登別は雨も雪も多い。そこへ温泉施設では、浴槽から立ちのぼる湯気という、建物の中で発生する大量の水蒸気が加わります。外気が湿っている季節は、換気をしても室内の水分が外へ抜けにくく、湿った空気が湿った空気と入れ替わるだけ、という状態になりがちです。
もう一つ注目したいのが風です。同じ平年値で年平均風速を見ると、室蘭は4.6m/s、登別のアメダスは1.9m/sとなっています。観測点の立地条件が異なるため単純な比較はできませんが、風の弱い場所では建物のまわりに湿った空気がとどまりやすく、排気口から出た湯気が外壁沿いに滞留したり、給気口から再び吸い込まれたりすることがあります。反対に風の強い海沿いでは、排気フードに風が吹き込んで換気扇の能力が落ちる、という別の問題が起こります。換気は「ファンを回していれば十分」とは言い切れず、建物の置かれた場所の風の条件にも左右されるのです。
当社が温泉施設の調査に入ると、夏場は脱衣所の壁や天井のクロスが波打っていたり、ロッカーの裏側にうっすらとカビが出ていたりするケースをよく目にします。冬場は逆に、外気が冷たいことで天井裏や外壁側で結露が起き、目に見えない場所で湿りが進んでいることが多くあります。季節によって「カビが育つ場所」が入れ替わるのが、この地域の温泉施設の特徴と言えます。これは当社の現場での傾向であり、統計ではありませんが、複数の施設で共通して見られる流れです。
なお、登別温泉は北海道の公式観光サイトで、硫黄泉・食塩泉・鉄泉など9種類の泉質が湧く「温泉のデパート」として紹介されています。泉質が多彩であることは大きな魅力ですが、建物管理の立場から見ると、施設ごとに湯気の性質や設備への影響が異なるということでもあります。同じ登別温泉のなかでも、隣の施設と同じ対策がそのまま効くとは限りません。まずは自分の施設の湯と建物の組み合わせを知ることが、カビ対策の出発点になります。次の章からは、こうした気候のうえに浴場という特殊な空間が重なったとき、具体的にどこでカビが育つのかを部位ごとに見ていきます。
第2章|浴場エリアのカビはどこに出るのか:天井・脱衣所・換気ダクト
温泉施設の浴場エリアでカビが出る場所は、大きく分けて「浴室の天井と壁の上部」「脱衣所」「換気ダクトと天井裏」の三つです。浴槽から立ちのぼった湯気は暖かく軽いため、まず天井へ向かいます。天井に当たった水蒸気は、天井材の温度が低ければそこで水滴に変わります。これを結露と呼びます。結露とは、空気中の水蒸気が冷たい面に触れて冷やされ、水になって付着する現象のことです。浴室の天井は毎日のように結露と乾燥を繰り返すため、表面の汚れや皮脂、石けんかすを栄養にしてカビが根を張りやすい環境になっています。
現場でよく目にするのが、天井の点検口の縁や照明器具のまわり、換気口の周囲だけが黒く縁取られているケースです。こうした場所は天井面の中でも継ぎ目や金具があって温度が下がりやすく、また清掃の手が届きにくい部分です。大浴場の天井は高さがあるため、日常清掃では脚立を出す機会が限られ、年に数回の大掃除まで手つかずになることも珍しくありません。その間にカビは表面から天井材の目地や裏側へと入り込んでいきます。
脱衣所は、浴室から流れ出る湿った空気と、利用者が持ち込む水分が重なる場所です。濡れた足で歩く床マット、湯上がりの体から立つ湯気、タオルを掛けたままのかごなどが、脱衣所の湿度を押し上げます。浴室との出入口付近の壁や、ロッカーの背面、洗面台下の収納、エアコンや扇風機の吹出口などに黒カビやうっすらとした白カビが出ることが多く、においの苦情につながることもあります。なお、スポーツジムの更衣室とは違い、温泉施設の脱衣所は浴室と一体の空気で動いているため、脱衣所だけを換気しても改善しにくいのが特徴です。
部位 | カビが育ちやすい理由 | 見落としやすいサイン |
浴室天井・壁上部 | 湯気が集まり結露と乾燥を繰り返す | 点検口の縁、照明・換気口まわりの黒い縁取り |
脱衣所の壁・ロッカー背面 | 浴室からの湿気と利用者の持ち込む水分が重なる | クロスの浮き、ロッカーを動かした跡の黒ずみ |
脱衣所の床・マット下 | 濡れた足と水滴で常に湿っている | 床材の継ぎ目の変色、マット裏のにおい |
換気ダクト・吹出口 | 湿った空気が通り、内部で冷えて結露する | グリルの黒い筋、ダクト接続部からの水垂れ |
天井裏(ふところ) | 浴室からの湿気漏れと外気による冷え | 天井材のシミ、点検口を開けたときのカビ臭 |
三つ目の換気ダクトと天井裏は、最も見えにくく、最も広がりやすい場所です。浴室の湿った空気を外へ出す排気ダクトは、天井裏の冷たい空間を通って外壁へ抜けていきます。ダクトの断熱が不十分だったり、途中で継ぎ目が外れていたりすると、ダクトの内側や外側で結露が起き、その水がダクトの勾配に沿って流れたり天井材に落ちたりします。天井に原因不明のシミが出て、調べてみるとダクトの結露水だったという例は、当社の現場では決して少なくありません。
見落とされがちな場所として、内湯と露天風呂をつなぐ出入口の扉まわりも挙げておきます。扉の開閉のたびに冷たい外気と湯気が混ざり合うため、扉枠やその上の壁、近くの天井が局所的に冷やされて結露しやすくなります。扉のゴムパッキンや枠の下端に黒カビが帯状に出ている場合は、単なる汚れではなく、この温度差による結露が繰り返されている合図と考えたほうがよいでしょう。
ここで北海道ならではの条件が効いてきます。胆振西部は道内では比較的温暖な地域とされますが、それでも暖房期間は概ね10月から4月までと長く、その間は屋外が冷え込むため、浴室内の暖かく湿った空気と、天井裏や外壁側の冷たい部分との温度差が大きくなります。室内外の温度差が大きいほど、少しの湿気漏れでも結露が起こりやすくなるのです。札幌や旭川の施設と比べれば外気温の低さは穏やかでも、浴室内の湿度が桁違いに高い温泉施設では、この温度差の影響は決して小さくありません。
また、雪の多い登別温泉の周辺では、豪雪期に窓を開けて湯気を逃がすことが難しくなります。夏場なら窓を開けて自然に湯気を追い出せる施設でも、冬は窓の前に雪が積もったり、冷気で利用者が寒がったりするため、換気を機械換気だけに頼る期間が長くなります。つまり冬の浴場は、湯気の量は変わらないのに逃げ道が細くなる季節なのです。次の章では、この冬の浴場で具体的に何が起きているのかを、季節の流れに沿って整理します。
第3章|冬の浴場で起きること:長い暖房期間・豪雪期・温度差と結露
温泉施設のカビは、一年を通じて同じように増えるわけではありません。当社の現場での傾向としては、夏の高湿期に表面のカビが目立ち、冬の暖房期間に天井裏やダクト、外壁側の見えない場所で湿りが進み、春の雪解けの頃に天井のシミや壁のカビとして表に出てくる、という流れがよく見られます。これは統計ではなく当社の経験則ですが、季節ごとの「見るべき場所」を意識しておくと、点検の効率が大きく変わります。
冬の浴場で起こる代表的な現象が、天井裏の結露です。浴室の天井材は、室内側は湯気で温められていますが、天井裏側は屋根や外壁から伝わる冷気で冷やされています。天井材の継ぎ目や点検口、照明器具の取付穴などのすき間から湿った空気が天井裏へ漏れると、冷えた野地板や梁、ダクトの表面で結露します。野地板とは屋根材の下地になる板のことです。天井裏は普段誰も見ない空間のため、ひと冬かけて湿りが蓄積し、断熱材が水を含んで重くなっていたり、木部にカビが広がっていたりすることがあります。
次に多いのが、外壁に面した壁の内部で起こる結露です。浴室や脱衣所の外壁側の壁は、室内の暖かさと屋外の冷たさに挟まれています。壁の中に湿気が入り込み、外側の冷たい面で水になると、これは内部結露と呼ばれる状態です。内部結露とは、目に見える壁の表面ではなく、壁の内側で起こる結露のことを言います。表面の拭き掃除では手が届かないため、気づいたときには壁の下地まで傷んでいることがあります。
時期 | 浴場エリアで起きやすいこと | 重点的に見る場所 |
6〜8月(高湿期) | 外気も湿っており換気で湿気が抜けにくい。表面のカビが目立つ | 脱衣所の壁・ロッカー背面、浴室天井の表面 |
9〜10月(暖房開始前後) | 夏の湿りが残ったまま暖房が始まり、温度差が広がり始める | 換気扇の作動状況、ダクト接続部 |
11〜3月(暖房・積雪期) | 窓を開けにくく機械換気頼み。天井裏や外壁側で結露が進む | 天井裏、外壁側の壁、露天風呂出入口 |
4〜5月(雪解け期) | 冬の間に溜まった湿りがシミやカビとして表面に現れる | 天井のシミ、壁紙の浮き、においの変化 |
豪雪期には、換気そのものの能力が落ちることもあります。屋外の排気フードや給気口が雪でふさがれると、換気扇は回っていても空気が思うように出入りしません。登別の平年値で最深積雪84cmという数字を見ると、建物の低い位置にある給排気口は、雪の状況によっては埋もれる可能性があると考えておいたほうがよいでしょう。給気が足りなくなると浴室内の空気が入れ替わらず、湯気が天井付近に滞留する時間が長くなります。雪下ろしや除雪の際に、給排気口のまわりも確認する習慣をつけることをおすすめします。
さらに、冬は利用者の動きも湿気に影響します。寒い季節は温泉の利用が増え、長湯をする方も多くなります。脱衣所では厚手の衣類やコートが持ち込まれ、ロッカーの中に湿ったままのタオルが残されることもあります。浴室と脱衣所の温度差を小さくするために脱衣所の暖房を強めると、脱衣所の空気はより多くの水蒸気を含めるようになり、外壁側の冷たい窓や壁でまとまって結露する、ということも起こります。
ちなみに、気象庁の平年値では室蘭の1月と12月の相対湿度はいずれも70%で、夏の90%前後と比べるとかなり低くなります。冬の外気は冷たいぶん含んでいる水蒸気の量そのものが少ないため、本来は換気をすればするほど室内の湿気を外へ追い出しやすい季節です。ところが現場では、「寒いと苦情が出る」「暖房費がかさむ」といった理由で換気扇を弱めたり、給気口を閉じたりしている施設を少なからず見かけます。札幌や旭川など道内の他地域の施設でも見られる傾向ですが、湯気の量が多い温泉施設では、この換気の絞り込みが天井裏や壁内の結露に直結しやすいのです。冬こそ、換気量を落とさずに寒さを和らげる工夫が求められます。
このように、冬の浴場は「湯気の量は変わらない」「逃げ道は細くなる」「温度差は大きくなる」という三つの条件が重なる季節です。ただし、温泉施設の場合はこれに加えて、もう一つ見逃せない要因があります。それが、温泉に含まれる成分による設備の劣化です。次の章では、硫黄成分と金属・設備の劣化がカビとどう結びつくのかを見ていきます。
第4章|硫黄成分による金属・設備の劣化とカビの「複合トラブル」
硫黄を含む温泉の浴場では、独特のにおいとともに、空気中にわずかな硫化水素が含まれることがあります。硫化水素とは、硫黄と水素が結びついた気体で、温泉地で感じる「卵が腐ったような」においのもとになる成分です。この成分は銅や銀などの金属と反応しやすく、表面を黒く変色させたり、腐食を進めたりすることが一般に知られています。温泉地で暮らす方なら、アクセサリーや家電の端子が黒ずむという経験をお持ちかもしれません。浴場まわりの設備にも、同じことが時間をかけて起こっています。
設備管理の視点で押さえておきたいのは、温泉施設では硫化水素への対策として換気が法令上も重視されているという点です。環境省の「公共の浴用に供する場合の温泉利用施設の設備構造等に関する基準」では、総硫黄を一定量以上含む温泉を公共の浴用に供する施設について、浴槽の湯面から上方10cmで20ppm以下、浴室の床面から上方70cmで10ppm以下といった濃度の基準や、換気孔を2か所以上設けてうち1か所は床面と同じ高さにすること、濃度の測定と記録などが定められています。対象となるかどうかや具体的な運用は、泉質や施設の条件によって異なりますので、所管の保健所などで最新の内容をご確認ください。
この基準が示しているのは、硫黄を含む温泉の浴場では、換気設備が安全管理の要になっているということです。そして、その換気設備こそが硫黄成分による劣化を受けやすい場所でもあります。換気扇のモーターや羽根の軸受け、ダンパーと呼ばれる風量調整用の弁、ダクトの金属製の継手、天井を吊る吊りボルトなどは、湿気と硫黄成分の両方にさらされ続けます。劣化が進むと換気扇の回転が落ちたり、ダンパーが動かなくなったり、ダクトの継ぎ目にすき間ができたりします。
設備・部材 | 起こりやすい劣化 | カビとのつながり |
換気扇(モーター・羽根) | 軸受けの傷み、羽根への汚れ付着で回転低下 | 排気量が落ち、湯気が天井に滞留する |
ダンパー・グリル | 金属部の腐食で開閉不良、固着 | 設計どおりの風量が出ず、局所的に湿気がこもる |
ダクト継手・ダクト本体 | 継ぎ目の腐食やすき間、断熱材の劣化 | 天井裏への湿気漏れ、結露水の垂れ |
吊りボルト・天井下地の金物 | さびの進行、変色 | 天井材のたわみやすき間から湿気が天井裏へ |
照明器具・電気設備の金具 | 接点や金具の黒変、腐食 | 取付穴まわりのすき間が湿気の通り道になる |
また、硫黄のにおいが少ない泉質であっても安心はできません。塩分を含む泉質では金属のさびが進みやすく、酸性の泉質ではコンクリートや目地が傷みやすいなど、泉質ごとに弱点となる部材が異なります。どの部材が傷みやすいかは、源泉の分析書や設備業者の知見も参考にしながら把握しておくとよいでしょう。改修の際に部材の材質を選び直すことも、長い目で見たカビ対策の一つです。
つまり、温泉施設の浴場では「硫黄成分で設備が傷む」「換気の力が落ちる」「湿気がこもる」「カビが育つ」という連鎖が起こりやすいのです。さらにカビが生えた天井材や下地は水を含みやすくなり、金属部材の周囲が乾きにくくなることで、さびや腐食がさらに進むという悪循環に入ることもあります。当社ではこれを、カビと設備劣化の「複合トラブル」と呼んで、どちらか一方だけを見ないように心がけています。
現場でよく目にするのが、カビ取りを何度しても同じ場所に戻ってくるので調べてみたら、その真上の換気扇がほとんど回っていなかった、というケースです。カビだけを除去しても、原因である換気の不具合が残っていれば再発は避けにくくなります。反対に、換気扇を新しくしても、天井裏に広がったカビや水を含んだ断熱材がそのままでは、においや再発の問題が残ることがあります。設備業者とカビの専門業者が、それぞれの視点で情報を持ち寄ることが大切です。
なお、硫化水素や温泉成分が人の体にどのような影響を与えるかについては、濃度や体質、入浴の仕方などによって異なり、ここで一律に述べることはできません。カビについても同様で、健康への影響を断定することは控えます。浴場を利用したあとに体調の変化を感じる方がいらっしゃる場合や、スタッフの方が気になる症状を訴えている場合は、自己判断をせず医療機関にご相談ください。私たちカビバスターズ北海道がお手伝いできるのは、建物側の湿気とカビの状況を調べ、環境を整えることです。
また、カビ対策の工事を行う際にも、この硫化水素対策の換気を妨げないことが前提になります。床面の高さにある換気孔をふさいでしまう養生や、換気扇を長時間止める作業工程は、安全面から避けなければなりません。温泉施設の工事では、一般の住宅以上に「換気を止めない段取り」が求められるのです。この点は、施工業者を選ぶ際の確認事項の一つとしてもお考えください。
第5章|旅館・ホテル・日帰り施設・社宅別に見る浴場まわりの管理ポイント
同じ温泉の浴場でも、施設の種類によって湯気の出方や管理の体制、カビ対策に使える時間は大きく異なります。ここでは、室蘭市・登別市でご相談の多い「温泉旅館・ホテルの大浴場」「日帰り入浴施設」「社宅・寮・保養施設の浴室」の三つに分けて、浴場エリアに絞った管理のポイントを整理します。ご自身の施設に近いものを参考にしながらお読みください。
まず温泉旅館・ホテルの大浴場です。登別温泉の旅館やホテルでは、深夜の一時的な清掃時間を除いてほぼ一日中浴場を開けているところも多く、浴室と脱衣所が乾く時間がほとんどありません。清掃時間に換気を強めて湯気を抜き、天井や壁の上部を拭き上げる、といった工程を日常の清掃に組み込めるかどうかが、カビの広がり方を左右します。また、男湯・女湯の入れ替えがある施設では、両方の浴場で使っている換気系統が共通なのか別系統なのかによって、片方だけ不調が出ることもあります。系統図を手元に置いておくと、調査の際に原因を絞り込みやすくなります。
次に日帰り入浴施設です。日帰り施設は営業時間が決まっているため、閉館後の夜間に換気と乾燥の時間を確保しやすいという利点があります。一方で、週末や連休に利用者が集中すると、脱衣所の湿気が一気に上がり、ロッカーや床マットがなかなか乾かないという問題が起こります。当社の現場では、閉館後に換気扇を止めてしまっている施設で天井や脱衣所のカビが多い傾向を見ています。これは統計ではなく当社の経験上の傾向ですが、閉館後こそ湯気を抜ききる時間帯と考え、換気扇の運転時間を見直すことをおすすめします。
施設の種類 | 浴場エリアの特徴 | 管理のポイント |
温泉旅館・ホテルの大浴場 | 営業時間が長く乾く時間が少ない。天井が高く清掃が届きにくい | 清掃時間に換気強化と天井上部の拭き上げ、換気系統図の整備 |
日帰り入浴施設 | 利用の集中で脱衣所の湿気が急上昇。閉館後の時間は確保しやすい | 閉館後も換気扇を運転、ロッカー・マットの乾燥を徹底 |
社宅・寮・保養施設の浴室 | 専任の設備担当がいないことが多く、不具合の発見が遅れがち | 入居者・利用者からの報告ルート、定期点検の項目化 |
港に近いホテルの浴場(室蘭など) | 夏の海霧で外気が湿り、換気で湿気が抜けにくい | 給排気口の位置関係と外部の風向きの確認 |
三つ目は、社宅・寮・保養施設の浴室です。室蘭市や登別市には、企業の社宅や寮、保養所として使われている建物があり、なかには温泉を引いて浴室を設けているところもあります。こうした施設では、旅館やホテルのような専任の設備担当者がいないことが多く、換気扇の不調や天井のシミが「そのうち直せばいい」と後回しにされがちです。入居者や利用者が不具合に気づいても、誰に伝えればよいのかわからず、発見が遅れることもあります。浴室の状態を報告してもらう窓口と、総務担当者が年に数回点検する項目をあらかじめ決めておくと、早い段階で手を打ちやすくなります。
社宅や寮の浴室で温泉を引いている場合は、給湯配管や混合水栓、シャワーの金具などにも注意が必要です。泉質によっては金属部の変色や腐食が早く進み、わずかな水漏れが洗面台の下や壁の中を湿らせ続けることがあります。水漏れは量が少ないと気づきにくく、床下や壁内でカビが広がってから発見されることもあります。退去や入居のタイミングで浴室まわりの配管と床下を確認しておくと、見えない場所の湿りを早めに見つけやすくなります。
点検項目の例としては、換気扇が回っているか、スイッチを入れたときに異音がないか、天井や壁の上部に黒い点やシミがないか、脱衣所の床やマットがいつまでも湿っていないか、においに変化がないか、といった内容です。専門的な測定をしなくても、定点観察を続けるだけで変化に気づきやすくなります。点検の担当者と頻度を決めておくことも大切です。
また、室蘭市の港に近いホテルや施設では、夏の海霧の季節に外気そのものが非常に湿っているため、浴場の換気をしても湿気が抜けにくい時期があります。第1章で見たとおり、室蘭の7月の平年の相対湿度は90%です。この時期は、換気に加えて空調による除湿を併用するなど、外気の条件に左右されにくい方法を組み合わせることも検討の余地があります。どの方法が合うかは建物の構造や設備によって異なりますので、設備業者とご相談のうえで判断されるのがよいでしょう。
いずれの施設でも共通して言えるのは、「カビが見えたら拭く」だけの対応では、天井裏やダクトの内部で進んでいる問題に気づけないということです。表面に見えているカビは、建物の中で起きていることのほんの一部にすぎない場合があります。次の章では、営業を止めにくい温泉施設で、どのように調査と施工を進めていくのかをご紹介します。
第6章|営業を止めにくい温泉施設での調査と施工の進め方
温泉施設のカビ対策で最も悩ましいのは、「浴場を長く閉めることができない」という点です。旅館・ホテルでは宿泊客の予定があり、日帰り施設でも休館日は限られています。そのため当社では、まず調査で問題の範囲と原因を見きわめ、施工は休館日や清掃時間帯、閑散期などに合わせて工程を分けるという進め方をご提案することが多くあります。ここでは、一般的な流れをご紹介します。
最初に行うのは、目視とヒアリングによる現況確認です。いつ頃からどこにカビが出ているか、清掃の頻度や方法、換気扇の運転時間、過去の修繕歴などを伺い、浴室・脱衣所・天井裏・ダクトの状態を確認します。天井裏は点検口から覗けるところまでを確認し、必要に応じてカメラを使って奥の状況を見ます。この段階で、設備の劣化がどの程度関わっているかの見当をつけます。
次に、数値による調査です。天井材や壁の下地がどれだけ水分を含んでいるかを含水率計で測り、湿りの範囲を把握します。含水率とは、材料の中に含まれる水分の割合のことです。また、表面に付いているカビの種類や量を調べる付着菌検査(有料オプション)、空気中を漂うカビの量を調べる浮遊菌検査などを組み合わせることで、見た目だけではわからない広がりを確認します。温泉施設の場合、脱衣所と浴室、天井裏で結果を比べると、どこから湿気やカビが広がっているのかを推定する手がかりになります。
工程 | 主な内容 | 温泉施設での配慮 |
現況確認・ヒアリング | カビの範囲、清掃・換気の運用、修繕歴の確認 | 営業中でも可能な範囲から実施 |
数値による調査 | 含水率測定、付着菌検査、浮遊菌検査など | 清掃時間帯や休館日に合わせて実施 |
原因の整理と設備側との共有 | 換気扇・ダクト・ダンパーの不具合の有無を整理 | 設備業者の点検・修理と工程を調整 |
除去・環境改善のご提案 | MIST工法®によるカビ除去と再発しにくい環境づくりのご提案 | 硫化水素対策の換気を止めない段取り |
仕上がりのご確認 | 検査による現状把握、再発しやすい箇所の共有 | 日常清掃・点検の項目に落とし込む |
調査の結果、換気扇やダクト、ダンパーなどに不具合が見つかった場合は、設備業者による点検・修理と、カビの除去工事の順番を調整します。換気が回復しないままカビを除去しても再発しやすく、逆に天井裏のカビを残したまま設備だけ直しても、においや汚れの問題が残ることがあります。当社では調査結果を報告書にまとめ、施設の管理者の方や設備業者の方と共有しながら、どの順番で進めるのがよいかをご相談しています。
カビの除去には、当社のMIST工法®を用います。MIST工法®は、素材を削ったりこすったりすることなく、素材に合わせて調整した専用剤で、素材に根を張ったカビに働きかけることを目指した工法です。木材や天井材などの素材を傷めにくいとされており、浴場のように仕上げ材を張り替えにくい場所でも検討しやすい方法です。ただし、効果の程度は素材の状態やカビの広がり、施工後の環境によって異なりますので、施工前の検査で状態を確認し、施工後の環境づくりまで含めてご提案することを大切にしています。工程を分ける場合は、たとえば一回目の休館日に天井裏と換気まわりを、二回目に浴室の天井と壁を、三回目に脱衣所を、というように区画ごとに進める方法もあります。
施工の際には、第4章で触れたとおり、硫化水素対策の換気設備を止めない、床面の換気孔をふさがないといった安全面の配慮が欠かせません。作業区画の分け方や養生の方法、作業時間帯は、施設ごとに事前に打ち合わせをして決めます。費用は、施工範囲や天井の高さ、足場の要否、設備の状態など現地状況により異なりますので、調査のうえでお見積りをお出しします。
施工が終わったあとも、再発を防ぐためには日々の運用が欠かせません。当社では施工前の検査結果をもとに、カビが戻りやすい箇所や、換気扇の運転時間、清掃時に拭き上げてほしい場所などを施設の方と共有し、日常点検の項目に落とし込むお手伝いをしています。温泉施設では湯気そのものをなくすことはできませんから、湯気を「早く逃がす」「溜めない」仕組みを、設備と運用の両面で続けていくことが大切です。
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まとめ|室蘭・登別の温泉施設は「湯気・気候・硫黄」の三つを同時に見る
ここまで、室蘭市・登別市の温泉施設における浴場エリアのカビについて見てきました。気象庁の平年値では、室蘭の年平均相対湿度は78%、夏の7月は90%に達し、登別の年間降水量は1,811.2mm、最深積雪は84cmと、胆振西部は夏の湿気と雨、冬の雪という水分の負担が一年を通じて続く地域です。そこへ温泉の湯気が加わり、さらに硫黄を含む泉質では換気扇やダクト、金属部材の劣化が進みやすいという条件が重なります。
浴場エリアでカビが育ちやすいのは、湯気が集まる浴室の天井と壁の上部、浴室の湿気と利用者の水分が重なる脱衣所、そして見えないところで結露が進む換気ダクトと天井裏です。暖房期間が概ね10月から4月までと長く、豪雪期には窓を開けにくい北海道では、冬の浴場は湯気の逃げ道が細くなり、室内外の温度差による結露が起こりやすくなります。春先に天井のシミや壁のカビとして表に出てくるのは、ひと冬分の湿りが蓄積した結果であることが少なくありません。
そして温泉施設ならではのポイントが、硫黄成分による設備の劣化とカビの「複合トラブル」です。換気扇の回転低下やダンパーの固着、ダクトの継ぎ目のすき間が湿気のこもりを招き、カビを育てます。カビだけ、設備だけを直すのではなく、両方を一緒に見ることが再発を減らす近道です。また、硫化水素対策の換気は安全管理の要でもあるため、カビ対策の工事でも換気を止めない段取りが求められます。
Q. 浴場の天井のカビを清掃で落としても、すぐに戻ってきます。何が原因でしょうか?
A. 表面のカビを落としても、天井材の裏側や天井裏にカビが残っていたり、換気扇の能力が落ちて湯気が滞留していたりすると、再発しやすくなります。温泉施設では硫黄成分による換気設備の劣化が関わっていることもあります。まずは換気扇の作動状況を確認し、含水率測定や菌検査などで天井裏まで含めた範囲を調べることをおすすめします。
Q. 硫黄のにおいが強い浴場で働くスタッフの体調が気になります。カビや温泉成分の影響でしょうか?
A. 体調への影響は、成分の濃度や体質、環境などによって異なるため、一概には言えません。気になる症状がある場合は、自己判断をせず医療機関にご相談ください。建物側については、換気設備が正常に働いているか、カビが広がっていないかを調べることで、環境を整える手がかりが得られます。スタッフの方の働く環境を見直すきっかけとしてもご活用ください。
室蘭の港に近いホテルでも、登別温泉の旅館や日帰り施設でも、社宅や保養所の浴室でも、「湯気」「地域の気候」「硫黄による設備劣化」の三つを同時に見ることが、浴場エリアのカビ対策の基本になります。日頃の点検では、換気扇の作動、天井や壁上部の黒い点、脱衣所の乾き具合、においの変化を定点で観察し、写真と日付で記録しておくことをおすすめします。
点検の優先順位に迷う場合は、まず「換気が設計どおりに働いているか」、次に「天井裏やダクトに水の跡がないか」、最後に「表面のカビの広がり」という順で確認していくと、原因と結果を取り違えにくくなります。表面のカビは目立つため真っ先に手を付けたくなりますが、その背後にある換気の不具合や結露を見落とすと、清掃の手間ばかりが増えてしまいます。気になる点が見つかった段階で専門業者に相談し、調査で状況を確かめることが、結果的に営業への影響を小さくすることにもつながります。
カビバスターズ北海道では、含水率測定や付着菌検査・浮遊菌検査などの各種調査から、MIST工法®による素材を傷めにくいカビ除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案までをワンストップでご提供しています。温泉施設のように営業を止めにくい建物でも、休館日や清掃時間帯に合わせた工程をご提案し、設備業者の方とも連携しながら進めてまいります。室蘭市・登別市をはじめとする胆振地方はもちろん、札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応しております。浴場や脱衣所のカビ、天井のシミ、換気まわりの気になる症状がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。※菌検査は施工前に行う有料オプションです。
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カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
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