含水率測定とは?なぜ必要か|北海道住宅のカビ調査で最初に行うこと
更新日:1 日前
「窓の結露はほとんどないのに、壁のシミやカビ臭さだけが気になる」——北海道の高気密高断熱住宅にお住まいの方から、こうしたご相談を数多くいただきます。以前の住宅であれば、結露といえばまず窓でした。ところが近年の住宅は窓まわりの断熱・気密性能が上がり、目に見える結露はむしろ減っています。その一方で、壁の中や床下、断熱材の内側といった「見えない場所」で水分がじわじわと滞留し、気づいたときにはカビが広がっているケースが増えています。
この「見えない水分」を放置しないための最初の一歩が、含水率測定です。木材や壁の含水率を数値で確認することで、目視だけでは分からないリスクの有無を客観的に把握できます。カビは目に見えるようになった時点で、すでに下地の内部まで水分が回っていることが少なくありません。逆にいえば、数値さえ押さえておけば、被害が広がる前に手を打てるということでもあります。この記事では、含水率測定とは何か、なぜ北海道の高気密高断熱住宅でとくに重要なのか、含水率計の仕組みと基準値、そして実際の現場での判断の仕方までを、カビバスターズ北海道の調査目線で整理します。ご自宅や管理する施設の状態を見極める際の判断材料として、ぜひお役立てください。
第1章|含水率測定とは?カビ調査で最初に行う「見えない水分」の数値化
含水率測定とは、木材や建材の中にどれだけの水分が含まれているかを数値で表す調査です。「湿っている気がする」「なんとなくジメジメする」といった感覚的な判断ではなく、パーセンテージという客観的な数値に置き換える点が最大の特徴です。壁紙や塗装の表面を傷めずに測定できる方法もあるため、賃貸物件や引渡し前の新築住宅など、原状のまま調べたい場面でも取り入れやすい調査です。カビ調査の現場では、この含水率測定を最初の工程として行うのが基本になっています。
なぜ最初なのかというと、カビが発生するかどうかを左右する条件のうち、温度と栄養源はどの住宅でもほぼ一定である一方、水分だけは場所によって大きくばらつくからです。同じ部屋の中でも、窓際と壁の中央、床面と壁の中では含水率がまったく違うことが珍しくありません。目視やにおいだけで「この壁は大丈夫」「ここは危ない」と判断すると、見えている場所と実際にリスクが高い場所がずれてしまうことがあります。含水率を測ることで、どこにどれだけの水分が滞留しているのかを面的に把握でき、調査の精度が大きく上がります。
含水率測定でわかるのは、単に「湿っているかどうか」だけではありません。数値の分布を見ることで、水分がどこから侵入し、どの方向に広がっているのかという「水の通り道」を推定する手がかりにもなります。たとえば外壁に近い部分ほど数値が高ければ雨水や外気の影響が疑われますし、床に近い部分ほど高ければ床下からの湿気上昇や配管からの漏水が疑われます。逆に窓際だけが高ければ、結露水がサッシ枠や下地に染み込んでいる可能性が高いといえます。
また、含水率測定は「今どれくらい危険か」を判断するだけでなく、「補修や乾燥がどれだけ進んだか」を確認する手段としても使われます。除去や乾燥工事を行ったあとに再測定を行い、数値が基準値以下まで下がっているかを確認することで、処理が十分だったかどうかを客観的に評価できます。これは、施工後のクレームや再発を防ぐうえでも重要な工程です。
カビバスターズ北海道の現場では、含水率測定を「調査の入口」であると同時に「補修の出口」を確認する役割としても位置づけています。見た目のカビを取り除くことだけを目的にすると、下地に残った水分が原因で数か月後に再発してしまうことがあります。数値で確認するという一手間が、再発を防ぐための土台になります。
測定結果の傾向から、現場ではおおよそ次のような見立てを行います。あくまで目安であり、実際の判断は周辺の状況とあわせて行います。
測定結果の傾向 | 推定される状態 | 次に確認すべきこと |
部屋全体で数値が低く均一 | 目立った水分トラブルはない | 換気や生活習慣による表面的なカビの可能性 |
特定の壁面だけ数値が高い | 外壁からの浸入または断熱欠損 | 外壁のシーリング・通気層の状態 |
窓際や下枠付近だけ高い | 結露水の染み込み | サッシまわりの気密・水切り処理 |
床に近いほど数値が高い | 床下からの湿気上昇 | 床下換気・防湿シートの状態 |
時間をおいても数値が下がらない | 継続的な水分供給源がある | 配管・雨漏りなど恒常的な原因の有無 |
このように、数値の「高い・低い」だけでなく「どこが高いか」「時間とともにどう変化するか」まで見ることで、初めて原因の見立てにつながります。
含水率測定にはもうひとつ大切な役割があります。それは、施主様や施設管理者の方、そして管理組合や施工会社など複数の立場が関わる場面で、共通の「ものさし」になるという点です。カビの見え方や臭いの感じ方には個人差がありますが、数値であれば誰が見ても同じ基準で状況を共有できます。当社の調査報告書にも測定箇所と数値を記録して添付しており、後日の経過確認や、施工会社への説明資料としてもそのままご活用いただけます。何かトラブルが起きてから原因を探すより、日頃の点検や引渡し前の段階で数値を記録しておくことが、結果的に一番の近道になります。次章では、なぜ北海道の住宅ではこの含水率測定がとくに重要になるのかを、暖房期間の長さという観点から見ていきます。
第2章|なぜ北海道の高気密高断熱住宅ほど含水率測定が重要なのか
北海道の住宅は、断熱性能・気密性能ともに全国トップクラスです。壁の中には厚い断熱材が入り、隙間相当面積も小さく設計されています。この性能の高さが、実は含水率管理の難しさと表裏一体になっています。
理由のひとつは、暖房期間の長さです。気象庁の平年値(1991〜2020年、札幌)によると、月別の平均気温は1月が氷点下3.2度、真夏の8月でも22.3度で、暖房を使わずに窓を開けて自然乾燥を進められる期間は実質5〜9月に限られます。裏を返せば、10月から翌年4月までの半年以上は、住宅の中がほぼ常に暖房で温められた状態になるということです。
この間、室内と室外の温度差は非常に大きくなります。室温を20度に保った場合、1月の平均気温との差はおよそ23度に達します。温度差が大きいほど、室内の水蒸気は「圧力の高い方から低い方へ」という性質にしたがって、壁の中や天井裏など温度の低い部分に向かって移動しようとします。これが壁内結露の基本的なメカニズムです。断熱材の性能が高いほど、この移動した水蒸気が到達する「露点」が壁の中の浅い位置に生じやすくなるため、気づかないうちに断熱材や下地材が湿ってしまうことがあります。
2003年の建築基準法改正以降、住宅には24時間換気設備の設置が義務付けられており、本来はこの換気によって室内の水蒸気を屋外へ排出する仕組みになっています。ところが北海道の冬は外気が冷たいため、「給気口を閉じる」「換気扇を止める」といった対応を取ってしまう住宅が少なくありません。換気を止めると、室内にたまった水蒸気の逃げ場がなくなり、もっとも温度の低い壁の中や窓まわりに水分が集中しやすくなります。
さらに、暖房を入れ始める直前の時期、つまり気温が下がり始めているのにまだ暖房を使っていない「無暖房期間」も見落とされがちなリスクです。この時期は室内の湿度が下がりきらないまま気温だけが下がるため、局所的な結露が起きやすくなります。
このように、北海道の住宅では「暖房期間が長い」「室内外の温度差が大きい」「換気を止めがちである」という3つの条件が重なりやすく、他の地域よりも壁内結露や含水率上昇のリスクが高い環境にあるといえます。だからこそ、目視で異常が見つかる前の段階で含水率を測定し、数値として状態を把握しておくことが重要になります。
室温を20度と仮定した場合の、札幌の月別平均気温との差を並べると次のようになります(気象庁平年値1991〜2020年)。
時期 | 室内外の温度差の目安 | 傾向 |
12〜2月(真冬) | 約21〜23度 | 壁内結露のリスクが最も高い |
3・11月(初冬・早春) | 約15〜19度 | 朝晩の冷え込みで局所的にリスクあり |
4・10月(無暖房期間) | 約8〜13度 | 湿度が下がりきらず油断しやすい |
5〜9月(乾燥期) | 約0〜7度 | 窓や収納を開けて乾燥を進めやすい |
第3章|含水率計の仕組みと測定方法(高周波式・電気抵抗式の違い)
含水率計には大きく分けて「高周波式(高周波容量式)」と「電気抵抗式(針式・ピン式)」の2種類があります。どちらも木材や建材に含まれる水分を電気的な性質の違いから推定する機器ですが、原理も使い方もまったく異なります。現場ではこの2つを状況に応じて使い分けます。
高周波式は、高周波の電界の中に材料を置いたときの誘電率の変化を利用します。水は誘電率が非常に高い物質のため、木材や壁の中に含まれる水分量に応じて誘電率が変化し、その差から含水率を算出します。センサー部分を壁や床にそっと押し当てるだけで測定でき、針を刺す必要がないため、壁紙やクロス、塗装面を傷つけません。賃貸物件や、傷をつけたくない仕上げ材の調査に向いており、測定もスピーディーです。一般的に含水率がおよそ25〜120%程度の範囲では、誘電率と含水率がほぼ直線的な関係になることが知られており、比較的高含水率の材料でも安定して数値を追いやすいという特徴があります。
一方の電気抵抗式は、木材が水を含むと電気を通しやすくなる性質を利用します。2本の針を材料に打ち込み、その間に電圧をかけて電気抵抗を測定し、含水率に換算します。針を刺す分だけ材料にわずかな穴が残るため、化粧材や仕上げ済みの壁面には不向きですが、構造材や下地材など、多少の跡が問題にならない部材の測定には広く使われています。比較的安価な機種が多く、測定精度もおおむね±2%程度が目安とされています。
現場での使い分けとしては、まず高周波式で壁全体や複数の壁面を非破壊でスクリーニングし、数値が高い箇所や気になる箇所が見つかった場合に、必要に応じて電気抵抗式や含水率計以外の調査(解体を伴う目視確認など)で詳細を確認する、という順序が実用的です。いきなり針を刺して調べるのではなく、まず傷つけない方法で全体像をつかむことが、無駄な破壊調査を避けることにもつながります。
2つの方式の特徴を整理すると、次のようになります。
項目 | 高周波式(高周波容量式) | 電気抵抗式(針式) |
測定原理 | 誘電率の変化を利用 | 電気抵抗の変化を利用 |
材料への影響 | 非破壊(傷をつけない) | 針を刺すため微細な穴が残る |
得意な場面 | 壁紙・塗装面など仕上げ材、広範囲のスクリーニング | 構造材・下地材など跡が気にならない部材 |
測定スピード | 速い(押し当てるだけ) | やや手間がかかる |
精度の目安 | 機種によるが安定した数値を得やすい | 概ね±2%程度 |
なお、木材の含水率には計算上の基準となる求め方があります。木片の重量を測ったあと、103℃前後で完全に乾燥させて全乾重量を求め、(測定時の重量−全乾重量)÷全乾重量×100という式で算出する「全乾法」が基準的な測定方法です(JIS Z 2101で規定される木材の試験方法のひとつ)。現場で使う高周波式・電気抵抗式の含水率計は、この全乾法の値に近似するように機器メーカーが校正した簡易測定器という位置づけになります。そのため、機種やメーカーによって多少の誤差が生じうる点は理解しておく必要があります。
また、測定時には木材や建材の温度も結果に影響します。冬場の北海道では、外壁に近い部材や窓まわりの下地材が室温よりかなり低い温度になっていることがあり、同じ含水率であっても測定値が変動する場合があります。そのため現場では、測定した部位の表面温度もあわせて記録し、極端に低温の箇所については数値の解釈に注意を払っています。一度の測定結果だけで判断せず、複数箇所・複数回の測定を比較することが、正確な見立てにつながります。
第4章|木材の含水率基準値とカビ・腐朽菌が発生するライン
含水率の「基準値」には、実はいくつかの異なる物差しがあります。混同されがちなので、ここで整理しておきます。
まず法令上の基準です。建築基準法施行令第46条第2項第1号では、構造耐力上主要な部分に使用する木材の含水率を15%以下と定めています。柱や梁など、建物の強度を支える部材については、この数値が公的な基準になります。
次にJAS(日本農林規格)による基準です。製材の種類・用途ごとに含水率の等級が設けられており、たとえば構造用製材の仕上げ材はSD15(15%以下)・SD20(20%以下)、未仕上げ材はD15・D20・D25(15/20/25%以下)、造作用製材の仕上げ材はSD15・SD18(15/18%以下)などに区分されています。用途によって許容される含水率の上限が異なる点がポイントです。
区分 | 含水率の目安 |
構造耐力上主要な部分(建築基準法) | 15%以下 |
構造用製材・仕上げ材(JAS) | 15%または20%以下 |
造作用製材・仕上げ材(JAS) | 15%または18%以下 |
集成材(JAS) | 15%以下 |
そして、カビや木材腐朽菌のリスクという観点での目安です。一般に、木材の含水率がおよそ20%を超えると、木材腐朽菌やシロアリの活動が活発化しやすくなるといわれています。腐朽菌もカビ(表面性の糸状菌)も、活動に水分を必要とする点は共通しており、含水率が高い状態が続くほど双方のリスクが高まります。ここで大切なのは、JASの各基準がもともと「乾燥した状態を保つための上限値」として設定されているのに対し、20%というラインは「それを超えると生物的な劣化リスクが立ち上がり始める目安」であるという点です。両者はおおむね近い水準にありますが、法令・規格の基準値とリスクの目安は本来別のものとして理解しておくと、数値の意味を誤解しにくくなります。
現場で使う高周波式の含水率計は、木材そのものだけでなく、壁紙の上から壁下地や断熱材周辺の状態をスクリーニングする用途でも使用します。この場合、機器が示す数値は全乾法に基づく木材含水率とは前提が異なるため、カビバスターズ北海道では現場診断用として次のような3段階の目安を独自に運用しています。
判定 | 数値の目安 | 対応の考え方 |
正常 | 0〜3% | 経過観察でよいレベル |
注意 | 3〜4% | 原因を特定し、必要に応じて是正 |
危険 | 4%以上 | 早めの調査・対策を推奨 |
この目安はあくまで壁面スクリーニング時の自社基準であり、木材そのものの全乾法含水率やJASの基準値とは尺度が異なります。数値だけを切り出して比較するのではなく、「どの機器で」「どの部位を」測った数値なのかをあわせて確認することが、正しい読み取り方になります。
前章で見た通り、北海道の住宅では冬の数か月間、室内外の温度差が20度を超える状態が続きます。この期間に壁の中の含水率が「注意」や「危険」の水準まで上がっていないかを確認することは、目に見えるカビが発生する前段階でのリスク管理そのものです。基準値というと難しく聞こえますが、要は「今、危険水域に近づいていないか」を数字で確認するというシンプルな話です。数値が正常範囲であれば過度に心配する必要はありませんし、注意・危険の範囲にあれば、原因を特定して早めに手を打てばよいだけです。次章では、含水率測定という調査方法そのものが「何をどこまで教えてくれるのか」、そして他の検査方法との違いについて見ていきます。
第5章|含水率測定でわかること・わからないこと
含水率測定は非常に有用な調査ですが、万能ではありません。ここで「わかること」と「わからないこと」を整理しておきます。
含水率測定でわかるのは、あくまで「水分がどこに、どれくらいあるか」という物理的な状態です。水分量が多い場所は、カビや腐朽菌にとって活動しやすい環境であるため、リスクの高い箇所を絞り込むための強力な手がかりになります。また、乾燥工事や補修工事のあとに数値がどれだけ下がったかを確認することで、対策の効果を客観的に検証できます。これらは、目視だけでは決して得られない情報です。
一方で、含水率測定だけでは「そこに実際にカビや細菌がどれだけ存在しているか」「どんな種類の菌がいるのか」までは分かりません。水分が多い場所は発生しやすい環境というだけであり、必ずしもすでにカビが繁殖しているとは限りませんし、逆に含水率がそれほど高くなくても、過去の水分履歴によってすでに菌が定着している場合もあります。こうした「今そこに何がどれだけいるか」を確認するには、微生物そのものを調べる検査が必要になります。
代表的なものに、対象物の表面を採取して調べる付着菌検査(有料オプション)、空気中に落ちてくる菌を培地に一定時間集めて調べる落下菌検査、空気中を浮遊する菌の濃度を機器で採取して調べる浮遊菌検査があります。これらは含水率測定とは調べる対象がまったく異なり、「環境としての危険度(水分)」を見る含水率測定に対して、「実際の汚染状況(菌そのもの)」を見る検査だといえます。新築の引渡し前や、乾燥・除菌工事の完了後に、環境がどこまで清浄になったかを確認したい場合には、こうした菌検査をあわせて実施することをおすすめしています。菌検査の考え方や進め方については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
それぞれの調査方法が「何を」「どうやって」調べているのかを整理すると、次のようになります。
調査方法 | 調べる対象 | 主な採取・測定方法 | 向いている場面 |
含水率測定 | 建材・木材の水分量 | 高周波式・電気抵抗式の含水率計を押し当てる/刺す | リスク箇所の絞り込み、乾燥・補修が必要な範囲の判断 |
付着菌検査 | 表面に付着した菌 | 対象物の表面を専用シートなどで拭き取る | カビの目視発生箇所の菌の特定 |
落下菌検査 | 空気中から落下してくる菌 | 培地を一定時間開放して自然落下を採取 | 室内全体の空気環境の傾向把握 |
浮遊菌検査 | 空気中を浮遊する菌 | 専用機器で一定量の空気を吸引し培地に採取 | より精密な空気清浄度の評価 |
含水率測定と菌検査は、いわば「土壌の状態を見る調査」と「そこに何が育っているかを見る調査」の関係にあります。どちらか一方だけでは全体像はつかめません。予算や状況に応じて、まず含水率測定でリスクの高い箇所を絞り込み、必要な箇所だけ菌検査で詳しく調べるという段階的な進め方も、無駄なく調査を行ううえで有効です。
第6章|北海道の現場での含水率測定の実例|数値からわかるリスク判定と補修方針
ここでは、実際の調査でよく見られる典型的なパターンをもとに、含水率測定からどのようにリスクを判定し、補修方針につなげるのかを紹介します。個別の現場の詳細は案件ごとに異なりますが、判断の流れをイメージしていただくための代表例としてご覧ください。
よくあるご相談のひとつが、「冬になると北側の寝室の隅に、うっすらと黒い点々が出る」というケースです。窓自体の結露はそれほど多くなく、一見すると原因がはっきりしません。このような場合、まず窓まわり・壁の中央部・幅木に近い床際の3か所を中心に、高周波式の含水率計で壁全体を面的にスクリーニングします。
測定の結果、窓から離れた壁の中央部分は先ほどの自社基準でいう「正常」の範囲に収まっている一方、外壁の出隅に近い部分と幅木のすぐ上だけが「注意」から「危険」の範囲まで数値が上がっている、というパターンがよく見られます。窓自体の結露が少ないにもかかわらず特定の壁面だけ数値が高い場合は、壁内結露や断熱材の施工不良、あるいは外壁側からの水分の回り込みが疑われます。
測定箇所 | 判定 | 推定される原因 |
窓ガラス・サッシ周辺 | 正常〜注意 | 一時的な表面結露 |
壁の中央部 | 正常 | 特に問題なし |
外壁の出隅に近い壁面 | 危険 | 断熱の欠損・気流止めの施工不良の疑い |
幅木上部(床際) | 注意〜危険 | 床下からの湿気上昇、または壁内結露の下方への広がり |
このように数値の分布を面で見ることで、「窓の結露が原因」という一見もっともらしい仮説だけでなく、壁の内部に別の原因が隠れている可能性を早い段階で拾い上げることができます。仮に窓の結露だけを疑って対策をしても、壁内部の水分が原因であれば症状は改善しません。数値に基づく判定があることで、無駄な対策を避け、必要な箇所に絞って手を打てるようになります。
補修方針としては、まず原因側(断熱・気密・換気)の是正について施工会社と協議しつつ、すでに発生しているカビについてはMIST工法®による除菌処理を行います。MIST工法®は、素材に合わせて調整した専用剤を用い、素材を強くこすらずにカビを除去することを基本とした工法で、壁紙や下地を傷めにくいという特徴があります。処理後は含水率を再測定し、数値が正常範囲まで下がっていること、そして一定期間後に再発がないことをあわせて確認します。原因の是正と除菌処理、その後の数値確認までを一連の流れとして行うことが、再発を防ぐうえでのポイントです。
住宅以外の施設でも、考え方は同じです。たとえば店舗や倉庫では、搬入口付近の床や、外壁に面したパレット置き場の壁際で含水率が高くなりやすい傾向があります。この場合も、まず面的な測定でリスクの高いエリアを特定し、在庫や商品への影響が疑われる場合は優先的に対応する、という順序で進めます。管理者様がご自身で全体を毎日確認するのは難しいため、定期的な数値記録をルーティン化しておくと、季節の変わり目に異常が出た際にも「いつもと比べてどう変化したか」を判断しやすくなります。
いずれのケースでも共通しているのは、「感覚」ではなく「数値の変化」で状況を追うという姿勢です。調査時にお渡しする報告書には、測定箇所ごとの数値と写真、判定結果、推奨する対応を記載しており、施工会社や管理会社との情報共有にもそのままお使いいただけます。
まとめ|含水率測定を依頼する前に知っておきたいポイント
ここまで、含水率測定とは何か、なぜ北海道の高気密高断熱住宅で重要なのか、含水率計の仕組みと基準値、そして現場での判断の仕方までを見てきました。最後に、実際に依頼を検討される際に知っておきたいポイントを整理します。
まず費用感についてです。含水率測定は多くの場合、単体の調査というよりも、カビ調査・現地調査の一部として組み込まれる形で実施されます。測定箇所数や建物の規模、あわせて菌検査を行うかどうかによって金額は変わってくるため、まずは現地を拝見したうえでのお見積りが基本になります。「壁全体を見てほしい」「気になる部屋だけでよい」など、ご要望の範囲によっても内容は調整できますので、まずは気になる症状と広さをお伝えいただければ、概算をご案内できます。
依頼の流れとしては、まずお電話またはウェブサイトのお問い合わせフォームから、症状(結露の有無、シミやにおいの場所、いつ頃から気になっているかなど)をお伝えいただきます。その内容をもとに訪問日程を調整し、現地では含水率測定を中心に、必要に応じて目視確認や写真撮影を行います。測定後はその場で概算のリスク判定をお伝えし、後日、数値と写真、推奨する対応をまとめた報告書をお渡しします。実際の除菌・補修工事に進むかどうかは、この報告書の内容をご覧いただいたうえでご判断いただけますので、調査だけを先に依頼することも可能です。
新築の引渡し前、中古住宅の購入前、賃貸物件の入居前後、あるいは「原因不明の壁のシミが気になっている」といったタイミングは、いずれも含水率測定を検討する良い機会です。とくに北海道では、暖房シーズンが始まる前の秋、あるいは暖房シーズンが終わりかけの早春に測定しておくと、その年の状態を把握しやすくなります。
カビは、見た目に現れた時点ではすでに水分の問題がある程度進行していることが少なくありません。逆にいえば、数値さえ確認しておけば、多くのケースは被害が広がる前に対応できます。「結露はないのに壁が気になる」「新築なのに何となく湿っぽい」といった違和感をお持ちでしたら、一度、数値で状態を確認してみることをおすすめします。
住宅も店舗・施設も、日々の暮らしや営業を止めずに調べられることが、含水率測定の大きな利点です。壁を壊して確認する必要はなく、普段どおりの生活・営業を続けながら、必要な箇所だけを効率よくチェックできます。だからこそ、「まだ症状が軽いうちに」「気になった今のうちに」調べておく価値があります。カビバスターズ北海道では、MIST工法®による除菌処理とあわせて、含水率測定によるリスク判定を北海道全域で承っております。住宅の一室から、病院・施設・倉庫まで幅広く対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
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出典
気象庁「過去の気象データ検索 平年値(1991〜2020年)」札幌
建築基準法施行令第46条第2項第1号(構造耐力上主要な部分の木材の含水率)
建築基準法に基づく24時間換気設備の義務化(2003年施行)
農林物資の規格化等に関する法律に基づくJAS(日本農林規格)製材の日本農林規格
JIS Z 2101:2009「木材の試験方法」(全乾法による含水率の算出)
【補足】よくいただくご質問
Q. 含水率測定だけで、家の中にカビがあるかどうか分かりますか?
含水率測定でわかるのは水分の量と分布であり、実際にカビが発生しているかどうかまでは断定できません。数値が高い箇所は発生しやすい環境にあるという手がかりにとどまります。目視で確認できる範囲は目視で、隠れた部分の菌の有無まで詳しく知りたい場合は、菌検査をあわせてご検討ください。
Q. 自分で市販の水分計を使って調べてもよいですか?
家庭用の簡易な水分計でおおよその傾向をつかむこと自体は可能です。ただし、機種によって精度や測定できる深さ、対応する材質が異なるため、数値の絶対値を基準値と直接比較する際には注意が必要です。心配な場合や複数箇所を比較したい場合は、業務用の機器を用いた調査をおすすめします。
Q. 賃貸物件でも含水率測定はできますか?
高周波式の含水率計であれば壁紙や床材を傷つけずに測定できるため、賃貸物件でもご利用いただけます。退去時の原状回復に関するトラブルの予防や、入居前・入居後の状態記録としてご依頼いただくケースもあります。
Q. 測定してすぐにカビ取りをしてもらえますか?
測定結果とその場での見立てをお伝えしたうえで、必要であれば同日にお見積りをご提示することも可能です。ただし、原因の是正(断熱・気密・換気の確認)が必要なケースでは、施工会社との調整を挟むことをおすすめする場合もあります。状況に応じて最適な順序をご提案します。
Q. 冬以外の時期に依頼しても意味がありますか?
意味があります。むしろ、暖房シーズンが終わった直後の春先は、冬の間にたまった水分の影響が数値に表れやすい時期です。逆に、これから迎える冬に備えて秋のうちに現状を確認しておくというご依頼も増えています。季節を問わず、気になった時点でご相談いただくのが一番です。
Q. MIST工法®の除菌処理をすれば、含水率も下がりますか?
MIST工法®はカビそのものを除去する処理であり、水分そのものを直接減らす工事ではありません。含水率を下げるには、換気や断熱・気密の是正など、原因側の対策が別途必要です。そのため当社では、除菌処理後に含水率を再測定し、原因側の対策とあわせて数値が落ち着いているかを確認するところまでをセットでご案内しています。
Q. 一度測定すれば、その後は測らなくても大丈夫ですか?
住宅は季節や生活状況によって水分環境が変わり続けるため、一度の測定がずっと有効というわけではありません。とくに大きな結露やシミが出た年の翌シーズン、リフォームや設備更新のあと、あるいは数年に一度の点検のタイミングで再測定しておくと、変化に早く気づけます。定点で数値を残しておくと、経年での比較もしやすくなります。
【補足】専門機器がなくてもできる、自宅での簡易セルフチェック
専用の含水率計がなくても、専門業者に依頼する前の段階で、ご自身である程度の見当をつけることは可能です。次のようなポイントを確認してみてください。
チェック項目 | 見るポイント |
壁紙の触感 | 押すとブヨブヨしている、以前より柔らかく感じる部分がないか |
壁紙の浮き・剥がれ | とくに外壁側の壁や北側の部屋の隅で継ぎ目が浮いていないか |
におい | ドアを閉め切っていた部屋で、開けた瞬間にカビ臭さを感じないか |
家具の裏側 | 外壁に接した家具を動かし、裏面や壁側にシミ・変色がないか |
窓のパッキン・下枠 | 黒ずみが繰り返し発生していないか、乾いてもすぐ戻るか |
これらはあくまで簡易的な目安であり、含水率計による数値測定の代わりにはなりません。ただ、「どの部屋から確認を始めるべきか」の優先順位をつけるのには役立ちます。複数の項目に該当する場合や、これらのサインが年々増えているように感じる場合は、早めに含水率測定を含めた専門調査をご検討ください。逆に、どれにも該当しない場合でも、北海道の住宅は構造上のリスクを抱えやすいため、新築1年目や引渡し前など節目のタイミングでの一度の測定は安心材料になります。
なお、これらのセルフチェックを行う際は、記録を残しておくことをおすすめします。気づいた日付、部屋、症状の写真を残しておくと、あとで専門業者に相談する際にも状況が伝わりやすくなりますし、季節による変化を振り返る材料にもなります。スマートフォンのアルバムを一つ、住まいの記録用に分けておくだけでも十分です。
【補足】外壁の仕上げ材によっても水分の入り方は変わる
同じ北海道の住宅でも、外壁の仕上げ材によって水分の挙動は変わります。窯業系サイディングは目地のシーリング材が経年で硬化・ひび割れを起こすと、そこから雨水が侵入しやすくなります。モルタル仕上げは仕上げ自体にひびが入りやすく、そこから水が回ることがあります。金属系サイディングは水は通しにくい一方、内部結露を起こすと乾きにくいという面もあります。いずれの仕上げも、外壁の内側には通気層を設け、万一水が入っても外部へ排出できる構造にするのが基本ですが、施工時の納まりによっては通気層がうまく機能していないケースも見られます。外壁のリフォームや大規模修繕を検討されている場合は、そのタイミングで含水率測定をあわせて行うと、現状の壁内部の状態を把握したうえで工事内容を判断でき、無駄のない計画につながります。
カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
所在地:〒064-0807 北海道札幌市中央区南7条西1丁目6-2
受付時間:平日9:00〜18:00(土日祝休み)
対応エリア:札幌市(中央区・北区・東区・白石区・豊平区・南区・西区・厚別区・手稲区・清田区)をはじめ、石狩・小樽・千歳・苫小牧・旭川・函館など北海道全域。地域ごとの対応は対応エリアをご覧ください。




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