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冬の改修工事・公共工事とカビ|札幌の寒中施工で起きる結露と引渡し前チェック

10月15日
読了時間: 27分

更新日:1 日前

こんにちは、カビバスターズ北海道です。2026年も秋が深まり、札幌では令和8年度の改修工事や公共工事の多くが、いよいよ冬の工期に入る時期になりました。気象庁の平年値では、札幌の初霜は10月25日、初雪は10月28日、根雪は12月6日ごろです。年度末の竣工に向けた工事の多くは、雪の季節に内装工程を迎えることになります。札幌市の資料によると、市有建築物は約2,300施設・延べ約550万㎡にのぼり、1970〜80年代に建てられたものが多いため、校舎や区の施設、市営住宅などの改修はこれからも冬をまたいで続きます。こうした冬の現場で当社がたびたび相談を受けるのが、「引渡し直前に石膏ボードの裏や断熱材にカビが見つかった」「養生シートを外したら天井に黒い点が出ていた」というケースです。閉め切った建物の中でジェットヒーターを焚き、コンクリートや左官、塗装の水分が抜けきらないまま次の工程へ進むと、工事中の建物そのものが結露とカビの温床になってしまいます。本記事では、ゼネコン・工務店の現場代理人、公共工事の監督員、施設の発注者の皆さまに向けて、冬の工事で結露が起きる仕組み、工程ごとの対策、燃焼器具の安全上の注意、引渡し前に確認したい項目を実務目線で整理します。

この記事の結論 冬に閉め切った工事中の建物では、ジェットヒーターの燃焼による水蒸気やコンクリート・左官の水分が結露し、ボードや断熱材がカビ化します。札幌の寒中施工での工程別対策と一酸化炭素の注意、引渡し前チェックを解説します。

第1章|冬の工事中の建物で何が起きているのか|水分の出どころと移り方

冬の工事現場で起きるカビは、「どこか一か所から水が漏れた」という単純な話ではないことがほとんどです。工事中の建物には、完成後の建物にはない水分の発生源がいくつも同時に存在します。代表的なのは、打設したコンクリートや床のモルタル、左官材、塗料や接着剤に含まれる水分、そして暖房に使う灯油ジェットヒーターなどの燃焼で生じる水蒸気です。これに、搬入時の雪や雨で濡れた資材、解体で露出した既存躯体の湿気が加わります。

これらの水分は、まず空気中に水蒸気として放出されます。冬の現場は寒さと防犯、飛散防止のために開口部をシートや仮設パネルでふさぐため、空気が入れ替わりにくく、室内の湿度はどんどん上がっていきます。そして、暖められた湿った空気が冷たい面に触れたところで結露が起きます。結露とは、空気が抱えきれなくなった水蒸気が水滴になって表面に付く現象のことです。冬の現場では、外気に面した壁、サッシまわり、仮設養生シートの内側、天井裏の冷えた部分などがこの「冷たい面」になります。

厄介なのは、結露した水が目に見える場所だけにとどまらないことです。石膏ボードは紙と石膏でできているため水分を吸いやすく、グラスウールなどの断熱材も、いったん濡れると乾きにくい部位に入り込みます。木下地や合板も同様です。現場でよく目にするのが、表面は乾いて見えるのにボードの裏側や下端だけが湿っており、クロスを貼って密閉したあとに内側からカビが広がるパターンです。カビは、湿った状態に栄養となるほこりや紙、接着剤などがそろうと増えやすくなります。工事中の建物は粉じんも多く、条件がそろいやすい環境といえます。

水分の発生源

主な工程・場面

移りやすい先

コンクリート・モルタル

床の打設、土間、補修

室内空気、床下地、隣接する壁の下端

左官材・パテ

下地調整、壁の補修

石膏ボード表面、仕上げ材の裏

塗料・接着剤(水性)

塗装、床材・クロスの施工

室内空気、下地の表層

燃焼式暖房の排気

ジェットヒーター等による採暖・乾燥

室内空気、冷たい外壁面や養生シートの内側

雪・雨で濡れた資材

搬入、屋外仮置き

ボード、断熱材、木下地そのもの

このように、工事中の水分は「発生する場所」と「結露して溜まる場所」が離れていることが少なくありません。床のコンクリートから出た水蒸気が、別の部屋の外壁側で結露することもあります。そのため、カビを防ぐには、個々の工程の乾燥だけでなく、建物全体として水分をどこへ逃がすのかを考える必要があります。第2章以降では、札幌の冬という条件の中で、この水分をどう管理していくかを順に見ていきます。

改修工事ならではの事情もあります。既存の建物を解体すると、長年ふさがれていた壁の中や床下、天井裏が一度に外気や室内の湿った空気にさらされます。築年数の古い建物では、以前からの雨漏りや結露で躯体がすでに湿っていたり、見えない場所にカビが残っていたりすることもあります。新築と違い、工事を始める前の時点で「湿気とカビの持ち込み」があり得る点が、改修工事でカビが問題になりやすい理由のひとつです。解体時に既存のカビを見つけた場合は、そのまま新しい下地でふさがず、範囲と原因を記録してから処置方法を決めることが大切です。

もうひとつ見落とされやすいのが、工事が止まる時間帯です。日中はヒーターを焚いて作業し、夕方に火を落として帰ると、夜間から朝にかけて建物全体が冷え込みます。日中に空気中へ出た水蒸気は、この冷え込みで一気に結露し、翌朝、窓や養生シート、外壁側のボードが濡れている、という状態が繰り返されます。年末年始の休工期間のように数日単位で現場が止まる場合は、暖房も換気もない状態で湿気が滞留するため、休み明けにカビが見つかることもあります。当社の現場での傾向であり統計ではありませんが、工事中のカビの相談は、長期休工の明けや、仕上げ直前の時期に集中しやすいと感じています。

現場代理人の方にとっては、こうした水分の流れを「誰の工程の問題か」で切り分けにくいことも悩みの種だと思います。床のコンクリートは躯体業者、ボードは内装業者、塗装は塗装業者と工程ごとに担当が分かれるため、水分管理が工程のすき間に落ちやすいのです。当社では、工事中の湿気管理を「特定の業者の責任」ではなく、現場全体の仮設計画の一部として位置づけることをおすすめしています。

第2章|札幌の寒中施工ならではの条件|長い暖房期間・豪雪・室内外の温度差

寒中施工とは、気温が低い時期に、凍結や硬化不良を防ぐための保温・採暖をしながら工事を進めることです。北海道では暖房期間が概ね10月〜4月と長く、札幌でも年度後半の工事の多くがこの寒中施工の期間に重なります。先に触れたとおり、気象庁の平年値では札幌の根雪は12月6日ごろで、そこから春先までは雪の中での工事が続きます。秋に雪虫を見かけると、平地の初雪まで10日〜2週間ほどという経験則が日本気象協会のtenki.jpでも紹介されていますが、現場ではこのころから「閉める準備」が始まります。

札幌の冬の現場でまず効いてくるのが、窓や開口部を開けにくいという条件です。豪雪期には吹き込みや凍結、仮設の破損を避けるため、開口部をシートやパネルで密閉するのが一般的です。中央区や北区のような市街地の現場では、近隣への粉じんや騒音への配慮から、さらに開口を絞ることもあります。換気のしにくさは、そのまま湿気の逃げ場のなさにつながります。本州の冬であれば日中に窓を開けて乾かすこともできますが、札幌の真冬にはそれが現実的でない日が続きます。

次に大きいのが、室内外の温度差です。内装工程では、下地や仕上げ材の性能を確保するために室内を暖めますが、外気は氷点下です。暖められた室内の空気は多くの水蒸気を含むことができ、それが外壁側の冷えた面に触れると結露します。温度差が大きいほど結露は起きやすくなります。特に、改修工事で断熱材を入れ替える前の外壁、既存サッシのまわり、屋根裏や最上階の天井、ピロティ上の床など、外気の影響を強く受ける部位は要注意です。

札幌の冬の条件

現場で起きやすいこと

カビにつながる流れ

暖房期間が長い(概ね10月〜4月)

長期間の採暖が必要になる

燃焼式暖房の水蒸気が長く供給され続ける

豪雪期で開口を開けにくい

養生で密閉し換気量が落ちる

湿度が上がり、逃げ場を失う

室内外の温度差が大きい

外壁側・サッシ・天井裏が冷える

冷たい面で結露し、ボードや断熱材が濡れる

夜間・休工中の冷え込み

暖房停止で建物全体の温度が下がる

日中の水蒸気が夜に結露する

雪での資材の濡れ

搬入口や仮置き場で雪が付く

濡れた資材がそのまま施工される

工程面でも、札幌の冬には独特のプレッシャーがあります。公共工事では年度末の工期が決まっていることが多く、雪で外部工事が遅れた分を内装工程で取り戻そうとする場面がよくあります。その結果、コンクリートや左官の乾燥期間が短くなったり、ボードの含水が十分に下がらないままクロス貼りに進んだりしがちです。乾燥を急ぐためにヒーターを増やすと、今度は燃焼による水蒸気が増える、という悪循環も起こり得ます。

また、雪そのものも水分の持ち込み源になります。搬入口で資材に付いた雪、作業員の靴や台車に付いた雪は、暖かい室内で解けて床や下地を濡らします。市内のどの地域の現場でも、搬入口まわりの床や壁の下端が冬のあいだ常に湿っている、という状況は珍しくありません。搬入口には雪を落とすマットやすのこを置き、近くに石膏ボードや断熱材を仮置きしないことが基本です。こうした札幌の冬の条件を前提に、「乾かしてから進む」工程を組めるかどうかが、工事中のカビを防ぐ分かれ目になります。

発注者側の視点でいえば、冬の工期設定そのものがカビのリスクに関わっていることを知っておいていただきたいと思います。乾燥に必要な日数は、材料や厚み、室温、湿度、換気の状態によって大きく変わり、夏場と同じ日数で冬に同じ工程を終えるのは難しいことがあります。設計図書や特記仕様書で「含水率を確認してから次工程へ」と定めていても、工期に余裕がなければ現場は無理をしがちです。工程会議の段階で、乾燥待ちの期間や除湿機の設置、含水率の確認日を工程表に組み込んでおくと、受発注者双方で判断しやすくなります。監督員の方が段階確認の項目に含水率を加えるだけでも、現場の意識は変わります。

秋のうちに準備できることもあります。初雪や根雪の前に、外部の開口をふさぐ時期と方法、仮設暖房の種類と台数、除湿機や仮設換気扇の手配、資材の屋内保管場所を決めておくと、雪が降り始めてから慌てずに済みます。冬の工事は、雪が降る前の段取りで半分が決まるといっても過言ではありません。工程表に「閉める日」と「乾かす期間」を書き込んでおくことが、寒中施工のカビ対策の第一歩です。

第3章|ジェットヒーターと結露・一酸化炭素|燃焼式暖房の使い方と安全上の注意

冬の現場で欠かせないのが、灯油を燃料とするジェットヒーターです。短時間で広い空間を暖められるため、採暖や資材の保温、乾燥の補助として広く使われています。ただし、カビ対策の視点から見ると、ジェットヒーターには注意すべき性質があります。直火式と呼ばれるタイプは、灯油を燃やした排気をそのまま室内に吹き出す構造で、排気には二酸化炭素とともに水蒸気が含まれています。つまり、「暖めながら、同時に室内へ水分を出している」のです。

現場でよく目にするのが、「乾かすためにジェットヒーターを増やしたのに、かえって窓や養生シートがびっしょり濡れた」という状況です。室温は上がるので空気が水蒸気を含める量は増えますが、閉め切った空間で燃焼を続ければ水蒸気も増え続けます。そして、ヒーターの温風が届かない外壁側や隅、天井裏、夜間に暖房を止めたあとの冷えた面で、その水蒸気が一気に結露します。ヒーターは「乾燥機」ではなく「加温器」であり、水分を建物の外へ出すには換気や除湿を別に組み合わせる必要がある、という点を現場全体で共有しておくことが大切です。

燃焼式暖房のもうひとつの、そしてより重要な注意点が一酸化炭素です。一酸化炭素は無色無臭で、気づかないうちに頭痛やめまい、吐き気などを起こし、重い場合は命にかかわる中毒につながるおそれがあります。換気が不十分な閉め切った空間で燃焼器具を使い続けると、酸素が不足して不完全燃焼が起こりやすくなります。カビ対策以前に、作業員の安全を守るための換気が欠かせません。

暖房・乾燥の方法

室内への水蒸気

一酸化炭素の注意

カビ対策上のポイント

直火式ジェットヒーター

排気とともに室内へ出る

換気不足で不完全燃焼のおそれ。換気と一酸化炭素警報器が必須

単独使用は避け、換気・除湿と併用する

間接式(排気を屋外へ出すタイプ)

燃焼ガスは屋外へ排出

排気経路の外れ・詰まりに注意

水分を増やしにくく、内装工程に向く

電気式ヒーター

燃焼による水蒸気は出ない

燃焼がないため一酸化炭素は発生しない(電源容量に注意)

局所の加温・乾燥の補助に向く

除湿機

空気中の水分を回収する

燃焼がないため発生しない

排水の処理と、低温時の能力の確認が必要

安全面では、少なくとも次のような基本を徹底したいところです。器具ごとの取扱説明書に従い、屋内での使用条件を守ること。燃焼器具を使う空間には一酸化炭素警報器を設置し、作業員の目と耳に届く位置に置くこと。地下ピットや機械室、小部屋、天井裏など、空気が滞留しやすい場所では燃焼器具を使わない、または特に慎重に換気すること。無人になる夜間や休工中に燃焼器具を運転し続けないこと。給油は火を消し、器具が冷えてから行うこと。気分が悪くなった人が出たら、すぐに作業を止めて新鮮な空気の場所へ移し、必要に応じて医療機関に相談することも、朝礼や新規入場者教育で繰り返し伝えておきましょう。各社の安全衛生管理の基準がある場合は、それを優先してください。

カビ対策と安全対策は、実は同じ方向を向いています。燃焼による水蒸気を増やさないこと、空気を入れ替えること、そして閉め切った空間に長時間燃焼器具を置かないことは、結露を減らすことにも、一酸化炭素のリスクを下げることにもつながります。内装工程に入ったら、直火式から間接式や電気式への切り替え、除湿機の併用を検討するのが現実的です。どの方式を選ぶかは、電源容量や排気経路の確保、コストを含めた現場判断になりますが、「どの工程から燃焼による水蒸気を室内に出さないようにするか」をあらかじめ決めておくと、仕上げ前の含水トラブルを減らしやすくなります。

なお、除湿機については、低温の環境では方式によって能力が落ちやすいものがあります。冬の現場で使う場合は、機種の使用温度範囲を確認し、室温が低い場所では方式を選ぶことが大切です。排水をタンクで受ける機種は、満水で停止していないかを毎日確認しましょう。せっかく設置した除湿機が夜間に止まっていた、という例は少なくありません。

また、ジェットヒーターの温風を濡れた下地に直接当てて急いで乾かすのも、あまりおすすめできません。表面だけが先に乾いて内部に水分が残ったり、急な乾燥で材料にひびや反りが出たりすることがあります。乾燥は、室温を安定させたうえで、換気と除湿で空気中の水分を少しずつ外へ出していくのが基本です。

第4章|工程ごとの対策|含水率を確認してからボード張り・クロス貼りへ

冬の工事中のカビを防ぐうえで、いちばん効果が期待できるのは「濡れたものを閉じ込めない」ことです。そのための共通の物差しになるのが含水率です。含水率とは、材料の中にどれだけ水分が含まれているかを示す割合のことで、専用の測定器で表面から測ることができます。見た目や手触りでは乾いているように見えても、内部に水分が残っていることはよくあります。次の工程に進む前に数値で確認し、記録に残すことで、「乾いたと思っていた」という思い込みによるトラブルを減らせます。

判断の基準となる数値は、材料の種類やメーカーの施工要領、設計図書・特記仕様書によって定められています。現場ではそれぞれの基準に従い、基準がはっきりしない場合は、監督員や設計者と事前に協議して決めておくと安心です。大切なのは、測る場所と時期です。外壁側、窓の下、床に近い下端、搬入口のそば、天井の外周部など、水分が溜まりやすい場所を優先して測り、朝の冷え込んだ時間帯の状態も把握しておくと実態に近づきます。

工程

起こりやすいこと

対策の例

次工程へ進む前の確認

解体・既存撤去

既存躯体の湿気・既存カビの露出

範囲の記録、原因の確認、必要に応じた処置

写真記録、躯体の含水の状態

コンクリート・左官

多量の水分を室内へ放出

保温しつつ換気・除湿を併用、乾燥期間を工程に確保

表面の含水、室内の湿度推移

断熱材・下地組み

外壁側で結露し断熱材や木下地が濡れる

資材を濡らさない保管、濡れた材料は使わない

断熱材の濡れ・木下地の含水率

石膏ボード張り

下端や外壁側が吸水する

床から浮かせて保管、搬入口の雪対策

ボードの含水率(特に下端・外壁側)

パテ・塗装

乾燥不足のまま重ね塗り

各層の乾燥時間を守る、室温と湿度を管理

乾燥状態、表面の含水

クロス・床仕上げ

湿った下地を密閉し内側からカビ

下地が基準内に下がるまで待つ

下地の含水率、接着剤の乾燥

換気と除湿は、どちらか一方ではなく併用するのが基本です。換気は湿った空気を外へ出し、乾いた外気を入れる働きをします。札幌の冬の外気は冷たく、含んでいる水分量が少ないため、うまく取り入れて暖めれば室内の湿度を下げる助けになります。ただし、開口を大きく開ければ室温が下がり、寒中施工の条件を満たせなくなることもあります。そこで、仮設の換気扇やダクトで計画的に排気しながら、除湿機で空気中の水分を回収し、必要な室温は燃焼による水蒸気の少ない暖房で確保する、という組み合わせが現実的です。温湿度計やデータロガーを各階の要所に置き、湿度の推移を見ながら運転を調整すると、根拠をもって判断できます。

資材の保管も見直したいポイントです。石膏ボードや断熱材は、搬入後すぐに使わない場合、床に直置きせず、外壁から離し、雪や結露水がかからない場所に置くことが大切です。一度濡れた石膏ボードは、乾いたように見えても強度や接着に影響が出たり、紙の部分にカビが生えやすくなったりすることがあります。濡れた資材は「乾かして使う」より「交換する」判断をしたほうが、結果的に手戻りが少なくなることもあります。

また、クロス貼りや床仕上げの直前は、ぜひ一度立ち止まる工程にしてください。仕上げてしまうと、下地の状態は外から見えなくなります。当社では、仕上げ前の段階で含水率の確認に加え、必要に応じて下地表面の付着菌検査(有料オプション)を行うことをおすすめしています。付着菌検査とは、表面をふき取るなどしてカビがどの程度付いているかを調べる方法です。この時点で問題が見つかれば、仕上げ後に比べて処置の範囲も手間も小さく済みます。

夜間と休工中の管理も工程の一部として考えましょう。燃焼器具は無人の時間帯に運転し続けないことが原則ですが、暖房を完全に止めると建物が冷え、日中に出た水蒸気が結露します。夕方の作業終了前にしばらく換気して湿った空気を入れ替えてから火を落とす、除湿機は排水の処理を確認したうえで運転を続ける、翌朝は窓や養生シート、外壁側の下地が濡れていないかを最初に見回る、といった手順を決めておくと効果的です。年末年始のような長期休工の前には、仕上げ前の部屋ほど念入りに確認し、休み明けにも同じ場所を点検して比べると、変化に気づきやすくなります。

第5章|改修工事・公共工事で特に注意したい現場|学校・区の施設・市営住宅

ここからは、札幌の改修工事・公共工事に焦点を当てます。札幌市の資料によると、市有建築物は1970〜80年代の建設が多く、築30年以上の割合が高いことから、2008年度から保全計画に基づく計画的な修繕が一元的に行われています。学校施設についても、市内には300校以上があり、その多くが1970〜80年代の建築で老朽化が進んでいると札幌市の学校施設維持更新基本計画で示されています。つまり、今後も「古い建物を、使いながら、冬をまたいで直す」工事が多く続くということです。

学校の改修で気をつけたいのは、工事区画と使用中の区画が隣り合う「居ながら改修」になりやすい点です。工事区画をシートや仮設間仕切りで区切ると、その中は換気が落ち、湿気がこもります。一方で、使用中の教室側へ燃焼排気や粉じんを流さないよう、区画は密閉が求められます。この相反する条件の中で湿気を逃がすには、工事区画から屋外へ直接排気する経路を確保し、燃焼による水蒸気の少ない暖房と除湿機を組み合わせるのが基本になります。札幌市の資料によると、市立学校の普通教室等では令和9年(2027年)夏までのエアコン使用開始を目標に、PFI方式で冷房設備の整備が進められており、体育館は令和15年度までの整備(中学校を優先)とされています。天井内の配管やダクトの工事が冬期に入る現場もあると思いますが、天井を開けたときに既存の断熱材や天井材が湿っていないか、結露跡やカビがないかを確認しておくと、その後の管理にも役立ちます。

学校や区体育館は、札幌市の基幹避難所に指定されていることも忘れてはならない点です。改修後の建物は、平常時の利用だけでなく、災害時に多くの人が過ごす場所になる可能性があります。工事中の湿気を閉じ込めたまま引き渡し、あとから天井裏や壁内でカビが広がれば、施設の利用に影響が出かねません。発注者の立場からは、引渡しを受ける前に、工事中の湿気管理の記録を確認しておくことをおすすめします。

現場の種類

冬の工事で起こりやすいこと

重点的に見たい場所

学校(居ながら改修)

工事区画の密閉で湿気がこもる

区画内の外壁側、天井裏、仮設間仕切りの裏

区の施設・体育館

大空間を燃焼式暖房で採暖しがち

高所の天井、外周の壁、器具庫・倉庫

市営住宅・集合住宅の住戸改修

空室の住戸が暖房・換気なしで冷える

北側の外壁、押入れ、浴室まわり、床下

図書室・書庫・文書庫

工事の湿気が紙資料に移る

書架の最下段、壁際、床に近い位置

機械室・地下ピット

空気が滞留し、結露・一酸化炭素の両面で危険

配管まわり、床、壁の下部

市営住宅や集合住宅の住戸改修も、冬の湿気が問題になりやすい現場です。札幌市の資料によると、市営住宅の管理戸数は26,486戸(95団地・724棟)で、そのうち築30年以上が約7割の18,751戸(令和5年度末)とされています。空室の住戸を順番に改修する場合、着工前の住戸は暖房も換気もないまま冷え込み、工事中に暖めた空気との温度差で結露しやすくなります。北側の外壁や押入れ、浴室まわりなど、もともと湿気の多い場所は特に注意が必要です。

図書室や文書庫を含む施設では、紙資料への影響も考えておきたいところです。国立国会図書館の資料では、書庫の湿度は65%以下が目安とされ、恒常的に65%を超えるとカビ発生の確率が高まるとされています。また、温湿度を急に変化させないこと、書架の最下段と床の間を空けること、データロガーで監視することも示されています。工事の湿気が資料室に流れ込まないよう、区画と空気の流れを確認し、可能であれば資料を事前に移動しておくと安心です。工事完了後も、しばらくは資料室の温湿度を記録し、数値が落ち着いてから資料を戻すと、工事の湿気の影響を受けにくくなります。改修で空調設備が新しくなった場合も、運転に慣れるまでは湿度の推移を見守ることが大切です。

公共工事の監督員の方にお願いしたいのは、工事中の湿気管理を施工計画書の段階で確認しておくことです。仮設暖房の方式と切り替え時期、換気・除湿の計画、含水率の測定箇所と時期、既存カビが見つかった場合の報告の流れが書かれていれば、現場で判断に迷う場面が減ります。施設の発注者の方にとっても、工事中にどのような管理が行われたかを把握できることは、引渡し後の維持管理計画を立てるうえで役立つはずです。

第6章|引渡し前チェックの項目|含水率・目視・菌検査と記録の残し方

工事中にどれだけ気をつけていても、冬の現場では湿気の影響をゼロにすることは難しいものです。だからこそ、引渡し前に「見えない場所に湿気とカビを残していないか」を確認する工程を設けておくことが大切です。ここでは、現場代理人の方の自主検査、監督員の方の検査、発注者の方の立会いのいずれでも使えるように、確認したい項目を整理します。新築の引渡し前検査とは違い、改修工事では既存部分と新設部分が混在するため、「工事で持ち込んだ湿気」と「もともとあった湿気」を分けて考える視点も必要です。

まず行いたいのは、目視とにおいの確認です。クロスの浮きや継ぎ目の開き、塗装面のふくれ、ボードの下端の変色、巾木まわりのしみ、天井の点状の汚れなどは、下地に水分が残っているサインであることがあります。カビ特有のかび臭さは、目に見える前に気づくきっかけになります。点検口があれば、天井裏や床下ものぞいて、断熱材の濡れや結露跡、黒い斑点がないかを確認しましょう。点検口のない壁内や狭い天井裏は、ファイバースコープなどの小型カメラで確認する方法もあります。

確認項目

主な方法

見るべきポイント

仕上げ面の異常

目視・触診

クロスの浮き、塗装のふくれ、変色、しみ、点状の汚れ

におい

各室・収納・天井裏での確認

かび臭さ、湿ったにおいの有無

下地の含水

含水率計による測定

外壁側、窓下、下端、搬入口周辺、天井外周部

隠れた部位

点検口からの目視、小型カメラ

断熱材の濡れ、結露跡、既存部分のカビ

表面のカビ

付着菌検査

気になる箇所の表面にカビがどの程度付いているか

室内の空気

落下菌検査・浮遊菌検査

工事区画と対照となる場所との比較

工事中の記録

温湿度ログ、含水率の記録、写真

乾燥待ち期間、除湿・換気の実施状況、既存カビの処置内容

次に、含水率の測定です。第4章で触れた仕上げ前の測定記録と、引渡し前の測定値を並べておくと、湿気が工事後に戻っていないかを確認できます。測定は日中の暖かい時間帯だけでなく、暖房を止めたあとの冷え込んだ時間帯の状態も参考になります。数値が基準内でも、同じ部屋の中で一か所だけ高い場所があれば、結露や漏水などの原因が隠れている可能性があるため、原因を確かめておきましょう。

そのうえで、必要に応じて菌検査を組み合わせます。付着菌検査は表面のカビの付き具合を、落下菌検査は一定時間に空気中から落ちてくるカビを、浮遊菌検査は空気中に漂うカビを調べる方法です。改修工事では、工事を行った区画と、工事をしていない区画や屋外などを比べると、工事の影響を判断しやすくなります。検査の結果は、あくまでその時点・その場所の状態を示すものであり、数値だけで安全性を断定するものではありません。結果の読み方や、どの検査を組み合わせるかは、現場の状況に合わせて専門業者と相談してください。

最後に、記録の残し方です。公共工事では、完成検査や引継ぎの資料として、工事中の温湿度の記録、含水率の測定記録、既存カビを見つけた場合の写真と処置内容、菌検査を行った場合の結果をまとめておくと、施設管理者が引渡し後の維持管理に活かせます。指定管理者や学校など、実際に施設を使う方へ「どこで湿気が出やすかったか」を伝えておくことも、引渡し後のカビを防ぐ大切な情報になります。万一、引渡し後にカビが出た場合も、記録があれば原因の切り分けがしやすくなります。

指摘事項が見つかった場合は、是正の範囲を決める前に原因を確かめることが大切です。結露による湿気であれば換気や断熱の見直し、漏水であれば止水、資材の濡れであれば交換というように、原因によって必要な処置は変わります。カビが付いた下地を残す場合は、素材を傷めにくい方法で除去を行い、処置後に再度含水率や付着菌を確認して記録に残すと、是正の結果を客観的に示せます。

引渡し後の最初の冬も、実は大切な確認期間です。工事中に建物の内部に残ったわずかな水分は、暖房が入り、室内外の温度差が大きくなる時期に結露として表に出てくることがあります。施設管理者の方には、引渡し後の最初の暖房期に、外壁側の壁や天井、収納の内部、北側の部屋などを一度点検していただくようお伝えしておくと安心です。

まとめ|冬の工事は「乾かしてから閉じる」工程管理と、引渡し前の確認でカビを防ぐ

冬の改修工事・公共工事で起きるカビは、特別な事故ではなく、閉め切った建物の中で水分が行き場を失うことで起こる、ごく自然な現象です。コンクリートや左官、塗装から出る水分、灯油ジェットヒーターなどの燃焼で生じる水蒸気、雪で濡れた資材が、札幌の冬の長い暖房期間、窓や開口を開けにくい豪雪期、大きな室内外の温度差という条件と重なることで、石膏ボードや断熱材、内装下地に結露として移り、仕上げの裏でカビ化していきます。工事中の建物は、完成後の建物よりも水分の発生源が多く、しかも換気がしにくいという点を、まず関係者全員で共有しておくことが出発点です。

対策の基本は、「濡れたものを閉じ込めない」ことに尽きます。工程ごとに含水率を測って記録し、基準内に下がったことを確認してからボード張り、クロス貼り、床仕上げへ進むこと。換気と除湿を併用し、燃焼による水蒸気の少ない暖房へ切り替える工程を決めておくこと。資材を濡らさない保管と、搬入口の雪対策を徹底すること。夜間や休工中の冷え込みを見越して、終業前の換気と翌朝の見回りを手順にすること。どれも特別な技術ではありませんが、冬の工期の中で確実に続けることが、手戻りを減らす近道になります。

そして、燃焼器具の一酸化炭素には最大限の注意を払ってください。閉め切った空間での燃焼器具の使用は、結露とカビの原因になるだけでなく、作業員の健康と安全に直結します。換気の確保、一酸化炭素警報器の設置、無人時の運転禁止、空気が滞留しやすい場所での使用を避けることを、現場のルールとして徹底しましょう。体調に異変を感じた場合は、すぐに作業を中止し、医療機関に相談してください。

札幌では、市有建築物や学校、市営住宅の多くが1970〜80年代に建てられており、使いながら直す改修工事は今後も冬をまたいで続きます。発注者や監督員の方は、工期設定の段階で乾燥待ちの期間を見込み、段階確認に含水率の項目を加え、引渡し前に目視・含水率・必要に応じた菌検査を行う流れをつくっておくと、完成後の施設を安心して使っていただけます。

工事中のカビは、仕上げてしまうと見えなくなり、見つかったときには手戻りが大きくなりがちです。反対に、工事の途中で気づけば、処置の範囲も手間も小さく済むことが多いものです。「おかしいな」と感じた時点で記録を残し、早めに関係者で共有することを、現場の習慣にしていただければと思います。

Q. 工事中にボードの一部にカビが見つかりました。表面をふけば仕上げに進んでもよいでしょうか?

A. 表面をふき取っても、ボードの内部や裏側、断熱材に湿気やカビが残っていることがあります。まずは範囲と原因(結露か、漏水か、資材の濡れか)を確認し、含水率を測ったうえで、交換するか処置するかを監督員・設計者と協議することをおすすめします。原因を取り除かないまま仕上げると、仕上げ後に再発するおそれがあります。

Q. ジェットヒーターを使わずに冬の内装工事を進めることはできますか?

A. 現場の条件によりますが、排気を屋外へ出す間接式の暖房や電気式ヒーターと除湿機を組み合わせる方法があります。電源容量や排気経路、費用などの条件を踏まえ、どの工程から切り替えるかを事前に計画しておくと、結露と一酸化炭素の両方のリスクを下げやすくなります。

工事中の湿気やカビについて判断に迷ったときは、専門業者の調査を工程の途中に組み込むのもひとつの方法です。含水率の測定や菌検査は、仕上げ前・引渡し前のどちらの段階でも行えます。第三者による測定結果を記録として残しておくことで、受発注者の双方が同じ情報をもとに判断しやすくなります。なお、健康面で気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関へご相談ください。

カビバスターズ北海道では、工事中や引渡し前の含水率測定、付着菌検査・落下菌検査・浮遊菌検査(菌検査は有料オプション)などの各種調査から、素材を傷めにくいMIST工法®による除去、カビが生えにくい環境づくりまでをワンストップでご提案しています。改修工事・公共工事の現場代理人の方、監督員の方、施設の発注者の方からのご相談にも対応しており、費用は現地状況により異なりますので、まずは現場の状況をお聞かせください。札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応していますので、お気軽にご相談ください。


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