釧路の年平均湿度77%、夏は87%|道東の店舗・倉庫・施設で建物を守るカビ管理

「北海道は乾燥している」が通じない地域があります
北海道は本州に比べて湿度が低い、というイメージがあります。実際、札幌の年平均相対湿度は69%です(気象庁平年値・1991–2020年)。
しかし、同じ北海道でも釧路の年平均相対湿度は77%。さらに6月は87%、7月は88%、8月は87%、9月は84%と、夏から初秋にかけて4か月連続で84%を超えます。

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、特定建築物の室内相対湿度を40%以上70%以下に保つことが定められています。釧路の外気は、夏季にこの基準の上限を大きく上回る状態が続くということになります。
そして2026年8月28日には、釧路町・厚岸町・浜中町付近で、時間り80mm以上の猛烈な雨が観測されたと報じられました。慢性的な高湿度に、大雨が重なった形です。
この記事は、道東で店舗・倉庫・工場・宿泊施設・介護施設などを運営されている方に向けて、建物側で何を設計しておくべきかを整理したものです。
1. 海霧の地域で起きていること
釧路をはじめとする道東太平洋側は、夏に海霧(じり)が発生しやすい地域です。暖かく湿った空気が冷たい海面上を流れることで霧が発生し、内陸に流れ込みます。事業所の建物にとって、これは次の意味を持ちます。
現象 | 建物への影響 |
夏の気温が上がらない(釧路8月の平均気温18.2℃) | 冷房を使わない、または使用時間が短い |
冷房を使わない | 除湿機能が働かない |
外気の相対湿度が高い | 換気しても湿度が下がらない |
日射が少ない | 建物表面・地面が乾きにくい |
大雨が加わる | 建物周囲の地盤が湿った状態が続く |
「涼しいから冷房が要らない」ことが、そのまま「除湿されない」につながる——これが道東の建物管理で見落とされやすい構造です。札幌のように冷房を使う地域では、冷房が結果的に除湿の役割も果たしますが、それがない地域では湿度対策を別に設計する必要があります。
2. 業種別・カビが問題になりやすい場所
業種 | 特に注意したい場所 | 理由 |
倉庫・物流 | 外壁面に接した保管棚、パレット下、シャッターまわり | 空気が動かず、床面の温度が低い |
食品関連 | 厨房裏の壁、冷蔵設備の背面、排水まわり | 温度差と水分が同時に発生 |
小売店舗 | バックヤード、在庫室、階段下 | 空調が効かず、扉が閉まっている |
宿泊施設 | 客室の外壁側、浴室・脱衣所、使用頻度の低い客室 | 稼働の波によって空室期間が生じる |
介護・医療施設 | 居室の北側、リネン庫、空調ダクトまわり | 湿度管理と衛生管理が同時に求められる |
事務所 | 書庫、更衣室、地下・半地下 | 常時人がいないため気づきにくい |
共通しているのは、「人が常時いない場所」「扉が閉まっている場所」「外壁や地面に接している場所」の3条件です。これが重なるところから出ます。
3. 事業所として押さえておきたい公的な基準
事業所の場合、家庭とは異なり、参照すべき基準が存在します。
対象 | 基準 | 内容 |
特定建築物(延べ面積3,000㎡以上の事務所・店舗等) | 建築物環境衛生管理基準(厚生労働省) | 相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下 など |
学校 | 学校環境衛生基準(文部科学省) | 相対湿度30%以上80%以下が望ましい |
食品を扱う事業者 | HACCPに沿った衛生管理(厚生労働省) | 一般衛生管理の記録・検証が求められる |
宿泊施設 | 旅館業法に基づく衛生措置 | 換気・清潔保持に関する規定 |
特定建築物に該当しない規模の事業所であっても、上記の数値は実務上の目安として有効です。「70%を超えている状態が続いていないか」を管理の軸に据えると、判断がしやすくなります。
記録を残すことの意味
温湿度計を置いて数値を控える、という作業は地味ですが、事業所においては次の意味を持ちます。
問題が起きたときに、いつからその状態だったかを説明できる
改善策の効果を、感覚ではなく数値で判断できる
保険・賃貸借契約・取引先対応において、管理していた事実を示せる
HACCPの一般衛生管理における記録として活用できる
記録用の温湿度計(データロガー)は、数千円から入手できます。まず測る、という段階から始めるのが現実的です。
4. 道東の事業所で、今の時期にやっておく点検
9月は、夏の高湿度期が終わり、暖房シーズンに入る前の端境期です。この時期の点検が最も効率的です。
[1]稼働していない空間を開ける使っていない客室、在庫の少ない倉庫区画、季節商品の保管庫。扉を開け、空気を動かします。
[2]外壁に接した面の温度を触って確認する他の壁より明確に冷たい面は、冬に結露が集中する候補です。
[3]保管物を壁と床から離す壁から10cm、床からパレット1枚分。これだけで空気が動きます。段ボールは吸湿するため、長期保管品は特に注意が必要です。
[4]排水まわり・グリストラップ・給湯配管の確認漏水の有無。わずかな漏れが継続していると、周辺の壁内で進行します。
[5]空調・換気設備のフィルターと排水ドレンパンに水が溜まっていないか、ドレン配管が詰まっていないか。
[6]建物外周の排水2026年8月の大雨の後、基礎周辺に水が滞留した跡がないか。雨どいの落ち口が建物側に向いていないか。
[7]温湿度の記録を開始する一番奥、一番使っていない場所に1台。これが翌年の判断材料になります。
5. 事業所として、相談を検討すべきタイミング
状況 | 判断 |
従業員・利用者から「においがする」と複数回言われた | 発生源の特定を検討する段階 |
在庫・什器にカビが付着した | 保管環境の見直しが必要 |
清掃で対応したが、3か月以内に再発した | 水分供給源が残っている可能性 |
温湿度計が70%を継続して超えている | 環境側の対策が必要 |
監査・立入検査・取引先確認の予定がある | 記録と対応を整えておく段階 |
客室・客席で発生し、営業に影響が出ている | 対応時間の設計が必要 |
事業所の場合、営業を止めずに対応したいというご要望が多くなります。作業範囲と所要時間の見通しを最初に整理しておくと、営業計画と両立させやすくなります。
6. よくあるご質問
Q. 除湿機を何台置けばいいですか?A. 空間の容積、換気量、湿気の供給源によって必要台数が変わります。台数を増やすより、湿気の入り口をふさぐことと、空気を動かすことを先に検討したほうが効率的な場合が多いです。
Q. 冬は乾燥するので、夏だけ対策すればいいですか?A. 釧路の平年値では、11月〜2月も67〜69%です。札幌の同時期と大きくは変わりませんが、暖房による温度差で別の形の結露が起こります。季節ごとに条件が変わる、と考えるほうが実態に近いです。
Q. 食品を扱う施設ですが、使える薬剤は限られますか?A. 施設の用途によって配慮すべき点が変わります。事前に用途とご要望を伺ったうえで、対応方法をご提案しています。
Q. 費用の目安を教えてください。A. 面積、用途、営業中か否か、下地の状態によって内容が変わるため、一律の金額はお示ししていません。現地確認のうえでお見積りをお出ししています。
「気候だから仕方ない」で終わらせないために
道東の高湿度は、事業所の努力で変えられるものではありません。しかし、その気候の中で建物をどう管理するかは設計できます。
釧路の夏の外気が87%であることは前提として、そのうえで、
湿気の入り口を減らす
空気を動かす
湿った状態が続く空間をつくらない
数値で記録して、変化に気づく
この4つを回していくことが、事業所として現実的な対策になります。
カビバスターズ北海道では、MIST工法®により、内装や什器を残したまま処理を行うことを前提とした対応を行っています。倉庫・店舗・宿泊施設・介護施設など、営業を続けながらの対応が必要な現場のご相談も承っています。
まずは「一度見てほしい」というご相談から。 現地の状況を確認し、環境側の対策と処理のどちらから着手すべきかを整理してご提案します。北海道全域に対応しています。
補足:道東は「冬の乾燥」も一様ではありません
気象庁の平年値で比べると、釧路の11月〜2月の平均相対湿度は67〜69%です。同じ時期の札幌(67〜69%)とほぼ同水準で、旭川(78〜83%)よりは低い値になります。つまり道東は、夏に突出して湿度が高く、冬は道内の他地域と大きく変わらない、という季節差の大きい地域です。
この季節差は、建物管理上ふたつの意味を持ちます。ひとつは、夏の高湿度期に材料が含んだ水分が、冬に暖房で温められた面と冷たい面のあいだで再び動くこと。もうひとつは、夏に効いていた対策(換気・除湿)が、冬にはそのまま使えないことです。年間を通じて同じ方法で管理しようとすると、どちらかの季節で無理が出ます。
だからこそ、9月のこの端境期に一度、建物の状態を数値と目視で確認しておくことが、翌シーズンの負担を減らす近道になります。
出典
気象庁「過去の気象データ検索(平年値・月ごとの値)」釧路・札幌・旭川(統計期間1991–2020年)
日本気象協会 tenki.jp「北海道で猛烈な雨 記録的短時間大雨相次ぐ」(2026年8月28日)
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下)
文部科学省「学校環境衛生基準」(相対湿度30%以上80%以下が望ましい)
厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化」
厚生労働省「旅館業法」に基づく衛生措置に関する規定




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