小樽のカビ対策|石造倉庫・古い商家・坂の街の半地下に出るカビと結露の原因
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。北海道全域でカビの調査・除去を行っている当社には、小樽市内の店舗オーナー様や宿の運営者様、坂の上に住む個人のお客様から「運河沿いの石造倉庫を改装したカフェで、壁際だけが毎年黒ずむ」「古い商家を宿にしたら、冬の終わりに蔵の中がカビ臭くなった」「斜面に建つ家の半地下の部屋だけ、押し入れの奥が湿っている」といったご相談をいただきます。小樽は明治から大正にかけて港と商業で栄えた街で、軟石を積んだ倉庫や商家が今も数多く残り、その多くが飲食店や雑貨店、ホテル、ゲストハウスとして活用されています。こうした建物は小樽らしい景観をつくる大切な財産である一方、厚い石の壁や地下の蔵、斜面を削った敷地など、現代の住宅とはまったく違う湿気のたまり方をします。さらに日本海に面した後志地方の気候、冬の季節風と雪が重なることで、札幌の一般的な住宅とは違う場所にカビが出やすくなります。本記事では、気象庁の平年値で確認できる小樽の気候を出発点に、木骨石造の倉庫や古い商家、地下室・蔵、坂の街の半地下住宅で起こりやすいカビの仕組みと、建物を傷めずに調べて対処する考え方を、現場目線で整理しました。店舗やカフェ、宿を運営されている方はもちろん、坂の街で古い住宅にお住まいの方にも、建物の状態を見直すきっかけにしていただければ幸いです。
この記事の結論 小樽の運河沿いの石造倉庫や古い商家、坂の街の半地下住宅に出るカビを、気象庁の平年値でみる小樽の気候、厚い石壁の結露と蓄湿、冬の季節風と雪、地下室・蔵の空気の停滞から解説し、建物を傷めない調査と対処を紹介します。
第1章|小樽のカビ問題は「古い建物」だけでは説明できない|港町の気候と石の街
結論から言うと、小樽のカビ問題は「建物が古いから」という一言では片づけられません。港に面した湿った空気、冬の日本海側らしい雪と曇天、そして石・土・木が組み合わさった歴史的な建物の構造という三つの条件が重なって、特定の場所に湿気が集まりやすくなっているのです。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、小樽のご相談は「壁の一部だけ」「床に近い部分だけ」「建物の奥の一室だけ」というように、カビの出る範囲がはっきり偏っていることが多いと感じます。
まず気候から見てみましょう。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、小樽の年平均の相対湿度は72%です。相対湿度とは、その温度の空気が含むことのできる水蒸気の量に対して、実際にどれくらい含んでいるかを示す割合のことです。月別に見ると、6月は78%、7月は81%、8月は78%と、夏に高くなります。冬の1月も71%、12月も71%と、雪の季節でも大きくは下がりません。一般にカビは湿度が高い状態が続くほど生えやすくなるため、小樽は一年を通じて「乾ききる季節」が短い街だと言えます。
次に建物です。小樽市の解説によると、小樽の街並みを象徴する「木骨石造(もっこつせきぞう)」は、外から見ると石だけで積んだように見えますが、内部には木の柱や梁の骨組みがあり、厚さ15センチメートル程度の軟石を「かすがい」という金物で柱に留めて外壁にした造りです。明治20年頃から建てられ始め、明治37年の稲穂町大火の後に市街地で広く採用されたとされています。つまり、石の壁と木の骨組みという、湿気に対する性質がまったく違う材料が背中合わせになっている建物なのです。
また小樽市によると、小樽運河は大正12年に完成し、昭和61年に一部が埋め立てられ、幅の半分が道路となって散策路が整備されました。運河沿いの石造倉庫群は当時の姿のまま残され、レストランなどに再利用されています。倉庫は本来、荷物を置くための建物で、人が長時間過ごし、調理をし、お湯を沸かし、暖房を焚くことを前提には造られていません。ここに現代の使い方が加わると、室内で生まれる水蒸気の量と、壁が湿気を逃がす力とのバランスが崩れやすくなります。
月 | 平均気温(℃) | 平均相対湿度(%) | 日照時間(時間) |
1月 | -3.1 | 71 | 63.5 |
4月 | 6.5 | 64 | 175.5 |
7月 | 20.2 | 81 | 163.3 |
10月 | 11.8 | 69 | 139.7 |
12月 | -1.1 | 71 | 59.0 |
年 | 8.8 | 72 | 1586.2 |
上の表は、気象庁の小樽の平年値(1991〜2020年)から主な月を抜き出したものです。湿度が最も低い4月でも64%あり、夏は80%前後まで上がります。冬は湿度こそ70%程度ですが、12月と1月の日照時間は月60時間前後と短く、外壁に日が当たって乾く時間がとても限られます。現場でよく目にするのが、夏に石壁の内側がじっとり汗をかき、冬には日の当たらない壁が乾かないまま春を迎えるという、一年を通じた「乾かないサイクル」です。
もう一つ、小樽の建物で見落とされがちなのが「用途の変化」です。同じ建物が、倉庫から物販店へ、物販店からカフェへ、さらに宿泊施設へと、数十年のうちに何度も使い方を変えているケースは珍しくありません。そのたびに内装が重ねられ、元の石壁の上に木下地と石こうボード、さらに壁紙が張られていることもあります。こうした改装の履歴によって湿気の逃げ道が変わるため、当社では調査の最初に、いつ、どのような改装をしたのかをオーナー様に伺い、図面や過去の写真があれば見せていただくようにしています。
このように、小樽のカビ対策は、単に「換気しましょう」「除湿しましょう」という一般論だけでは足りません。どの季節に、建物のどの部分へ、どんな経路で水分が入ってくるのかを、建物ごとに読み解く必要があります。次章からは、石造倉庫の壁、冬の季節風と雪、地下室や蔵、坂の街の住宅という順に、小樽ならではのカビの出方を具体的に見ていきます。
なお、この記事でいう「カビ」は、壁や天井、木部、収納品などの表面に見える黒や緑、白っぽい斑点だけではありません。においだけがして見た目には分からない段階や、壁紙や内装材の裏で進んでいる段階も含めて考えています。小樽の古い建物では、見えている範囲がごく一部にすぎないことも多いため、においや湿り気といった小さなサインにも目を向けていただくことが大切です。
第2章|石造倉庫・木骨石造のカビ|厚い石壁の結露と「蓄熱・蓄湿」
石造倉庫を改装した店舗でもっとも多いご相談は、「石壁の内側の、床に近い部分が黒くなる」「壁際に置いた棚や段ボールの裏にカビが出る」というものです。その背景にあるのが、石壁の「蓄熱」と「蓄湿」という性質です。蓄熱とは、厚い壁が熱をため込み、温まるのにも冷えるのにも時間がかかる性質のことです。蓄湿とは、石や漆喰などの材料が空気中の水分を吸ってため込み、ゆっくり吐き出す性質のことです。どちらも建物の快適さを支える長所ですが、使い方によってはカビの原因にもなります。
小樽市の解説にもあるように、木骨石造は「夏は涼しく冬は暖かい」と言われてきました。厚い石が外の暑さ寒さを和らげるためです。ところが、北海道の暖房期間は概ね10月から4月までと長く、その間、石壁は外の冷たい空気に長時間さらされて芯まで冷えています。室内で暖房を焚いても、厚い石壁はすぐには温まりません。すると、暖められて水蒸気を多く含んだ室内の空気が冷たい石壁に触れ、表面で結露が起こります。結露とは、空気中の水蒸気が冷たい面で冷やされて水滴に変わる現象のことです。
特に注意したいのが、室内外の温度差が大きくなる真冬の朝です。夜間に暖房を止める店舗では、朝に一気に暖房を入れ、仕込みでお湯を沸かし、人が集まり始めます。室温と湿度が急に上がる一方で、石壁はまだ冷えたままなので、壁の下のほうや柱との取り合い部分に水滴がつきやすくなります。現場でよく目にするのが、壁面の上半分は乾いているのに、床から数十センチの帯状の範囲だけがしっとり濡れ、そこから黒カビが広がっている状態です。冷たい空気は下にたまるため、壁の下部ほど温度が低くなりやすいのです。
もう一つの落とし穴が、石壁の内側に後から張った内装材です。木骨石造の倉庫を店舗にする際、石壁の内側に木の下地を組み、石こうボードや合板を張って仕上げることがあります。見た目は現代の店舗と変わりませんが、石壁と内装材の間には空気が動きにくいすき間が生まれます。室内の湿った空気がこのすき間に入り込み、冷たい石の裏側で結露すると、表からは見えない場所で木下地やボードの裏にカビが進みます。表面のクロスに小さなシミが出た時点で、裏側はかなり広がっていることもあります。
壁の状態 | 湿気のたまり方 | カビが出やすい場所 | 確認のポイント |
石壁を室内側にそのまま見せている | 石の表面で結露し、目地や表層に水分を吸い込む | 壁の下部、目地、柱との取り合い | 冬の朝の壁表面の濡れ、白い粉(塩類)の有無 |
石壁の内側に木下地とボードを張っている | すき間に入った湿気が石の裏側で結露する | ボードの裏、木下地、床との境目 | クロスのシミ、壁際の臭い、含水率 |
石壁に棚や什器を密着させている | 什器の裏で空気が動かず、壁が冷えたままになる | 棚の背板、段ボール、商品の裏 | 什器を動かしたときの壁と背板の状態 |
木の柱・梁が室内に露出している | 石と木の境目に結露水が伝わる | 柱の下端、梁の端部、かすがい周り | 木部の変色、柔らかさ、含水率 |
石壁の表面に白い粉のようなものが浮いているのを見かけることがあります。これは、壁の中を移動した水分が表面で蒸発する際に、石やモルタルに含まれる成分が結晶として残ったもので、一般に「白華(はっか)」と呼ばれます。白華そのものはカビではありませんが、壁の中を水分が行き来している目印になります。当社では、白華が出ている範囲と、カビの出ている範囲を見比べ、水分がどこから入ってどこへ抜けているのかを推測する手がかりにしています。
石造倉庫のカビを考えるうえで大切なのは、「石が悪い」「古いから仕方ない」と考えないことです。石壁は、湿気を吸ったり吐いたりしながら長い年月を過ごしてきました。問題になるのは、その呼吸を妨げる内装や什器の置き方、急激な暖房、室内で増えた水蒸気といった「後から加わった条件」であることが多いのです。そのため対策も、壁を密閉することではなく、壁が乾ける時間と経路をどう確保するかという発想が基本になります。
当社の現場での傾向として(統計ではありません)、石造倉庫を改装した店舗では、開業して最初の冬から2回目の冬にかけてカビに気づかれることが多いように感じます。最初の一年は内装が新しく目立ちにくいものの、壁の中に少しずつ水分がたまり、二度目の冬にシミやにおいとして表に出てくる、という経過です。開業前や改装直後に一度、壁の含水率や温湿度を記録しておくと、後で変化を比べる基準になります。
第3章|日本海側の冬の季節風と雪|豪雪期に石壁と窓まわりが濡れ続ける理由
小樽の冬を語るうえで欠かせないのが、日本海から吹きつける季節風と雪です。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、小樽の降雪の深さの年合計は556センチメートル、年最深積雪は118センチメートルとされています。月別の最多風向を見ると、11月から3月は西南西が多く、12月と1月の平均風速は3メートル台と、夏より強めです。雪を伴った風が同じ方角から繰り返し当たる環境は、石壁や窓まわり、建物の角にとって、長い期間にわたって水分を受け続ける条件になります。
石の外壁に吹きつけた雪は、壁の表面で溶けたり凍ったりを繰り返します。軟石は細かいすき間の多い石で、溶けた水を少しずつ吸い込みます。日照時間が短い冬は、吸い込んだ水分が外へ乾く時間が限られるため、風上側の壁ほど湿った状態が春まで続きやすくなります。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、同じ建物でも季節風が当たる面の内側と、そうでない面の内側とで、壁の含水率やカビの出方に差が見られることがあります。含水率とは、材料にどれくらいの水分が含まれているかを示す割合のことです。
雪そのものも、建物の足元に影響を与えます。建物の周りに積もった雪や、屋根から落ちた雪が外壁の下部を長期間覆うと、その部分の壁は冷たい雪に触れ続け、融雪期には溶けた水にさらされます。室内側では、ちょうど壁の下部から床にかけての範囲が冷えて湿りやすくなり、第2章で触れた「床から数十センチの帯状のカビ」がさらに出やすくなります。除雪の際に壁際へ雪を寄せる習慣がある場合は、それだけでも室内側の条件が変わることがあります。
もう一つの問題は、豪雪期には窓を開けにくいことです。吹雪の日に窓を開ければ雪が吹き込み、せっかくの暖房も逃げてしまいます。そのため、冬のあいだは窓を閉め切り、換気扇や給気口だけに頼る時間が長くなります。古い建物では、後から付けた換気設備の能力が、店舗やカフェとしての使い方に見合っていないこともあります。調理や食器洗い、お客様の出入りで生まれる水蒸気が室内にこもり、冷えた石壁や窓まわりで結露する、という流れが冬じゅう続くのです。
冬の条件(小樽) | 建物への影響 | 室内側で起こりやすいこと |
西南西からの季節風が多い(11月〜3月の最多風向) | 風上側の外壁に雪と雨が当たり続ける | 風上側の壁の内側が湿りやすい |
降雪が多く、積雪が長く残る | 外壁の下部が雪に覆われて冷え、融雪期に濡れる | 壁の下部から床にかけての結露・カビ |
12月・1月の日照時間が短い(月60時間前後) | 外壁が日射で乾く時間が少ない | 吸い込んだ水分が春まで抜けにくい |
暖房期間が長い(概ね10月〜4月) | 室内外の温度差が大きい状態が続く | 冷えた壁面・窓・柱の周りで結露 |
豪雪期は窓を開けにくい | 換気が設備頼みになる | 水蒸気がこもり、奥の部屋ほど湿る |
札幌の住宅地と比べると、小樽の運河周辺や海沿いの地区は、海からの風を受けやすく、古い建物が密集しているという違いがあります。隣の建物と壁が近い場合、その間には日が入らず、雪も溶けにくくなります。こうした「建物と建物のすき間」に面した壁は、外から見えにくいうえに乾きにくいため、室内側にカビが出てから気づくことが多い場所です。
とくに小樽運河に近い色内や堺町の周辺は、石造倉庫や古い商家が通り沿いに連なり、観光客でにぎわう一方、建物の裏手や隣との境は人目に触れにくい場所になっています。冬季休業や営業時間の短縮で暖房を弱める期間がある店舗では、建物全体が冷え込み、再び暖房を入れたときに結露が一気に起こることもあります。休業中も最低限の暖房と換気を続けるかどうかは、建物の状態を見ながら決めておきたいポイントです。
窓まわりにも小樽の古い建物ならではの事情があります。歴史的な建物では、外観を保つために元の木製の窓枠や鉄製の扉を残し、その内側に新しいサッシや内窓を付けていることがあります。二つの窓の間にできる空間は冷えやすく、室内の湿った空気が入り込むと結露がたまりやすくなります。窓台や窓枠の木部が濡れたままになると、そこから黒カビが広がり、周囲の石壁にも湿気が伝わります。冬のあいだは、窓の下の結露水が石壁の目地に染み込んでいないかも、あわせて見ておきたいところです。
第4章|地下室・蔵・古い商家の奥|空気が動かない場所に出るカビ
小樽の古い商家や倉庫には、地下室や半地下の貯蔵庫、敷地の奥に建つ蔵、表の店と住まいをつなぐ通り土間など、現代の住宅にはあまり見られない空間が残っています。これらを倉庫や客室、ワインセラー、ギャラリーとして活用する例も増えていますが、当社に寄せられるご相談の中でも、特にカビ臭さが強く出やすいのがこうした「奥の空間」です。共通しているのは、空気が動きにくく、温度が低く、地面や土に近いという三つの条件です。
地下室は、周囲を土に囲まれているため、一年を通じて温度の変化が小さいという特徴があります。これは貯蔵には向いていますが、湿気の面では注意が必要です。夏には外の暖かく湿った空気が入り込み、ひんやりした地下の壁や床に触れて結露します。いわゆる「夏型結露」と呼ばれる現象で、冬の結露とは逆に、暖かい外気が冷たい室内の面で冷やされることで起こります。気象庁の平年値で小樽の7月の平均湿度が81%とされていることを考えると、夏に地下の扉や窓を開けて「風を通したつもり」が、かえって湿気を運び込んでしまうことがあるのです。
地下の壁や床は、土の中の水分の影響も受けます。コンクリートや石の壁を通して地中の水分が少しずつ室内側へしみ出し、表面で蒸発を繰り返します。表面に白華が出ていたり、床の隅に水がにじんでいたりする場合は、壁の中を水分が移動しているサインです。こうした場所に段ボールや木箱、布製品を直置きすると、底面が湿って短い期間でカビが生えることがあります。
蔵は、厚い土壁や石壁と重い扉で外気を遮り、中の品物を守るための建物です。扉を閉め切っている時間が長いと、中の空気はほとんど入れ替わりません。普段は使わず、年に数回だけ開ける蔵では、扉を開けた瞬間にカビ臭さを感じる、ということがよくあります。特に、冬のあいだ閉め切っていた蔵を春先に開け、暖かい外気を入れたときに、冷えた壁や床で結露が起こりやすくなります。使っていない期間の管理と、開けるタイミングの選び方が大切です。
空間 | 湿気の主な原因 | カビが出やすい場所 | 日常の管理の目安 |
地下室・半地下の貯蔵庫 | 地中からの水分、夏の外気による結露 | 床の隅、壁の下部、直置きの箱や棚の底 | 夏は外気の取り込み方に注意し、床から浮かせて保管 |
敷地奥の蔵 | 閉め切りによる空気の停滞、厚い壁の冷え | 床板の裏、収納品、扉周り | 開けるタイミングと時間を決め、温湿度を記録 |
通り土間・土間続きの部屋 | 土間床からの湿気、外気の出入り | 框(かまち)の周り、腰壁、建具の下端 | 床に近い木部の変色や臭いを定期的に確認 |
店舗奥の旧住居部分・納戸 | 暖房が届かず冷えやすい、人の出入りが少ない | 押し入れ、北側の壁、天井の隅 | 扉を少し開けて空気を動かし、物を詰め込みすぎない |
古い商家では、表の店舗部分は改装されて暖房も効いている一方、奥の旧住居部分や納戸は当時のまま残され、ほとんど暖房が届いていないことがあります。暖かい店舗側の湿った空気が、廊下や建具のすき間を通って奥の冷えた部屋に流れ込むと、その部屋の壁や押し入れの中で結露が起こります。現場でよく目にするのが、表からは想像できないほど、奥の部屋の天井の隅や押し入れの壁が黒くなっているケースです。人の出入りが少ないため、発見が遅れやすい場所でもあります。
こうした空間では、カビ臭さが空気に乗って店舗や客室の側へ流れてくることもあります。「店内がなんとなくかび臭い」「客室の押し入れを開けると臭う」というご相談の原因が、実は隣接する蔵や地下にあった、というケースも当社では経験しています。臭いの発生源を特定するには、目に見えるカビだけでなく、空気の流れと温湿度の分布をあわせて確認することが大切です。
なお、地下室や蔵の品物にカビが出た場合、品物だけをきれいにしても、空間の条件が変わらなければ再び同じことが起こりやすくなります。特に、古文書や掛け軸、着物、木製の家具など、素材そのものが湿気を吸いやすい品物は、置き場所と保管方法を見直すことがあわせて必要です。貴重な品物については、専門の修復家や保存の専門家にご相談いただくことをおすすめしています。当社では、建物側の空間の調査と、壁・床・天井などのカビ除去と環境改善のご提案を担当し、品物の扱いについては専門家と役割を分けて対応するようにしています。
第5章|坂の街の住宅|斜面の半地下・擁壁側の部屋に湿気がたまる仕組み
小樽は、海から山へと急な坂が続く街です。住宅地の多くが斜面にあり、道路から見ると平屋なのに、裏へ回ると一段下がった半地下の階がある、という家も少なくありません。斜面の敷地では、土を削ったり盛ったりして平らな部分をつくり、その土を支えるためにコンクリートや石積みの擁壁(ようへき)が設けられます。擁壁とは、高低差のある土地で土が崩れないように支える壁のことです。この斜面と擁壁が、坂の街の住宅に特有のカビの原因になることがあります。
半地下の部屋は、壁の一部が土に接しています。山側の壁は常に土の温度と水分の影響を受けるため、冬は冷たく、夏もひんやりしています。第4章で触れた地下室と同じように、夏は外の湿った空気がこの冷たい壁に触れて結露し、冬は室内の暖かい空気が冷えた壁で結露します。さらに斜面では、雨水や雪解け水が山側から建物の方へ流れてくるため、土に接した壁の外側は、ほかの壁より湿った状態が長く続きます。
擁壁のすぐそばに建つ住宅では、擁壁と建物の間が狭く、日も風も入りにくい空間になっていることがあります。冬にはこのすき間に雪がたまり、春先まで溶けずに残ることも珍しくありません。擁壁側の外壁は、ほとんど日が当たらず、雪と雪解け水にさらされ続けるため、室内側の壁が冷えて湿りやすくなります。現場でよく目にするのが、擁壁側の部屋の押し入れやクローゼットの奥の壁、北側の窓の下の壁にカビが集中しているケースです。
北海道の住宅は、暖房期間が概ね10月から4月までと長く、冬のあいだは窓を閉め切ることが多くなります。坂の街の半地下の部屋は、もともと窓が小さかったり、窓が擁壁の方を向いていたりして、晴れた日でも十分に換気しにくい間取りになりがちです。物置や趣味の部屋、洗濯物を干す部屋として使われることも多く、暖房を入れない時間が長い一方で、上の階の暖かく湿った空気が階段から下りてきて、冷えた半地下の壁で結露する、という流れが起こりやすくなります。
坂の街の住宅の条件 | 湿気の入り方 | 室内で注意したい場所 | できる対策の例 |
山側の壁が土に接する半地下 | 土からの冷えと水分、夏と冬の両方の結露 | 山側の壁の下部、床の隅、家具の裏 | 家具を壁から離し、床から浮かせて収納 |
擁壁との間が狭い | 日が当たらず、雪や雪解け水が残る | 擁壁側の押し入れ、窓の下の壁 | 擁壁側の雪を寄せすぎない、排水口の詰まりを確認 |
斜面の上から水が流れてくる | 雨水や融雪水が建物の基礎や外壁に集まる | 基礎に近い床、玄関土間、半地下の出入口 | 雨どい・側溝・排水の流れを点検 |
半地下が物置や室内干しの部屋 | 暖房が弱く、上の階の湿った空気が下りてくる | 天井の隅、収納品、布製品 | 室内干しを避ける、除湿機の活用、温湿度の記録 |
坂の街の住宅では、建物の外まわりの状態が室内のカビに直結しやすいのも特徴です。側溝や排水口が落ち葉や土で詰まっていると、雨水や雪解け水が建物の方へ流れ込み、基礎や外壁の下部を長く濡らしてしまいます。雪の季節が終わったら、擁壁の水抜き穴や敷地の排水口がふさがっていないか、雨どいから落ちる水が建物の足元にたまっていないかを確認してみてください。擁壁そのもののひび割れや傾きが気になる場合は、カビとは別の問題として、建築や土木の専門家にご相談いただくことをおすすめします。
また、坂の街の古い住宅では、増築を重ねて、元の建物と新しい部分で断熱の厚さや壁の造りが違っていることがあります。断熱の弱い部分は冬に冷えやすく、そこだけ結露してカビが出ることがあります。当社では、半地下や擁壁側の部屋のご相談では、カビの出ている場所だけでなく、同じ家のほかの部屋の壁の温度や含水率とも比べ、「なぜこの部屋のこの壁だけなのか」を確かめるようにしています。原因がわかれば、カビを除去したあとに同じ状態を繰り返さないための対策も立てやすくなります。
坂の多い小樽では、冬の間は除雪の手間から半地下の出入口や勝手口をほとんど使わなくなり、その周辺の空気がまったく動かなくなる、ということも起こります。春になって久しぶりに扉を開けたらカビ臭かった、というご相談は、当社でも雪解けの時期に集中する傾向があります。雪の季節の前に、半地下に置いている物を減らし、壁際を空けておくだけでも、春の状態は変わってきます。
第6章|店舗・カフェ・宿として使う歴史的建物のカビ|壊さずに調べ、素材を守って対処する
運河沿いの石造倉庫や古い商家を、店舗やカフェ、宿として活用している方にとって、カビは建物の問題であると同時に、営業の問題でもあります。お客様がにおいに気づく、客室の壁にシミが出る、商品や備品にカビが移るといったことは、評判にも関わります。一方で、歴史的な建物は、石壁や木の柱、漆喰、古い建具など、取り替えのきかない素材でできています。強い薬剤で一気に落とそうとしたり、壁を大きく壊して調べたりすることは、建物の価値そのものを損なうおそれがあります。
そこで当社が大切にしているのが、「まず壊さずに調べる」ことです。カビの見えている範囲だけで判断せず、その周りの壁や床の含水率を測り、どこまで水分が広がっているかを数値で確かめます。あわせて、室内と壁の表面の温度、室内の湿度を測り、結露が起こりやすい条件がどの時間帯・どの場所にあるかを把握します。必要に応じて、付着しているカビを採取して培養し、どのような種類のカビが多いのかを調べる検査も行います。見えない壁の裏や床下は、小さな穴から内部を確認できるファイバースコープを使うこともあります。
調べること | 主な方法 | 石造倉庫・商家でわかること |
壁・床・木部の水分量 | 含水率測定 | 石壁の下部や柱の根元など、水分が集まっている範囲 |
表面温度と室内の温湿度 | 表面温度計、温湿度計、データロガーによる記録 | 冬の朝や夏の夕方など、結露が起こりやすい時間帯と場所 |
カビの種類 | 付着菌検査(表面から採取して培養) | 目に見えるカビがどのような種類か、処理方法の検討材料 |
空気中のカビの量 | 落下菌検査・浮遊菌検査 | 店内や客室の空気の状態 |
壁の裏・床下の状態 | ファイバースコープ調査 | 内装材の裏、床下、蔵の床板の下など見えない場所の状態 |
調査で原因の見当がついたら、カビの除去と環境改善に進みます。当社のMIST工法®は、素材の性質に合わせて専用の薬剤を調整し、こすったり削ったりする作業をできるだけ減らしながらカビに働きかける施工方法です。木材や石など、素材を傷めにくい方法として、歴史的な建物にも検討していただきやすいと考えています。ただし、カビの状態や素材の傷み具合によっては、除去だけで元の見た目に戻らない場合もあり、仕上がりは現地の状況によって異なります。施工の前に、どこまでを目標にするのかを、オーナー様と一緒に確認するようにしています。
営業中の建物では、施工のタイミングも大切です。店舗やカフェであれば定休日や閉店後、宿であれば客室ごとに順番に進めるなど、営業への影響をできるだけ小さくする段取りを一緒に考えます。費用は、面積や素材、カビの広がり、必要な検査の種類など現地状況により異なるため、調査のうえでお見積りをお出ししています。また、小樽市の指定歴史的建造物などに該当する建物で、外観に関わる改修や設備の追加を伴う場合は、事前に小樽市の担当窓口へ手続きの有無を確認していただくようお願いしています。
再発を防ぐための日常の工夫としては、石壁から什器や家具を少し離して空気の通り道をつくること、壁際に段ボールや布製品を直置きしないこと、冬の朝に暖房を一気に強く入れすぎないこと、調理や食器洗いの湯気が客席側や奥の部屋に流れ込まないように換気を見直すことなどが挙げられます。温湿度をデータロガーで記録しておくと、どの季節・どの時間帯に湿度が上がるかがわかり、対策の効果も確かめやすくなります。宿の場合は、稼働の少ない客室ほど空気がこもりやすいため、定期的に扉を開けて空気を入れ替える時間をつくることをおすすめしています。
テナントとして歴史的な建物に入居している場合は、建物の所有者や管理会社との役割分担も確認しておく必要があります。壁や床下、地下など建物本体に関わる部分は所有者側、内装や什器、日常の換気や清掃はテナント側というように、責任の範囲が分かれていることが多いためです。当社では、調査結果を写真と数値でまとめた報告書をお渡ししていますので、関係者の間で状況を共有する際の資料としてもご活用いただけます。
検査の内容については、当社のシリーズ記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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まとめ|小樽のカビは「石・雪・坂」の三つの条件を読み解くことから
小樽の石造倉庫や古い商家、坂の街の住宅に出るカビは、建物の古さだけでなく、港町の湿った気候、日本海側の冬の季節風と雪、斜面や地下という立地が重なって生まれています。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、小樽の年平均湿度は72%、7月は81%と高く、降雪の深さの年合計は556センチメートル、年最深積雪は118センチメートルとされています。一年を通じて乾ききる季節が短く、冬は日照時間も短いという条件のなかで、厚い石壁や土に接した壁は湿気をため込みやすくなります。
木骨石造の倉庫では、冷えた厚い石壁に室内の湿った空気が触れて結露し、壁の下部や内装材の裏にカビが広がりやすくなります。冬は季節風と雪が風上側の外壁を濡らし続け、豪雪期は窓を開けにくいため、室内の水蒸気がこもりがちです。地下室や蔵では、空気の停滞と夏の結露、地中からの水分が重なります。坂の街の半地下や擁壁側の部屋では、土からの冷えと水分、日の当たらないすき間に残る雪が、室内の壁を湿らせます。いずれも、「どこから水分が入り、どこで冷やされ、どこへ抜けられないのか」を読み解くことが、対策の出発点になります。
カビを見つけたときに大切なのは、目に見える部分だけを拭き取って終わりにしないことです。特に歴史的な建物では、強くこすったり、素材に合わない薬剤を使ったりすると、石や木、漆喰を傷めてしまうことがあります。まずは含水率や温湿度を測り、カビの種類や広がりを確かめたうえで、素材に合った方法で除去し、再発を防ぐための使い方の工夫を組み合わせることが、建物を長く守ることにつながります。
日々の管理として取り組みやすいのは、温湿度計を置いて数値を見る習慣をつくることです。湿度が高い日が続いたら除湿機を使う、壁際の物を少し動かして空気を通す、冬の朝は暖房を段階的に上げる、雪解けの時期に建物の足元の水の流れを確かめる、といった小さな積み重ねが、石壁や木部を乾いた状態に近づけます。とくに、夏の地下や蔵では外気を入れる時間帯に気を配り、湿った空気を必要以上に取り込まないようにすることがポイントです。
それでもカビが繰り返し出る場合は、建物の構造や立地に由来する原因が隠れている可能性があります。小樽の歴史的な建物は、一棟ごとに造りも改装の履歴も違います。同じ運河沿いの倉庫でも、壁の向きや隣の建物との距離、使い方によって、カビの出方は大きく変わります。だからこそ、一般的な対策をそのまま当てはめるのではなく、その建物の状態を測って確かめることが、遠回りに見えて結果的に近道になると当社では考えています。
Q. 石壁のカビは、市販のカビ取り剤で落としても大丈夫ですか?
A. 石の種類や表面の状態によっては、薬剤が染み込んで変色したり、表面を傷めたりすることがあります。特に軟石や漆喰、古い木部は吸い込みやすい素材です。範囲が広い場合や、歴史的な建物の場合は、自己判断で強い薬剤を使う前に、素材を確認したうえでの処理をご相談ください。
Q. カビ臭さで体調が気になるのですが、どうすればよいですか?
A. カビと体調の関係は人によって異なり、一概には言えません。咳や鼻の症状、皮膚のかゆみなどが続く場合は、まず医療機関にご相談ください。そのうえで、室内のカビの状態を検査で確かめ、原因となる場所への対処を進めることをおすすめします。
運河沿いの店舗やカフェ、古い商家を活かした宿、坂の上のご自宅など、小樽の建物にはそれぞれに違った湿気の事情があります。「毎年同じ場所にカビが出る」「冬の終わりになると蔵や地下がカビ臭い」「半地下の部屋の壁が湿っている」といったお悩みがあれば、早めに状態を確かめておくことで、建物への負担を小さく抑えられる可能性があります。カビバスターズ北海道では、含水率測定や付着菌検査、落下菌検査などの各種調査から、MIST工法®による除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案までをワンストップで行っています。小樽市をはじめ、札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見など北海道全域に対応していますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
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受付時間:平日9:00〜18:00(土日祝休み)
対応エリア:札幌市(中央区・北区・東区・白石区・豊平区・南区・西区・厚別区・手稲区・清田区)をはじめ、石狩・小樽・千歳・苫小牧・旭川・函館など北海道全域。地域ごとの対応は対応エリアをご覧ください。




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