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函館 カビ・湿気の原因と対策|海霧と坂の地形、西部地区の古い木造・洋風建築の注意点

10月22日
読了時間: 26分

更新日:1 日前

こんにちは、カビバスターズ北海道です。北海道全域でカビの調査・除去を行っている当社には、道南の港町からも「夏になると古い家の一階が急にカビ臭くなる」「坂の途中に建つ店舗の半地下倉庫で、壁の下のほうだけが黒ずんでくる」「明治や大正のころの建物を借りてカフェを始めたいが、湿気とカビが心配」といったご相談が寄せられます。函館は三方を海に囲まれ、山のふもとから港へ向かって坂が続く独特の地形を持つ街です。道内では比較的温暖といわれる一方で、夏は海からの湿った空気が入りやすく、梅雨のない北海道でも「じめじめする季節」がはっきり感じられる地域でもあります。さらに西部地区を中心に、和風と洋風が組み合わさった木造建築や煉瓦の倉庫など、歴史のある建物が今も数多く使われています。こうした古い建物は魅力がある反面、現代の住宅とは湿気の出入りの仕方が大きく異なり、同じ感覚で改修するとかえってカビを招くことがあります。住まいとしてお使いの方にも、店舗や宿として活用したい方にも役立つよう、現場で実際に見てきた例を交えてお伝えします。本記事では、気象庁の平年値で確認できる数値を手がかりに、港町の霧と海風、坂の地形がつくる地下・半地下・擁壁沿いの湿気、歴史的建造物や古い木造・洋風建築の弱点、そしてレトロ建物を店舗やリノベーションで活かすときのカビ対策を順番に整理します。

この記事の結論 函館は夏の湿度が高く、坂の多い地形や西部地区の古い木造・洋風建築ならではの湿気の弱点があります。気象庁の平年値をもとに、半地下・擁壁沿い・レトロ建物の店舗活用やリノベで注意したいカビ対策を解説します。

第1章|函館の湿気の特徴|気象庁の平年値で見る「温暖で夏に湿度が高い」街

結論から言うと、この街のカビ問題を考えるうえで最初に押さえておきたいのは、「冬の結露」だけでなく「夏の高湿度」が大きな要因になっているという点です。北海道のカビ対策というと、暖房期の窓の結露や壁内結露がよく話題になりますが、道南の港町では、それに加えて夏場の空気そのものが湿っていることが、建物の中の湿気の多さにつながっています。

気象庁の平年値(1991〜2020年、函館地方気象台の観測)では、年平均気温は9.4℃、年平均の相対湿度は74%です。月別に見ると、相対湿度は6月が79%、7月が82%、8月が81%と、夏に向かって高くなっていきます。相対湿度とは、その温度の空気が含むことのできる水蒸気の量に対して、実際にどれだけ含んでいるかを割合で表したものです。言い換えれば、夏の三か月は「空気がほぼ湿りきった状態に近い日が多い」ということになります。

気温も見ておきましょう。同じ平年値で、8月の平均気温は22.1℃、日最高気温の平均は25.9℃です。カビの多くは、おおむね20℃を超えるあたりから活発になりやすく、湿度が高い状態が続くと繁殖が進みやすいことが知られています。つまり、7月から8月にかけては「カビが好む温度」と「高い湿度」が重なる時期であり、ここに建物側の弱点が加わると、短期間で目に見えるカビが広がることがあります。

降水量も夏から秋にかけて多くなります。気象庁の平年値では、年降水量は1,188.0mmで、月別では8月が156.5mm、9月が150.5mmと一年のうちで最も多い時期にあたります。雨が多い時期は外壁や基礎まわり、地面からの湿気も増えるため、建物の下のほうや北側の壁で湿気がこもりやすくなります。現場でよく目にするのが、夏の終わりから初秋にかけて「気づいたら一階の押入れや床下収納がカビ臭い」というケースです。

一方で冬は、平年値で1月の平均気温が−2.4℃と、道内の内陸部と比べると冷え込みは穏やかな部類に入ります。ただし降雪量の年合計は306cm、最深積雪は45cmと、雪がまったく少ないわけではありません。冬は暖房による室内外の温度差で結露が起きやすく、夏は外気そのものの湿気が多い。季節によって湿気の入り方が変わるのが、この地域の大きな特徴です。

項目(気象庁の平年値1991〜2020年)

数値

カビ対策上の見方

年平均の相対湿度

74%

一年を通して湿気が多めで、乾燥する季節が短い

6月・7月・8月の相対湿度

79%・82%・81%

夏は外気が湿っており、換気だけでは下がりにくい

8月の平均気温/日最高気温の平均

22.1℃/25.9℃

カビが活発になりやすい温度帯と重なる

8月・9月の降水量

156.5mm・150.5mm

外壁・基礎・地面からの湿気が増える時期

1月の平均気温

−2.4℃

冬は暖房による室内外の温度差で結露が起きる

降雪量(年合計)/最深積雪

306cm/45cm

雪解け水が擁壁・基礎まわりにたまりやすい

日照にも触れておきます。気象庁の平年値では年間の日照時間は1,744.9時間で、月別では12月が91.5時間、1月が103.1時間と冬に短くなります。日当たりの少ない季節は、北側の部屋や建物が密集した場所の外壁が乾きにくく、室内の結露と重なって湿った状態が長引くことがあります。夏は湿度、冬は日照不足と温度差という具合に、季節ごとに「乾きにくい理由」があると考えておくと対策を立てやすくなります。

このように数値で整理すると、「夏の湿度対策」と「冬の結露対策」の両方が必要な地域であることが見えてきます。次章では、この湿った空気がどこから来て、建物にどのように入り込むのかを、港町ならではの霧や海風、そして北海道共通の長い暖房期間と絡めて見ていきます。

なお、ここで挙げた数値は気象台の観測点での平年値であり、建物ごとの室内の湿度を示すものではありません。同じ地域でも、海に近い低地か、坂の上か、北向きの斜面か、周囲に建物が密集しているかによって、実際の湿気のたまり方は大きく変わります。当社が調査にうかがう際も、平年値はあくまで「地域の前提条件」として扱い、建物の中では温湿度計や含水率計で一つひとつ実測したうえで判断しています。数字の傾向を知っておくと、「なぜこの季節に症状が出るのか」を理解しやすくなり、対策の時期を決める手がかりにもなります。

第2章|海に囲まれた港町の霧・海風と、北海道の長い暖房期間が重なる湿気

結論として、港町の建物は「夏は海からの湿った空気」「冬は暖房と温度差による結露」という二つの湿気に交互にさらされています。函館山を背に、津軽海峡と湾に挟まれた市街地は、どの方向から風が吹いても海の上を通ってきた空気が入りやすい地形です。夏には海霧(地元では「ガス」と呼ばれることもあります)が街を覆う日があり、霧が出ている日は外気がほぼ飽和に近い状態になります。飽和とは、空気がそれ以上水蒸気を含めない状態のことで、少し冷えるだけで水滴になる一歩手前だと考えてください。

この湿った空気が建物に入ると、ひんやりした場所で水分を落とします。代表的なのが、床下、半地下の倉庫、北側の押入れ、石や煉瓦の壁の内側など、外気より温度が低くなりやすい部分です。夏に窓を開けて換気をしたつもりが、実は湿った外気を取り込んで床下や押入れに水分を与えていた、ということは現場でよく目にします。これを一般に「夏型結露」と呼ぶことがあります。夏型結露とは、暖かく湿った外気が冷たい部分に触れて起きる結露のことで、冬の窓の結露とは逆向きの現象です。

海風には塩分も含まれます。塩分そのものがカビの原因になるわけではありませんが、塩分は空気中の水分を引き寄せやすい性質があり、外壁や窓まわりの汚れと一緒に付着すると、表面が乾きにくくなることがあります。古い木製の窓枠や下見板の外壁で、海側の面だけ塗装の傷みや黒ずみが早いという建物は、当社の現場での傾向として珍しくありません(統計ではなく、あくまで当社の現場での傾向です)。

そして冬になると、北海道共通の条件が加わります。道内では暖房を使う期間が概ね10月から4月までと長く、半年以上にわたって室内と屋外の温度差が大きい状態が続きます。温度差が大きいほど、室内の暖かく湿った空気が冷たい窓や外壁の内側に触れたときに結露が起きやすくなります。さらに雪の多い時期は窓を開けて換気しにくく、灯油ストーブや洗濯物の室内干しから出る水蒸気が室内にたまりがちです。港町の冬は内陸の旭川などと比べれば冷え込みは穏やかですが、それでも暖房期の温度差は十分に大きく、古い建物ほど断熱が弱いために冷たい面ができやすくなります。

つまり、この地域の建物は一年を通して「どこかの季節で湿気が入る」状態にあります。夏は外から、冬は内から湿気が供給され、春と秋の短い期間にそれが乾ききらないまま次の季節を迎える。この繰り返しが、木材や壁の中に水分をため込み、カビが根を張る下地をつくっていきます。

冬の港町で見落とされやすいのが、海風による建物の冷え方です。平年値では年平均の風速は3.6m/sで、冬から春先にかけてやや強めの月が続きます。風の当たる面の外壁や窓は表面温度が下がりやすく、同じ室温でも風上側の部屋のほうが結露しやすいことがあります。当社の現場での傾向としても、海側や風の当たる角部屋の窓まわり・外壁の室内側にカビが集中する例が見られます(統計ではありません)。家具を外壁にぴったり付けて置くと、その裏側がさらに冷えて湿気がたまるため、壁から少し離して配置するだけでも状況が変わることがあります。

季節

主な湿気の入り口

起こりやすい現象

注意したい場所

初夏〜夏(6〜8月)

海霧・湿った海風・開けた窓からの外気

夏型結露、床下や押入れの湿気こもり

床下、半地下、北側押入れ、石・煉瓦壁の内側

初秋(9月)

雨の多い時期の地面・外壁からの湿気

基礎まわりの含水、カビ臭の発生

一階床、外壁下部、擁壁に面した壁

暖房期(概ね10〜4月)

室内の水蒸気(暖房・調理・室内干し)

窓・外壁内側の結露、壁内結露

窓まわり、外壁の室内側、天井の隅

豪雪期・雪解け期

窓を開けにくいこと、雪解け水

換気不足、基礎や擁壁への水の滞留

玄関土間、半地下、建物の山側

このように季節ごとの湿気の入り口を知っておくと、「夏は窓を開けっぱなしにせず除湿を優先する」「冬は計画的に換気して室内の水蒸気を逃がす」といった、季節に合わせた使い分けがしやすくなります。とくに夏の換気は、外の空気が乾いている時間帯を選ぶことが大切です。霧が出ている日や雨の日に窓を大きく開けると、かえって室内に湿気を招き入れることがあるため、除湿機やエアコンの除湿運転を組み合わせるほうが安定します。

第3章|坂の多い地形と地下・半地下・擁壁沿いの湿気|斜面に建つ建物の弱点

結論から言うと、坂の多い街で最もカビが出やすいのは、建物の「山側」と「地面より低い部分」です。山のふもとから港へ下る斜面には、基坂や二十間坂をはじめ多くの坂があり、その途中に建つ住宅や店舗の多くは、敷地の高低差を擁壁(ようへき)で支えています。擁壁とは、斜面の土が崩れないように設けるコンクリートや石積みの壁のことです。この擁壁に接して建物が建っていたり、高低差を利用して半地下の倉庫や車庫がつくられていたりする建物では、地面からの湿気が抜けにくくなります。

斜面では、雨水や雪解け水が山側から谷側へと地中を伝って流れます。建物の山側の壁や基礎は、この地中の水分に常に接している状態になりやすく、表面が乾いて見えても、内部には水分を含んでいることがあります。とくに半地下の部屋は、壁の一部または全部が土に接しているため、土の温度に近い冷たい壁になりがちです。夏に湿った空気が入り込むと、その冷たい壁の表面で結露が起き、壁の下のほうから黒カビが広がっていきます。

現場でよく目にするのが、「一階の奥の部屋だけが一年中ひんやりしていて、家具の裏にカビが出る」「半地下の倉庫に置いた段ボールや木箱がすぐにカビる」「擁壁に面した壁のクロスが、毎年同じ高さまで浮いてくる」といった症状です。これらは表面だけを拭き取っても、壁や床の内部の水分が変わらない限り、同じ場所に繰り返し出てくる傾向があります。

冬の条件もここに重なります。暖房期は概ね10月から4月までと長く、この間、山側の冷たい壁と暖められた室内との温度差が大きくなります。さらに雪の多い時期は窓を開けにくく、半地下や一階の奥の部屋は空気が動かないまま湿気がたまりやすくなります。雪解けの時期には、敷地に積もった雪がとけて擁壁の裏や基礎まわりに水がたまり、春先に壁の含水が一気に高まることもあります。夏と冬、そして雪解けと、年に何度も湿気の山が来るのが斜面の建物の特徴です。

こうした建物では、目に見えるカビだけでなく、「壁の中や床下がどのくらい湿っているか」を把握することが重要になります。当社では含水率計を使い、壁の高さごと、方角ごとに数値を測って、湿気の入り口を探っていきます。含水率とは、木材やボードなどの材料が重さに対してどれだけの水分を含んでいるかを割合で示したもので、数値が高いほどカビや腐朽が進みやすい状態だと考えられます。

斜面の街ならではの事情として、隣の建物との高低差や距離の近さも挙げられます。坂の途中では、隣家の基礎や擁壁が自宅の一階の窓の高さにあることも珍しくなく、日が当たりにくく風も抜けにくい「谷間」のような場所ができます。こうした場所に面した壁は乾きにくく、外壁の苔や室内側のカビが同時に進むことがあります。窓の外の状態も含めて観察すると、原因の見当がつきやすくなります。

部位・場所

湿気が入る主な理由

よく見られる症状

確認したいポイント

擁壁に接する壁

地中の水分が壁を伝って上がる

壁の下部のクロス浮き、黒カビ

高さ別の含水率、壁の裏の通気の有無

半地下の倉庫・車庫

土に接した冷たい壁で夏に結露

荷物や木箱のカビ、床のしみ

夏の温湿度、換気扇や給気口の有無

一階の山側の部屋

基礎まわりに雨水・雪解け水が集まる

家具裏のカビ、押入れのカビ臭

床下の湿気、基礎の換気口のふさがり

床下(斜面の谷側)

高低差で風が抜けにくい、土の湿気

床下木材の変色、畳のカビ

土台・大引の含水率、防湿対策の有無

外階段・玄関土間まわり

雪解け水や雨水が流れ込む

土間の黒ずみ、下駄箱のカビ

排水の向き、水のたまり方

斜面の建物で大切なのは、室内側の対策だけで終わらせないことです。雨水の流れを変える排水の見直し、擁壁の水抜き穴がふさがっていないかの確認、建物と擁壁の間に空気の通り道があるかどうかなど、外まわりの状態も合わせて見ることで、湿気の根本的な入り口に近づけます。擁壁や外構の工事が必要な場合は、土木・外構の専門業者と連携して進めることになりますが、当社では「カビの出方」と「含水の分布」から湿気の入り口を推定し、どこを優先して直すべきかを整理するお手伝いをしています。

Q. 半地下の倉庫は、除湿機を置いておけば十分でしょうか?

A. 除湿機は湿度を下げるうえで役立ちますが、壁そのものが地中の水分を吸っている場合、空気の湿度だけを下げても壁の中の含水は下がりにくいことがあります。まずは壁や床の含水率を測り、湿気の入り口を確認したうえで、除湿・換気の改善とカビ除去を組み合わせることをおすすめします。

第4章|西部地区の歴史的建造物・古い木造や洋風建築とカビ|現代住宅とは違う湿気の動き

結論として、歴史のある木造建築や洋風建築は「湿気を吸って、また吐き出す」ことで長持ちしてきた建物であり、その呼吸を止めてしまう改修がカビを招く大きな原因になります。函館市の資料によると、元町末広町の一帯は平成元年(1989年)4月21日に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、面積は約14.5ヘクタール、和風民家・洋風建物・和洋折衷様式の建物が混在する港町の町並みとして保存されています。同じく市の資料では、伝統的建造物は77件(令和3年度時点)とされています。これらの周辺も含めた西部地区には、木造の住宅や商家、煉瓦の倉庫など、築年数の長い建物が今も住まいや店舗として使われています。

この地域でよく見られる和洋折衷の建物は、一階が和風、二階が洋風といった組み合わせで、外壁には細長い板を横に重ねて張る下見板(したみいた)がよく使われています。下見板張りの外壁は、板と板の重なりから雨水が下へ流れ、板の裏側にも空気が通るため、濡れても乾きやすい構造です。ところが、外壁の上から別の材料をかぶせたり、内側に気密性の高いシートや断熱材を後から入れたりすると、この「乾く仕組み」が弱まり、壁の中に湿気が閉じ込められることがあります。

もう一つ注意したいのが、石や煉瓦の壁です。煉瓦や石は熱をためやすく、温まりにくく冷えにくい性質があります。夏の湿った空気が冷たい煉瓦壁の内側に触れると結露が起き、冬は室内の暖かい空気が冷たい壁に触れて結露します。表面が塗装やクロスで覆われていると、にじみ出た水分が逃げ場を失い、仕上げ材の裏でカビが広がることがあります。煉瓦倉庫を改装した店舗などで「壁の塗装がふくれてくる」「壁際のにおいがこもる」といった相談は、当社の現場での傾向としても見られます(統計ではありません)。

さらに、古い建物は床下が高く、以前は床下に風が通るつくりになっていたものが多くあります。ところが、長い年月の間に床下の換気口がふさがれたり、周囲の地面が高くなったり、隣に建物が建って風が抜けなくなったりすると、床下の湿気が逃げにくくなります。北海道の暖房期は概ね10月から4月と長いため、冬の間に暖房で室内を暖めると床面と床下の温度差が大きくなり、床下の冷えた木材に湿気が集まりやすくなることもあります。

建物の特徴

もともとの湿気の逃がし方

カビを招きやすい改修・使い方

当社が確認するポイント

下見板張りの木造外壁

板の重なりと裏側の通気で乾く

外壁の上からの被覆、通気層のない内断熱

板の裏側の含水、壁内の通気

和洋折衷の住宅・商家

建具のすき間や床下の通風

気密化しすぎた改修、床下換気口の閉塞

床下の湿気、土台・柱脚の状態

煉瓦・石造の倉庫

厚い壁が湿気を吸って放出する

壁面を塗膜やクロスで密閉、除湿不足

壁表面の温度、塗膜のふくれ、におい

土蔵・蔵造りの建物

厚い土壁による調湿

外側への防水塗装、内部の空調不足

壁の含水、収納物のカビ

古い建物では、建具や床の「すき間」も湿気の逃げ道として働いてきました。すき間風は寒さの原因として嫌われがちですが、一方で室内の湿気を少しずつ外へ逃がす役割も担っていました。改修でサッシを交換したり、すき間をふさいだりして気密性が高まると、暖かさが増す反面、それまで自然に抜けていた水蒸気が室内に残るようになります。とくに冬、灯油ストーブや加湿器を使い、洗濯物を室内に干す暮らし方をしていると、窓や外壁の内側で結露が増え、押入れや家具の裏にカビが出やすくなります。気密を高めた分だけ換気の仕組みを整えるという考え方が、古い建物では欠かせません。

歴史的建造物の場合、外観の変更をともなう工事には手続きが必要になることがあります。保存地区内や景観上重要な建物で外まわりに手を入れる場合は、函館市の担当部署(都市建設部まちづくり景観課)に事前に相談しておくと安心です。市のサイトでは、歴史的建造物に対する助成制度についての案内も掲載されていますので、条件は最新の情報を確認してください。当社のカビ除去は主に室内側や床下で行うものですが、建物の価値を損なわないよう、素材を傷めにくい方法を選ぶことが大切だと考えています。MIST工法®は、素材の性質に合わせて専用の薬剤を調整し、こすったり削ったりする作業を極力抑えることを目指した工法です。

第5章|古民家・レトロ建物を店舗やカフェに活用するときのカビ対策

結論から言うと、古い建物を店舗として活用する場合は、住まいとして使うとき以上に「湿気の発生量」と「営業していない時間の空気の動き」に目を向ける必要があります。西部地区や元町周辺では、古い商家や洋館、倉庫を改装したカフェ、雑貨店、ギャラリー、宿泊施設などが見られます。レトロな雰囲気は大きな魅力ですが、店舗は住宅と比べて人の出入りが多く、厨房の湯気、食器洗浄、観葉植物、加湿器など、室内で水蒸気が生まれる要因が重なりやすい環境です。

とくに飲食店では、調理や洗い物から出る湯気が天井裏や壁際にたまりやすく、古い建物の冷たい外壁や梁に触れて結露することがあります。天井の隅にぽつぽつと黒い点が出てきた、梁の上にうっすら白い綿のようなものが見える、といった症状は、湯気が集まる場所で起きやすい傾向があります。白い綿のように見えるものはカビの菌糸であることもあり、菌糸とはカビが根や枝のように伸ばす細い糸状の部分のことです。見た目で判断がつかない場合は、付着菌検査(有料オプション)などで確認すると安心です。

もう一つの落とし穴が、定休日や冬季休業のあいだです。観光客の多い季節に営業し、冬は休業や短縮営業にする店舗では、暖房や換気を止めている期間に湿気がこもり、再開したときに客席の椅子や壁、倉庫の在庫にカビが広がっていることがあります。北海道では暖房期が概ね10月から4月と長く、雪の多い時期は窓を開けて空気を入れ替えることも難しくなります。休業中でも最低限の換気と除湿を続けること、温湿度を記録できる機器を置いておくことが、再開時のトラブルを減らすことにつながります。

夏の営業中は、入口の扉を開け放すことで湿った外気が入りやすくなります。気象庁の平年値でも7月・8月の相対湿度は80%を超えており、霧の出る日にはさらに湿った空気が流れ込みます。冷房で客席を冷やしていると、冷えた壁や家具の裏、冷蔵ショーケースの周辺で結露が起き、カビの原因になることがあります。扉の開け方、冷房の設定温度、除湿運転の使い方などを見直すだけでも、湿気のたまり方が変わることがあります。

また、お客様が直接触れる椅子やソファ、カウンター、木製の什器にカビが出ると、衛生面だけでなく店舗の印象にも影響します。カビの健康への影響は体質や状況によって異なり、一概には言えませんが、においや体調の変化が気になる場合は医療機関に相談していただくようおすすめしています。店舗としては、見た目や臭いで気づく前に定期的に状態を確認しておくことが、安心して営業を続けるための備えになります。

店舗の用途

主な湿気の発生源

カビが出やすい場所

日常でできる対策

カフェ・飲食店

調理の湯気、食器洗浄、来客の呼気

天井の隅、梁、厨房の壁、換気扇まわり

換気扇の常時運転、湯気の出る作業後の換気

雑貨店・古道具店

夏の湿った外気、商品の吸湿

木製棚の裏、布製品、段ボール在庫

除湿機の使用、床から離した保管

ギャラリー・展示スペース

来場者の呼気、冷房による結露

額装の裏、壁際、展示台の下

温湿度の記録、壁から少し離した展示

宿泊施設・ゲストハウス

入浴・シャワー、布団やリネン

浴室まわり、押入れ、使っていない客室

空室の定期換気、寝具の乾燥

季節営業・冬季休業の店舗

換気停止中の湿気こもり

客席の椅子、壁、倉庫の在庫

休業中の最低限の換気と除湿、再開前の点検

物件を借りて出店する場合は、契約前や内装工事の前に建物の状態を確認しておくことも大切です。前の入居者が退去してから空き期間が長かった建物では、換気が止まっていた間に床下や壁の中で湿気がたまり、表面にはまだ出ていないカビが潜んでいることがあります。内見のときには、カビ臭さ、壁や天井のしみ、床のたわみ、押入れや倉庫の奥の状態などを確認し、気になる点があれば専門業者の調査を検討すると安心です。改装後にカビが見つかった場合、誰がどこまで対応するのかをめぐって話がこじれることもあるため、事前の状態を記録しておくことをおすすめします。

当社では、店舗の営業に支障が出にくいよう、定休日や営業時間外の施工についてもご相談を承っています。施工範囲や工程は現地の状況によって異なりますので、まずは建物の状態を拝見したうえで、営業との両立を考えた計画をご提案しています。

第6章|リノベーション前後の調査と施工の順番|古い建物のカビを繰り返さないために

結論として、古い建物のリノベーションでカビを繰り返さないためには、「内装を仕上げる前に調べる」「カビの処理を済ませてから仕上げる」「仕上げたあとに湿気の状態を確認する」という順番を守ることが重要です。古い建物では、解体してみて初めて壁の中や床下のカビ、木材の傷みが見つかることがよくあります。新しいクロスや床材を張ってから問題に気づくと、せっかくの内装をはがしてやり直すことになりかねません。

最初の段階では、建物のどこが湿っているのかを把握します。含水率計で壁や床の水分を測り、必要に応じて壁の小さな穴や点検口からファイバースコープで内部をのぞきます。ファイバースコープとは、細いケーブルの先にカメラが付いた機器で、壁を大きく壊さずに内部の様子を確認できる道具です。そのうえで、カビの種類や広がりを知りたい場合は、付着菌検査や落下菌検査を組み合わせます。調査の結果をもとに、どこまで解体するか、どの部材を残してどれを交換するかを設計者や工務店と相談していくと、無駄の少ない計画になります。

次の段階が、カビの除去と環境改善のご提案です。古い木材や漆喰、煉瓦などは、強い薬剤でこすったり削ったりすると表面を傷め、建物の風合いを損なうおそれがあります。当社のMIST工法®は、素材の状態に合わせて薬剤を調整し、素材を傷めにくい方法でカビの除去を行うことを目指した工法です。ただし、効果の出方は建物の状態や湿気の条件によって異なるため、施工前に状況をご説明し、カビが生えにくい環境づくりの方法も含めてご提案しています。

そして見落とされがちなのが、改修後の湿気の逃がし方です。断熱や気密を高める改修は、冬の暖かさや省エネの面で大きなメリットがあります。一方で、北海道のように暖房期が概ね10月から4月と長く、豪雪期に窓を開けにくい地域では、計画換気がきちんと働かないと室内の水蒸気が行き場を失い、壁の中で結露が起きることがあります。古い建物に現代の断熱を加える場合は、防湿層と通気層の考え方を設計段階から整理し、換気設備の能力も確認しておくことが大切です。

工程

主な作業

目的

ここを省くと起きやすいこと

1.事前調査

含水率測定、ファイバースコープ調査、菌検査

湿気の入り口とカビの広がりを把握する

解体後に想定外のカビや腐朽が見つかる

2.解体・部材の判断

傷んだ部材の交換、残す部材の選別

建物の価値を残しながら原因を取り除く

カビの残った部材をそのまま覆ってしまう

3.カビ除去・環境改善のご提案

素材に合わせた除去と環境改善のご提案

仕上げ前にカビの根を処理する

仕上げ材の裏からカビが再発する

4.断熱・換気の設計確認

防湿層・通気層・換気量の確認

改修後に湿気が逃げる道をつくる

壁内結露による新たなカビ

5.仕上げ後の確認

温湿度の記録、必要に応じた菌検査

夏と冬の状態を数値で確かめる

季節が変わってから症状に気づく

とくに港町の建物では、仕上げ後の確認を「夏」と「冬」の両方で行うことをおすすめしています。夏は湿った外気による夏型結露、冬は暖房による結露と、季節によって弱点が変わるためです。一度の確認で問題がなくても、季節が変わると別の場所に症状が出ることがあります。

また、改修の時期にも気を配りたいところです。解体や下地の工事を夏に行うと、湿った外気の中で木材や下地材が湿気を吸い、そのまま内装で覆ってしまうことがあります。反対に冬の工事では、暖房で急に乾かそうとすると木材が割れたり、室内の水蒸気が冷たい外壁側で結露したりすることがあります。どの季節に工事をする場合でも、下地の含水率を確認してから仕上げに進むこと、工事中も換気と除湿を続けることが、仕上げ後のカビを防ぐうえでの基本です。当社では工務店や設計者の方からのご相談も承っており、工程の中でどのタイミングに調査やカビ処理を入れるとよいかを一緒に検討しています。

関連記事:ファイバースコープ調査とは?壁を壊さず壁内・床下のカビを調べる方法

まとめ|港町の湿気と坂の地形、古い建物の特性を知ってカビに備える

ここまで、道南の港町で建物にカビが出やすい理由を、気候・地形・建物の三つの面から整理してきました。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、この地域の年平均の相対湿度は74%、7月は82%、8月は81%と、夏に湿度が高くなる傾向がはっきりしています。年平均気温は9.4℃と道内では比較的温暖な一方、冬は暖房期が概ね10月から4月と長く、豪雪期には窓を開けにくくなります。夏は外から、冬は内から湿気が入り、春と秋の短い期間に乾ききらないまま次の季節を迎える。この一年の流れを知っておくことが、対策の出発点になります。

地形の面では、坂の途中に建つ建物の山側の壁、擁壁に接する壁、半地下の倉庫や車庫、一階の奥の部屋が、湿気のたまりやすい場所でした。雨水や雪解け水が地中を伝って流れ、土に接した冷たい壁で結露が起きる。こうした場所では、表面を拭くだけでは同じ症状を繰り返しやすいため、含水率を測って湿気の入り口を探ることが大切です。

建物の面では、西部地区に多い下見板張りの木造、和洋折衷の住宅や商家、煉瓦や石の倉庫など、歴史のある建物は「湿気を吸って吐き出す」ことで長持ちしてきたという点を押さえておきたいところです。外壁を覆ったり、内側を密閉したりする改修は、その呼吸を妨げてカビを招くことがあります。店舗として活用する場合は、厨房の湯気、夏の開け放した扉、休業中の換気停止など、住宅とは違う湿気の要因にも目を向ける必要があります。

リノベーションを考えている方は、内装を仕上げる前に調査を行い、カビの処理を済ませてから仕上げ、改修後は夏と冬の両方で湿気の状態を確かめる、という順番を意識してください。歴史的建造物の外まわりに手を入れる場合は、市の担当部署への事前相談も忘れないようにしましょう。

Q. 古い建物のカビは、すべての部材を交換しないと解決しないのでしょうか?

A. 一概には言えません。カビの広がりや木材の傷み具合によって、残せる部材と交換が必要な部材は変わります。調査で状態を確認し、残せる部材はカビの除去を行ったうえで使い続けるという選択肢もあります。どこまで手を入れるかは、現地の状況を見たうえでご相談させてください。

Q. 夏のカビ臭さは、秋になれば自然に消えますか?

A. 湿度が下がる季節になると臭いが弱まることはありますが、カビそのものがなくなったわけではない場合が多く、翌年の夏に同じ場所で症状が出ることがあります。臭いが気になった時期と場所を記録しておき、早めに状態を確認することをおすすめします。

日常の備えとしては、夏は霧や雨の日に窓を開け放さず除湿を優先すること、半地下や一階の奥の部屋に温湿度計を置いて数値を見る習慣をつけること、冬は暖房期の長さを前提に計画換気を止めないこと、そして雪解けの時期に擁壁や基礎まわりの水の流れを確認することが挙げられます。どれも小さな工夫ですが、湿気の山が来る時期を知ったうえで続けることで、カビが根を張る前に気づきやすくなります。

また、症状に気づいたときは、写真を撮って日付と場所、その日の天気を記録しておくと、調査の際に原因をたどる大きな手がかりになります。夏の霧の日に臭いが強まる、雪解けの時期に壁のしみが広がるなど、季節や天候との関係が見えてくることがあるためです。

カビバスターズ北海道では、含水率測定・付着菌検査・落下菌検査・浮遊菌検査・ファイバースコープ調査などの各種調査から、MIST工法®による素材を傷めにくいカビの除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案までをワンストップで承っています。歴史のある建物や店舗、坂の途中に建つ住宅など、それぞれの建物の事情に合わせて、調査結果をもとにした施工計画をご提案します。店舗の営業日程や、歴史的建造物ならではの配慮事項についても、事前に丁寧にうかがったうえで工程を組み立てます。施工の内容や範囲、費用は現地の状況によって異なりますので、まずは建物の状態を拝見するところから始めさせてください。函館をはじめ、札幌・旭川・帯広・釧路・北見など北海道全域に対応しております。港町の湿気や古い建物のカビでお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。※菌検査は施工前に行う有料オプションです。


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