図書館・公文書・資料室のカビ対策|湿度65%を超えない書庫管理と札幌の冬
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。2026年の秋、札幌では雪虫の話題が聞こえ始め、図書館や学校図書室、区役所の文書庫、企業の書類倉庫などでは、冬を前に書庫の点検を始める時期になりました。当社には毎年この季節から春先にかけて、「地下書庫の古い簿冊に白い粉のようなものが付いている」「郷土資料の箱を開けたらカビ臭がした」「閉架書庫の最下段だけ本の背がまだらになっている」といったご相談が寄せられます。紙の資料は一度カビが広がると元の状態に戻すことが難しく、公文書や郷土資料のように替えのきかないものほど、被害の重さは計り知れません。一方で、資料保存の世界ではすでに分かりやすい目安が示されています。国立国会図書館は、書庫の環境として「人が作業できる温度」と「湿度65%以下」を目安とし、恒常的に65%を超えるとカビが発生する確率が高まるとしています。本記事では、この国立国会図書館の目安を軸に、暖房で乾くはずの札幌の冬になぜ書庫でカビが出るのか、夏の高湿や雪解け期の地下漏水をどう乗り切るか、そしてカビが出た資料の初期対応と、書架・部屋側の除去を専門業者に任せるべき理由を、施設管理の実務目線で解説します。
この記事の結論 国立国会図書館の目安「湿度65%以下」を軸に、札幌の図書館・公文書庫・資料室のカビ対策を解説。冬の地下書庫や外壁側の結露、雪解け期の漏水、カビが出た資料の初期対応、書架・部屋側の除去の考え方まで紹介します。
第1章|国立国会図書館が示す書庫の目安|「湿度65%以下」と「急変させない」が基本
書庫のカビ対策を考えるとき、最初に押さえておきたいのが国立国会図書館の示す目安です。国立国会図書館では、書庫の温度は「人が作業できる温度」、湿度は「65%以下」をひとつの目安としています。そして、湿度が恒常的に65%を超える環境ではカビが発生する確率が高まるとしています。ここでいう湿度とは相対湿度のことで、空気がその温度で含むことのできる水蒸気の量に対して、実際にどれだけ含んでいるかを割合で示した値です。つまり同じ水蒸気量でも、温度が下がれば相対湿度は上がる、という性質があります。
注目していただきたいのは、目安が「低ければ低いほどよい」という話ではない点です。国立国会図書館は、温湿度を急変させないことも重視しています。紙は周囲の湿気を吸ったり吐いたりする素材で、急に乾燥させると反りや波打ち、綴じ部分の割れにつながることがあります。カビが怖いからといって、閉め切った書庫で大型の除湿機を最大運転にしたり、暖房を急に強くしたりするのは、資料にとって別の負担になりかねません。「65%を超えない状態を、なるべく安定して保つ」ことが基本の考え方です。
もうひとつ実務的な目安として、書架の最下段と床の間を空けることが挙げられています。床面は壁際や外気に近い部分と同様に温度が下がりやすく、湿気もたまりやすい場所です。床に直接段ボール箱を置いたり、最下段いっぱいに資料を詰め込んだりすると、空気が動かない層ができ、そこだけ湿度が高い状態が続きます。現場でよく目にするのが、書庫の中央付近はきれいなのに、最下段の箱の底面や床に接した簿冊の裏だけにカビが出ているケースです。
そして、これらの目安を守れているかどうかを確かめる道具が、データロガーです。データロガーとは、温度と湿度を一定の間隔で自動的に記録し続ける小型の計測器のことです。壁に掛けた温湿度計を担当者が見に行くだけでは、夜間や休館日、職員が不在の時間帯の変化はわかりません。国立国会図書館がデータロガーによる監視を挙げているのは、カビの原因になる高湿は「人がいない時間」に起きていることが多いからです。
目安の項目 | 国立国会図書館の考え方 | 現場での具体的な置き換え |
温度 | 人が作業できる温度 | 極端に冷やさず、人が入って作業できる範囲を保つ |
湿度 | 65%以下が目安、恒常的に超えるとカビの確率が高まる | 「一時的に超えた」より「超えた状態が続く」ことを警戒する |
変化の速さ | 温湿度を急変させない | 除湿機・暖房の急な強運転を避け、段階的に調整する |
書架の置き方 | 最下段と床の間を空ける | 床置きの箱をなくし、最下段は空けるか通気を確保する |
監視の方法 | データロガーで監視する | 夜間・休館日も含めて記録し、傾向で判断する |
この表の中で、施設管理の担当者の方に特に意識していただきたいのが「恒常的に」という言葉です。雨の日に一時的に湿度が上がること自体は避けにくいものです。問題になるのは、特定の部屋や特定の棚で、高い湿度が何日も、あるいは季節を通して続いている状態です。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、カビのご相談を受けた書庫では、担当者の方が「湿度計は時々見ていた」という一方で、記録が残っていないことが少なくありません。記録がなければ、どの時期にどの場所で湿度が上がっていたのかを後から検証できず、対策の優先順位も決めにくくなります。
国立国会図書館の目安は、専門的な設備がない小さな資料室や学校図書室でも取り組める内容になっています。まずは「湿度65%を恒常的に超えない」「急変させない」「床と最下段を空ける」「記録をとる」の4点を、自施設の書庫に当てはめて点検してみることから始めてください。
なお、書庫がひとつではない施設では、部屋ごとに条件が大きく異なります。本館の閉架書庫、地下の文書庫、別棟の資料倉庫、事務室の奥の書類棚など、それぞれ建物の中での位置も、空調の有無も、人の出入りの頻度も違います。「館内の湿度は問題ない」と一括りにせず、資料が置かれている場所ごとに目安と照らし合わせることが、カビを未然に防ぐ第一歩になります。
第2章|札幌の冬は乾くのになぜカビる?地下書庫・外壁側・暖房停止の夜間と休館日
札幌の冬は、室内が乾燥しやすい季節として知られています。暖房期間が概ね10月から4月までと長く、暖房で温められた室内では相対湿度が下がりやすいため、「冬の書庫はカビの心配がない」と考えている担当者の方も多いのではないでしょうか。気象庁の平年値では、札幌管区気象台の観測で初霜が10月25日、初雪が10月28日、根雪の始まりが12月6日とされています。この時期から春まで、札幌の建物は長い暖房シーズンに入ります。ところが当社の現場では、冬から春先にかけて書庫のカビに気づくケースが珍しくありません。その背景にあるのが、室内外の大きな温度差と、暖房が止まる時間帯の存在です。
まず、地下書庫です。地下の部屋は周囲を土に囲まれており、外壁や床のコンクリートが冷えやすい一方、上階の暖房で温められた空気が階段や通路を通って流れ込むことがあります。暖かく湿気を含んだ空気が冷たい壁や床に触れると、その表面で結露が起きます。結露とは、空気中の水蒸気が冷たい面で冷やされて水滴に変わる現象のことです。部屋全体の湿度計が低めの値を示していても、壁際や床に近い棚の奥では局所的に湿度が高くなっている、ということが起こります。
次に、外壁側の書架です。北向きの外壁に沿って書架を並べている図書館や資料室は多いと思いますが、豪雪期の外壁は強く冷やされ、壁に接した書架の背面や、壁との隙間に押し込まれた資料が冷たい面の影響を受けます。窓を開けにくい豪雪期は換気の機会も減るため、壁と書架の間の空気はほとんど動きません。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、外壁側の書架では、背板や壁に接した資料の側面から先にカビが出ることが多く見られます。
そして見落とされがちなのが、暖房が止まる夜間と休館日です。図書館や区役所、学校では、職員がいない時間帯に暖房を止めたり、設定を下げたりする運用が一般的です。日中に温められた書庫の空気には、利用者や職員が持ち込んだ水蒸気も含まれています。夜間に暖房が止まると室温が下がり、同じ水蒸気量でも相対湿度は上がります。さらに冷えた壁や窓では結露が生じます。年末年始の長い閉館期間や、学校の冬休み中の図書室は、まさにこの状態が数日から数週間続く場所です。
札幌の冬の書庫で起きやすい場面 | 何が起きているか | 点検のポイント |
地下書庫 | 上階の暖かい空気が冷たい壁・床に触れて結露する | 壁際と床付近の湿度、壁面の濡れ跡・しみ |
外壁側の書架 | 豪雪期の冷えた外壁に接した資料が湿気を帯びる | 書架の背面と壁の隙間、資料の側面 |
夜間の暖房停止 | 室温が下がって相対湿度が上がり、冷たい面で結露する | データロガーで夜間の湿度推移を確認 |
休館日・長期休暇 | 暖房停止と換気不足が数日〜数週間続く | 休み明けの窓まわり・最下段・床置き箱 |
出入口付近 | 来館者の雪や濡れた衣類から水分が持ち込まれる | カウンター裏・返却資料の一時置き場 |
表の最後に挙げた出入口付近も、札幌の冬ならではの注意点です。雪の日に返却された本は、バッグの中で湿気を帯びていることがあり、濡れた傘やコートから落ちた雪がカウンター裏で解けることもあります。返却資料をそのまま書庫へ戻さず、ページの間に湿りがないかを確かめてから配架する、という小さな習慣がカビの持ち込みを防ぎます。
中央区や北区の古い公共施設では、書庫がもともと倉庫や機械室として計画された部屋を転用しているケースもあり、断熱や換気が書庫向けになっていないことがあります。また、南区や手稲区など山沿いの施設では、積雪量が多く外壁まわりの冷え込みも強くなりやすい傾向があります。地域や建物によって条件は大きく異なるため、「冬は乾くから大丈夫」と決めつけず、場所ごとの記録で確かめることが大切です。
役所の文書庫や企業の書類保管室でも、事情は同じです。執務室は日中暖かく保たれていても、奥の書庫は暖房の範囲外になっていることが多く、廊下との温度差が大きくなりがちです。人の出入りが少ない部屋ほど、異変に気づくまでに時間がかかります。
対策としては、夜間や休館日に暖房を完全に止めるのではなく、書庫だけは低めの設定で運転を続ける、書架を外壁から離して空気の通り道をつくる、地下書庫への暖かい空気の流入を扉で抑える、といった方法が考えられます。ただし、どの方法が合うかは建物の構造や空調設備によって異なります。まずはデータロガーの記録で、自施設の書庫の「夜」と「休み明け」に何が起きているのかを確認してください。
第3章|夏の高湿と雪解け期の地下漏水|札幌の書庫で湿度65%を超えやすい季節
冬の結露と並んで、札幌の書庫で湿度65%を超えやすいのが夏と雪解け期です。北海道は本州に比べて夏が過ごしやすいといわれますが、札幌でも梅雨明けの時期から晩夏にかけては蒸し暑い日が続くことがあります。外の空気が湿っている時期に窓を開けて換気をすると、かえって書庫に湿気を招き入れることになります。「換気をすればカビは防げる」というのは、外の空気が室内より乾いている場合の話です。夏の書庫では、窓を開けるより閉めて除湿する方が適していることも少なくありません。
特に注意したいのが、冷房設備のない書庫や資料室です。札幌では、これまで冷房を前提としない建物が多く建てられてきました。札幌市の資料によると、市立学校では令和9年(2027年)夏までに、幼稚園・小学校・中学校・中等教育学校・義務教育学校・高校・特別支援学校の普通教室等でエアコンの使用開始を目標に、PFI方式による冷房設備の整備が進められています。PFI方式とは、民間の資金やノウハウを活用して公共施設の整備や運営を行う手法のことです。一方で、学校図書室や資料保管室がどの時期にどのような空調環境になるかは、学校ごとの状況を確認する必要があります。冷房のない部屋では、夏場の除湿をどう確保するかが書庫管理の課題になります。
次に、雪解け期の地下漏水です。札幌では根雪が解ける春先、建物の周囲に大量の雪解け水が生まれます。屋根から落とした雪や、駐車場から寄せた雪山が建物のすぐ脇で解けると、地下の外壁や床の打ち継ぎ部分、配管の貫通部などから水がしみ込むことがあります。打ち継ぎとは、コンクリートを何回かに分けて打設したときにできる継ぎ目のことで、年数がたつと水の通り道になりやすい部分です。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、地下書庫のカビ相談は、雪解けから初夏にかけての時期に、壁際の床の濡れや、最下段の箱の底のしみをきっかけに寄せられることが多くあります。
やっかいなのは、雪解け期の漏水は量が少なく、目で見て「水が出ている」と気づきにくい点です。床の隅がうっすら湿っている、壁の下部に白い粉のようなものが浮いている、書庫に入るとかすかにカビ臭がする、といった小さな変化が最初のサインになります。白い粉はカビの場合もあれば、コンクリートの成分が水と一緒に表面に出てきたものの場合もあり、見た目だけでは判断できません。いずれにしても、水がしみ込んでいるという点では、書庫にとって見過ごせない兆候です。
季節 | 書庫で起きやすいこと | 主な対策の方向 |
冬(暖房期) | 冷えた壁・床・窓での結露、夜間・休館日の湿度上昇 | 暖房の完全停止を避ける、外壁から書架を離す |
雪解け期(春) | 地下外壁・床の継ぎ目からの漏水、床付近の高湿 | 建物脇の雪山を減らす、床・壁下部の点検を増やす |
梅雨明け〜晩夏 | 外気の湿気の流入、冷房のない部屋での高湿の継続 | 湿った外気での換気を控え、除湿で安定させる |
秋(暖房前) | 暖房も冷房も使わない時期に湿気がこもる | データロガーで傾向を確認し、冬前に点検を済ませる |
雪解け期の対策で意外と効果が見込めるのが、冬の間の除雪の仕方を見直すことです。屋根から落ちた雪や、駐車場から寄せた雪を地下書庫の外壁の真上に積み上げていると、春にその雪山がゆっくり解けて、長い期間にわたって外壁のまわりを濡らし続けます。施設の除雪を委託している場合は、書庫の位置を業者と共有し、その外側にはなるべく雪を寄せないよう依頼しておくと安心です。書庫の担当者と建物管理の担当者が別々の部署に分かれている施設ほど、こうした情報の共有が抜けやすいため注意が必要です。
このように、札幌の書庫は一年を通して「湿度65%を超えやすい場面」が季節ごとに入れ替わります。冬は冷たい面での結露、春は地下からの水、夏は外気の湿気と、原因が変わるため、対策も季節ごとに切り替える必要があります。白石区や東区などの平地の施設でも、地下書庫や半地下の文書庫を持つ建物では雪解け期の点検が欠かせません。
対策の第一歩は、ここでもデータロガーの記録です。一年分の記録がそろうと、「自施設の書庫はどの季節に、どの場所で湿度が上がるのか」がはっきりします。そのうえで、雪解け期は建物のすぐ脇に雪を積み上げない、地下書庫の床置き資料を先に上段へ移しておく、夏は除湿機を段階的に使う、といった季節ごとの運用をあらかじめ決めておくと、担当者が替わっても対応が途切れにくくなります。
第4章|カビが出た資料の初期対応|隔離・乾燥・専門家相談と「塩素系をかけない」
書庫で資料のカビを見つけたとき、最初の数日の対応がその後の被害の広がりを大きく左右します。インターネットで「書類 カビ 取り方」と検索すると、さまざまな方法が紹介されていますが、公文書や郷土資料、古い図書など替えのきかない資料の場合は、家庭の掃除と同じ感覚で手を加えないことが重要です。ここでは、専門家に相談するまでの間に施設側で行っていただきたい初期対応を整理します。
第一に、隔離です。カビが見つかった資料は、周囲の資料から離して別の場所に移します。カビは胞子と呼ばれる非常に小さな粒を飛ばして広がるため、同じ棚に置いたままにすると、隣の資料へ移るおそれがあります。移動するときは、資料を静かに持ち上げ、ほこりを払ったり息を吹きかけたりしないようにしてください。作業する方はマスクと手袋を着用し、作業後は手洗いをしましょう。体調に不安がある方や、咳・目のかゆみなどの症状が出た方は、作業を控えて医療機関にご相談ください。
第二に、乾燥です。資料が湿っている場合は、風通しのよい場所で、急激にではなくゆっくりと乾かします。ドライヤーの熱風を当てたり、暖房器具の前に置いたりすると、紙の変形や劣化につながることがあります。第1章で触れたように、国立国会図書館も温湿度を急変させないことを重視しています。濡れた資料が大量にある場合や、ページが貼り付いている場合は、無理にはがさず、そのままの状態で専門家に相談するのが安全です。
第三に、専門家への相談です。資料そのものの処置は、資料保存や修復を専門とする機関・技術者の領域です。都道府県の図書館や文書館、大学の関係部署などに相談窓口がある場合もありますので、まずは所属する組織の上位部署や関係機関に問い合わせてみてください。当社のようなカビ除去業者が担うのは、主に書架や壁・床・天井といった部屋側の対策であり、貴重な資料そのものの修復とは役割が異なります。
そして、特に避けていただきたいのが、家庭用の塩素系カビ取り剤を資料にかけることです。塩素系の薬剤は、浴室のタイルなど硬い素材のカビには使われますが、紙や布、革などの資料に使うと、漂白による変色や、繊維の傷み、インクのにじみを招くおそれがあります。見た目のカビが薄くなったように見えても、資料としての価値を大きく損なってしまうことがあります。また、塩素系の薬剤は酸性タイプの洗剤などと混ざると有毒なガスが発生する危険があり、換気のしにくい書庫での使用は安全面からもおすすめできません。
初期対応 | 施設側で行うこと | 避けたいこと |
隔離 | カビのある資料を別の場所へ静かに移す | その場でほこりを払う、同じ棚に戻す |
乾燥 | 風通しのよい場所でゆっくり乾かす | ドライヤーの熱風、暖房器具の前での急乾燥 |
記録 | 発見場所・棚番号・資料名・状態を写真とともに残す | 記録を残さずに処分・移動してしまう |
相談 | 資料保存の専門家・関係機関に相談する | 自己流の薬剤処理で資料に手を加える |
薬剤 | 資料への薬剤使用は専門家の判断に任せる | 家庭用の塩素系カビ取り剤を資料にかける |
表の中で見落とされがちなのが「記録」です。どの書架の何段目で、どの資料にカビが見つかったのかを写真とともに残しておくと、原因となった場所の特定や、後の部屋側の対策に大いに役立ちます。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、カビが出た資料の位置を並べてみると、壁際・最下段・空調の吹き出しから遠い棚などに偏っていることが多く、そこから部屋側の原因が見えてきます。
もうひとつ、初期対応でよく迷われるのが「周りの資料も確認すべきか」という点です。カビが目に見えている資料の周囲には、まだ目立たないものの胞子が付いている資料があるかもしれません。同じ棚の前後の資料、同じ箱に入っていた資料、同じ時期に同じ場所へ置かれていた資料は、あわせて状態を確認しておくと安心です。確認の際は一冊ずつ静かに取り出し、カビ臭や白い斑点、ページの波打ちがないかを見ていきます。範囲が広い場合は、無理に全部を自分たちで調べようとせず、専門家と相談しながら進めてください。
カビが出た資料を「処分するか、残すか」の判断も、担当者一人で抱え込まないことが大切です。公文書であれば保存期間や管理の規程があり、郷土資料であれば地域にとってかけがえのない記録です。隔離と記録を済ませたうえで、組織として判断できる体制をつくっておくと、慌てずに対応できます。
第5章|書架・部屋側のカビ除去は専門業者へ|発注担当者が確認したいポイント
資料の隔離と相談を進める一方で、カビが出た部屋そのものの対策も必要です。資料だけをきれいにしても、書架の棚板や背板、壁や床、天井、空調のダクトまわりにカビが残っていれば、資料を戻した後に再び同じ場所でカビが出るおそれがあります。書架や部屋側のカビ除去は、資料の近くで薬剤や機材を扱う作業になるため、施設の職員が自力で行うより、専門業者に任せることをおすすめします。
理由のひとつは、作業中の胞子の飛散です。書架の裏や壁面のカビをブラシでこすったり、掃除機で吸い取ったりすると、胞子が舞い上がって書庫全体に広がることがあります。専門業者は、作業範囲を養生シートで区切ったり、空気の流れを管理したりしながら作業を進めます。養生とは、作業しない場所や物をシートなどで覆って保護することです。もうひとつの理由は、薬剤の選び方です。書庫には紙の資料が大量にあるため、においや成分が資料に残りにくい方法を選ぶ必要があります。
当社では、MIST工法®によるカビ除去と、カビが生えにくい環境づくりのご提案を行っています。MIST工法®は、素材の状態に合わせて薬剤を調整し、こすったり削ったりする作業をできるだけ抑えながらカビに働きかける施工方法で、木製の書架や古い内装材など、素材を傷めにくい施工として採用いただくことがあります。ただし、カビの状態や建物の条件によって結果は異なりますので、施工前の調査と、施工後の環境づくりを組み合わせて進めることを大切にしています。
公共施設の場合、発注担当者の方にとっては、どの範囲をどのような手順で依頼するかの整理も課題です。札幌市の資料によると、札幌市の市有建築物は約2,300施設・延べ約550万㎡にのぼり、1970〜80年代に建てられたものが多く、築30年以上の割合が高いとされています。市では2008年度から、保全計画に基づく計画的な修繕を一元的に実施しています。書庫のカビ対策も、単発の清掃ではなく、建物の保全や設備の更新と結びつけて考えると、再発防止につながりやすくなります。
発注前に確認したい項目 | 確認する理由 | 当社で行うこと |
カビの範囲(資料・書架・壁・床・天井) | 資料の処置と部屋側の対策を切り分けるため | 目視と写真で範囲を記録し、報告書にまとめる |
原因の見立て(結露・漏水・高湿の継続) | 除去だけでは再発するおそれがあるため | 含水率測定や温湿度の確認で原因を探る |
資料の退避方法と保管先 | 作業中に資料へ胞子や薬剤が触れないようにするため | 養生と作業範囲の区切り方を事前に提案する |
作業日程(休館日・夜間・長期休暇) | 利用者や職員への影響を抑えるため | 施設の運営日程に合わせた工程を組む |
施工前の検査と記録の方法 | 効果を数値や記録で説明できるようにするため | 付着菌検査・落下菌検査などで前後を比較する |
表の中の「施工前の検査と記録の方法」は、公共施設では特に重要です。議会や上位部署への説明、指定管理者と所管課との間の報告など、対策の内容と結果を記録として残す必要があるからです。付着菌検査(有料オプション)とは、表面に付いているカビを採取して培養し、種類や量を調べる検査のことで、落下菌検査とは、空気中から落ちてくるカビを一定時間集めて調べる検査のことです。こうした検査を施工の前後で行うことで、目に見える変化だけでなく、数値の変化として状況を確認できます。
見積りの段階では、「作業範囲」「原因調査の有無」「資料の退避や養生の方法」「作業後の確認方法」が書面で示されているかを確認してください。費用は現地の状況により異なりますので、当社では現地調査のうえでお見積りをお出ししています。指定管理者が管理する施設では、建物側の修繕と日常の管理のどちらに当たるのかで担当が分かれることもあるため、所管課と早めに相談しておくと手続きが進めやすくなります。
工程の組み方も、書庫ならではの配慮が必要です。資料を別室へ退避させる期間が長くなると、退避先の部屋で新たに湿気の問題が生じることもあります。当社では、退避先の環境もあわせて確認し、作業期間をできるだけ短くできるよう、調査・除去・環境改善のご提案までの流れを事前にご説明しています。学校の図書室であれば長期休暇中、図書館であれば休館日や館内整理期間に合わせるなど、施設の予定に沿った日程をご相談ください。
また、厚別区や清田区など郊外の地区センターや図書施設では、ひとつの建物に図書コーナー、会議室、倉庫が同居していることも多く、書庫だけでなく隣接する部屋からの湿気の流れも確認が必要です。部屋単位ではなく建物単位で湿気の動きを見ることが、書庫を守る近道になります。
第6章|湿度65%を超えない書庫管理のルールづくり|データロガー・配架・年間点検
ここまで見てきたように、書庫のカビは「ある日突然」ではなく、高い湿度が続いた結果として現れます。だからこそ、日々の管理のルールを決めておくことが最も効果的な予防になります。最後に、公共図書館や学校図書室、役所の文書庫、企業の書類保管室、郷土資料を預かる団体まで、規模を問わず取り入れやすい書庫管理のルールを整理します。
まずはデータロガーの設置場所です。書庫の中央に置くだけでは、壁際や床付近の状況はわかりません。当社では、外壁側の書架の近く、最下段の高さ、地下書庫の壁際、空調の吹き出しから遠い位置など、カビが出やすい場所を優先して設置することをおすすめしています。記録は定期的に取り出して、湿度が65%を超えた時間帯や日数を確認します。数字を見るときは、一瞬の上昇よりも、超えた状態が何日続いたかに注目してください。
次に配架のルールです。国立国会図書館の目安にあるように、書架の最下段と床の間は空けておきます。床に段ボール箱を直接置かない、外壁と書架の間に空気の通り道を残す、棚に資料を詰め込みすぎない、といった基本を、担当者が替わっても守れるように書面にしておくと安心です。資料保存の温湿度について館内の手順書がない場合は、この機会に作成してみてはいかがでしょうか。
そして年間の点検計画です。第3章でご紹介したように、札幌の書庫は季節ごとに注意すべき場面が変わります。冬の休館日明けには窓まわりと最下段、雪解け期には地下の床と壁の下部、夏には冷房のない部屋の湿度、秋には暖房が入る前の総点検というように、時期と場所をあらかじめ決めておくと、点検の抜けを防げます。
時期 | 重点的に見る場所 | 確認する内容 |
秋(初霜・初雪の前) | 書庫全体・外壁側の書架 | 一年分の記録の振り返り、冬前の配架の見直し |
年末年始・冬休み明け | 窓まわり・最下段・床置き箱 | 結露の跡、カビ臭、休館中の湿度の推移 |
春先(雪解け期) | 地下書庫の床・壁の下部 | 床の湿り、壁のしみ、白い粉の発生 |
夏(梅雨明け〜晩夏) | 冷房のない書庫・資料室 | 湿度65%を超える日が続いていないか |
通年(定期的に) | データロガーの設置場所 | 記録の取り出しと、目安を超えた期間の確認 |
企業の書類保管担当の方や、郷土資料を持つ地域の団体の方にとっては、専用の書庫がなく、事務所の一角や倉庫の棚に資料を置いていることも多いと思います。その場合でも、考え方は同じです。床に直置きしない、外壁から離す、湿度を記録する、という3点だけでも、カビのリスクを下げることにつながります。豊平区や西区の住宅街にある町内会館や地域の資料室でも、冬の間は暖房を使う日が限られ、使わない日に湿気がこもりやすいため、ぜひ意識していただきたいポイントです。
もうひとつ大切なのが、引き継ぎです。公共施設では人事異動があり、指定管理者の交代や学校の司書・担当教員の異動によって、書庫の事情を知る人がいなくなることがあります。データロガーの記録、過去にカビが出た棚の位置、雪解け期に床が湿った場所、業者に依頼した作業の報告書などを一冊のファイルにまとめておくと、次の担当者が同じ失敗を繰り返さずに済みます。当社の現場での傾向として(統計ではありません)、再発のご相談では「前任者の頃にも同じ場所でカビが出ていた」と後からわかることが少なくありません。記録を残すことそのものが、書庫を守る仕組みになります。
また、書庫の点検で湿度が高い場所が見つかったときは、その原因が建物側にあるのかを確かめることも大切です。壁や床が湿っているかどうかは、見た目だけでは判断が難しい場合があります。当社では、建材に含まれる水分の割合を測る含水率測定や、表面や空気中のカビを調べる検査を組み合わせて、原因の見立てをお手伝いしています。
まとめ|札幌の書庫は「湿度65%を超えない・急変させない・記録する」で守る
本記事では、国立国会図書館が示す書庫の目安を軸に、札幌の図書館・公文書庫・資料室でカビを防ぐための考え方をご紹介しました。国立国会図書館は、書庫の温度を「人が作業できる温度」、湿度を「65%以下」を目安とし、恒常的に65%を超えるとカビが発生する確率が高まるとしています。あわせて、温湿度を急変させないこと、書架の最下段と床の間を空けること、データロガーで監視することが挙げられています。どれも大がかりな設備を必要としない、今日から取り組める内容です。
札幌の書庫で特に気をつけたいのは、季節ごとに原因が入れ替わる点です。冬は暖房で乾くように見えても、地下書庫や外壁側の書架、暖房が止まる夜間や休館日には、冷たい面で結露が起きることがあります。雪解け期には地下の外壁や床の継ぎ目から水がしみ込み、夏には湿った外気や冷房のない部屋で高い湿度が続くことがあります。「冬は大丈夫」「夏は換気すればよい」と決めつけず、データロガーの記録で自施設の書庫の実態を確かめることが、対策の出発点になります。
カビが出た資料を見つけたときは、隔離・乾燥・記録・専門家への相談の順で落ち着いて対応し、家庭用の塩素系カビ取り剤を資料にかけることは避けてください。資料そのものの処置は資料保存の専門家に、書架や壁・床・天井など部屋側の除去と原因調査はカビ対策の専門業者に、と役割を分けて考えると、資料を守りながら再発防止まで進めやすくなります。
Q. 書庫の湿度が一時的に65%を超えてしまいました。すぐにカビが生えるのでしょうか?
A. 国立国会図書館の目安では、問題とされているのは湿度が「恒常的に」65%を超える状態です。一時的な上昇だけで直ちにカビが生えるとは限りませんが、同じ場所で繰り返し超えている場合は注意が必要です。データロガーの記録で、超えた状態がどのくらい続いているかを確認し、続いているようであれば除湿や配架の見直しを検討してください。
Q. カビが生えた書類は、アルコールや漂白剤で拭き取ってもよいですか?
A. 公文書や郷土資料など大切な資料の場合、自己流で薬剤を使うことはおすすめできません。特に家庭用の塩素系カビ取り剤は、紙の変色や劣化を招くおそれがあります。まずは資料を隔離して記録を残し、資料保存の専門家や関係機関にご相談ください。書架や部屋側のカビについては、当社のような専門業者にご相談いただけます。
書庫のカビ対策は、一度の大きな工事よりも、小さな確認の積み重ねが力を発揮する分野です。データロガーの記録を定期的に見る、床置きの箱をなくす、外壁と書架の間をあける、休館日明けに窓まわりと最下段をのぞく、雪解け期に地下の床を触って確かめる。こうした一つひとつの習慣が、湿度65%を超える状態を早く見つけ、カビが資料に広がる前に手を打つことにつながります。担当者が替わっても続けられるよう、手順と記録を組織の中で共有しておくことも忘れないでください。
2026年の秋は、初霜や初雪を前に、書庫の一年分の記録を振り返る絶好のタイミングです。気象庁の平年値では札幌の初霜は10月25日、初雪は10月28日とされており、窓を開けて空気を入れ替えやすい時期は残りわずかです。暖房シーズンに入る前に、外壁側の書架、最下段、地下書庫の床と壁をひと通り確認しておくと、冬から春にかけてのトラブルを減らすことにつながります。
カビバスターズ北海道では、図書館・学校図書室・役所の文書庫・企業の書類保管室・地域の資料室など、紙の資料を扱う施設のカビのご相談にも対応しています。含水率測定や付着菌検査・落下菌検査などの各種調査で原因を探り、MIST工法®による除去、カビが生えにくい環境づくりまでをワンストップでご提案いたします。資料を守りながらの作業日程や養生の方法、施工前の検査と記録の方法についても、施設の運営に合わせてご相談を承ります。札幌市内の各区はもちろん、旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応しておりますので、書庫や資料室のカビ、湿気、におい、結露でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。※菌検査は施工前に行う有料オプションです。
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カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
所在地:〒064-0807 北海道札幌市中央区南7条西1丁目6-2
受付時間:平日9:00〜18:00(土日祝休み)
対応エリア:札幌市(中央区・北区・東区・白石区・豊平区・南区・西区・厚別区・手稲区・清田区)をはじめ、石狩・小樽・千歳・苫小牧・旭川・函館など北海道全域。地域ごとの対応は対応エリアをご覧ください。




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