札幌の空き家15.6万戸と冬のカビ|空き家率13.8%時代、冬を越す家の湿気・凍結・カビ対策
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。2026年の秋、札幌では「親が施設に入って実家が空いたまま」「相続した家を売るか貸すか決めきれない」というご相談が、当社にも少しずつ増えてきました。札幌市の資料によると、令和5年住宅・土地統計調査では札幌市内の空き家は155,800戸、空き家率は13.8%にのぼり、平成30年の11.9%から1.9ポイント上昇しています。数字だけを見ると他人事のように感じるかもしれませんが、その一戸一戸には、東京や本州で暮らすご家族が「冬のあいだ、あの家はどうなっているのだろう」と気にかけている実家が含まれています。札幌の空き家にとって、いちばん厳しいのは冬です。暖房が止まった家は、水道管の凍結、低温で湿った空気のこもり、雪でふさがれた換気口、屋根雪が原因のすが漏りなど、住んでいる家とはまったく違う形で傷んでいきます。そして春に家を開けたとき、押入れや床下、北側の部屋にカビが広がっていて驚かれる方も少なくありません。本記事では、札幌の空き家の統計を確認したうえで、冬の空き家で何が起きるのか、月1回の管理で何を見ればよいのか、そして売却・賃貸・解体の前にカビ調査をしておく意味を、個人所有の空き家・相続した実家に絞って解説します。
この記事の結論 札幌市の空き家は155,800戸、空き家率13.8%。暖房のない冬の空き家では、水抜き忘れの凍結、低温多湿、雪でふさがる換気口、すが漏りが重なりカビが進みます。月1回の管理チェック表と、売却・賃貸・解体前にカビ調査をしておく意味を解説。
第1章|札幌の空き家は15.6万戸|統計から見える「管理が必要な家」の数
まずは、札幌の空き家がどのくらいあるのかを数字で確認しておきましょう。札幌市の資料によると、令和5年住宅・土地統計調査の結果、札幌市の総住宅数は1,128,200戸、そのうち空き家は155,800戸で、空き家率は13.8%でした。前回の平成30年調査では空き家率が11.9%でしたので、5年間で1.9ポイント上昇したことになります。約15.6万戸という数は、札幌の住宅のおよそ7〜8軒に1軒が、調査時点で人の住んでいない状態だったことを意味します。
ただし、この155,800戸がすべて「放置された古い家」というわけではありません。住宅・土地統計調査でいう空き家には、入居者を募集中の賃貸住宅、売りに出している住宅、別荘などの二次的住宅も含まれています。つまり、アパートの空き部屋や、買い手を待っている新しめの物件も数に入っているのです。空き家率という言葉だけが独り歩きしがちですが、中身を分けて見ることが大切です。
そこで注目したいのが、札幌市の資料で示されている「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。これは、貸す予定も売る予定も決まっておらず、別荘として使われているわけでもない空き家のことで、札幌市では31,800戸、総住宅数に対する割合は2.8%とされています。わかりやすく言い換えると、「使い道が決まらないまま置かれている家」がこの区分に多く含まれると考えられます。親が亡くなった後の実家、施設入所で空いた家、転勤や移住でしばらく戻らない家などは、まさにここに当てはまりやすい住まいです。
項目(令和5年住宅・土地統計調査、札幌市まとめ) | 数値 | 読み取れること |
総住宅数 | 1,128,200戸 | 札幌市内の住宅の総数 |
空き家数 | 155,800戸 | 賃貸・売却用、二次的住宅を含む空き家の合計 |
空き家率 | 13.8% | 平成30年の11.9%から1.9ポイント上昇 |
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 31,800戸(2.8%) | 使い道が決まっていない空き家が多く含まれる区分 |
当社がカビのご相談を受ける空き家も、この「使い道が決まっていない家」が中心です。賃貸用や売却用の物件であれば、管理会社や不動産会社が定期的に出入りし、換気や通水をしていることが多いのですが、相続した実家や施設入所で空いた家は、ご家族が遠方に住んでいて年に数回しか様子を見られないというケースが目立ちます。とくに札幌の場合、ご家族が道外にお住まいで、冬のあいだは飛行機で帰省するのも難しいという声をよく伺います。これは当社の現場での傾向であり統計ではありませんが、「半年ぶりに家を開けたら、押入れと北側の和室が真っ黒だった」というご相談は、春先に集中する印象があります。
また、空き家の問題は住宅の立地によっても表情が変わります。中央区や豊平区のように地下鉄沿線でマンションが多いエリアでは、空き住戸としての空き家が多く、管理組合や管理会社の目が届きやすい一方、南区や清田区、手稲区の山沿いなど戸建てが多い住宅街では、一軒家がまるごと空いているケースが目立ちます。戸建ての空き家は、屋根・外壁・床下・物置など確認すべき場所が多く、雪の影響も直接受けるため、冬の管理がより重要になります。
空き家率が上がっている背景には、高齢化や相続、住み替えなどさまざまな事情がありますが、所有者の立場から見ると「すぐには決められない」という状況が長引きやすいのが実情です。兄弟姉妹で相談が必要だったり、遺品の整理に時間がかかったり、売るにしても雪が解けてからにしたいと考えたりするうちに、一冬、二冬と空き家のまま過ぎていきます。決めるまでの期間こそ、家の状態を保つ管理が必要になるのです。
東区や北区、白石区、厚別区などの平地の住宅街でも、昭和の時代に建てられた一戸建てが相続の時期を迎えています。古い住宅は現在の住宅に比べて断熱や換気の考え方が異なることも多く、暖房を止めたときの湿気のたまり方にも違いが出やすいと感じます。空き家になった時点で、築年数や過去の改修の履歴を整理しておくと、後の管理や調査がスムーズになります。
本記事では、この「使い道が決まらないまま冬を越す、個人所有の戸建て空き家・相続した実家」を主な対象としてお話しします。社宅や寮の空室、宿泊施設の客室、入居中の住宅の暖房前の時期などは、同じ「使っていない空間」でも管理の体制や目的が異なりますので、ここでは扱いません。ご自身やご家族が札幌に空き家をお持ちで、「今年の冬をどう越すか」を考えている方に向けて、次章から具体的に見ていきます。
第2章|冬の空き家で起きること①|水抜き・凍結と、暖房のない家の低温多湿
札幌の冬は、空き家にとって長く厳しい期間です。気象庁の平年値では、札幌管区気象台の観測で初霜が10月25日、初雪が10月28日、根雪の始まりが12月6日とされています(1991〜2020年の平年値)。日本気象協会のtenki.jpでは、雪虫(トドノネオオワタムシ)を見かけてから10日〜2週間ほどで平地に初雪が降るという経験則も紹介されています。住んでいる家であれば、概ね10月から4月ごろまで暖房を使いながら冬を越しますが、空き家ではこの半年ほどのあいだ、暖房も換気もほとんど行われないまま時間が過ぎていきます。
最初に気をつけたいのが、水道管の凍結です。札幌では、長期間家を空けるときに水道の元栓(止水栓)を閉め、水抜き栓を操作して配管内の水を抜く「水抜き」が冬の基本とされています。水抜きとは、配管に水を残さないことで、凍って膨張した水が管を破裂させるのを防ぐ作業のことです。空き家で水抜きを忘れると、厳寒期に配管が凍結・破損し、春に通水したとたんに床下や壁の中で水が漏れ出すことがあります。当社の現場でも、漏水に気づかないまま時間がたち、床下の断熱材や土台が濡れてカビが広がっていたケースを何度も見てきました。
水抜きの際には、給水管だけでなく、給湯器、トイレのタンク、洗面台や台所の蛇口まわりなども確認が必要です。便器や排水口の封水についても、凍結による破損を防ぐための処置が必要になる場合があります。封水とは、排水管からの臭いや虫の侵入を防ぐために、トラップと呼ばれる部分にたまっている水のことです。家の設備によって手順が異なるため、具体的な方法は水道事業者や設備業者、住宅の取扱説明書で確認することをおすすめします。
次に見落とされやすいのが、暖房のない家の「低温多湿」です。冬の空気は乾燥しているというイメージがありますが、それは暖房で室温を上げた室内の話です。暖房を止めた空き家では、室温が外気に近い低さまで下がります。空気は温度が低いほど含むことのできる水蒸気の量が少なくなるため、わずかな水分でも相対湿度が高くなりやすいのです。相対湿度とは、その温度の空気が含める水蒸気の最大量に対して、実際にどれだけ含んでいるかを割合で示したものです。
状態 | 住んでいる家(暖房あり) | 冬の空き家(暖房なし) |
室温 | 暖房で保たれる | 外気に近い低温まで下がる |
相対湿度 | 暖房で下がりやすい | わずかな水分でも高くなりやすい |
空気の動き | 換気扇・生活動線で動く | ほとんど動かず、湿気がよどむ |
水分の出どころ | 調理・入浴・呼吸など | 床下の地面、残った水、建材、雪解け水など |
異変の発見 | 住人がすぐ気づく | 次に訪れるまで誰も気づかない |
さらに、北海道の住宅特有の事情として「室内外の温度差」の変化があります。札幌の住宅は、暖房で室内を暖めることを前提に断熱されています。人が住んでいるあいだは室内が暖かく外が寒いという温度差の中で、結露を防ぐ工夫がされていますが、空き家になると室内も冷え切ります。そこへ天気の変化で外気が一時的にゆるむと、冷えた壁や床、押入れの奥、家具の裏などに湿った空気が触れ、結露が起きることがあります。暖房のない家では、この結露がなかなか乾きません。
また、札幌の豪雪期は、住んでいる家でも窓を開けにくい季節です。空き家ではなおさら、窓を開けて空気を入れ替える機会がありません。押入れやクローゼット、布団や衣類がしまい込まれた部屋、畳の和室など、もともと空気が動きにくい場所では、冬のあいだに少しずつ湿気がたまり、春先の気温の上昇とともにカビが一気に目立つようになります。当社の現場での傾向であり統計ではありませんが、相続した実家では、布団や衣類、段ボールなど湿気を吸いやすい物が多く残っていることも、カビを広げる一因になっていると感じます。
空き家の中に残された家財も、湿気の動きに影響します。たとえば、北側の部屋にたんすや本棚が壁にぴったりと付けて置かれていると、家具の裏は空気がほとんど動かず、冷えた壁との間で結露が起きやすくなります。札幌のように冬の室内外の温度差が大きい地域では、空き家になっても家具の配置がカビの出方を左右することがあります。
低温であればカビは生えにくいと思われがちですが、カビの中には比較的低い温度でも少しずつ成長する種類があるといわれています。冬のあいだにゆっくりと根を張り、春に温度が上がったところで目に見える形で広がる、という流れは空き家でよく見られるものです。冬の空き家管理は、凍結を防ぐことと、湿気をためないことの両方を意識する必要があるのです。
第3章|冬の空き家で起きること②|雪でふさがる換気口と、屋根雪・すが漏り
札幌の空き家で、もう一つ大きな問題になるのが雪です。住んでいる家であれば、玄関前や窓まわり、給排気口のまわりはこまめに除雪されますが、空き家では誰も雪かきをしないまま、建物のまわりに雪がどんどん積もっていきます。根雪が始まる12月上旬から春まで、建物の足元は雪に埋もれた状態が続くことになります。
まず確認したいのが、換気口と床下換気口です。床下換気口とは、基礎のコンクリート部分に設けられた、床下の湿気を外へ逃がすための通気口のことです。戸建て住宅の多くは、この換気口を通じて床下の空気を入れ替えています。ところが、建物の足元に雪が積もると、床下換気口がすっぽりとふさがれてしまいます。屋根から落ちた雪が建物の周囲に山のように積もる家では、換気口だけでなく1階の窓の下部まで雪に覆われることもあります。
床下の換気がふさがれると、地面から上がってくる湿気の逃げ場がなくなります。暖房のない空き家では床下の温度も低いため、湿った空気が土台や大引、床の合板の裏側に触れて結露しやすくなります。当社の現場でも、空き家の床下を点検すると、換気口付近の雪の重みで基礎まわりに雪解け水が回り込み、土台の表面にカビが出ていたというケースがありました。床下は普段目にしない場所だけに、気づいたときには範囲が広がっていることが少なくありません。
また、24時間換気や換気扇の外部フード、給湯器やボイラーの給排気口なども、雪で覆われると本来の役割を果たせなくなります。空き家では換気設備を止めていることも多いのですが、止めている場合でも、外部フードのまわりに雪が詰まって、春先に雪解け水が壁の中へ入り込むきっかけになることがあります。
雪による現象 | 起こりやすい場所 | カビにつながる流れ |
換気口の閉塞 | 基礎の床下換気口、1階外壁の換気フード | 床下・壁内の湿気が逃げず、結露やカビの原因に |
屋根雪の滞留 | 無落雪屋根、谷部、軒先 | 雪の重みや解けた水が屋根材のすき間に回る |
すが漏り | 軒先、天井裏、外壁上部 | 天井裏の断熱材や下地が濡れ、乾かないまま春へ |
落雪・雪山 | 建物のまわり、窓の下、物置の前 | 外壁の足元が長く濡れ、雪解け期に水が回り込む |
換気口をふさぐのは雪だけではありません。空き家では、使わなくなった自転車や植木鉢、灯油タンクのまわりの物、片付けきれなかった荷物などが建物の外周に置かれたままになっていることがあります。こうした物のまわりには雪が吹きだまりやすく、換気口の前に大きな雪山ができる原因になります。秋のうちに建物の外周を一周し、換気口の前を空けておくだけでも、冬の床下環境は変わってきます。
次に、屋根雪とすが漏りです。すが漏りとは、屋根に積もった雪が解けて流れる途中で、軒先などで再び凍って氷の堤防のようになり、その内側にたまった水が屋根材のすき間から建物の中へ浸み込む現象のことです。雨漏りのように上から落ちてくるとは限らず、天井裏や壁の中にじわじわと水が回るため、住んでいても気づきにくいのが特徴です。空き家ではなおさら、天井のしみに気づく人がいないまま、断熱材や下地材が濡れた状態で冬を越すことになります。
札幌の住宅には、屋根の雪を落とさずに屋根の上で処理する無落雪屋根も多く見られます。無落雪屋根は落雪の心配が少ない一方、排水口(ドレン)が雪や氷、落ち葉などで詰まると、屋根の上に水がたまりやすくなります。秋のうちに排水口まわりを確認しておくことは、住んでいる家でも空き家でも大切な冬支度です。
雪の季節の空き家には、もう一つ難しさがあります。それは、冬のあいだは点検そのものがしにくいということです。玄関までの通路が雪に埋もれていると、家の中に入ることすら大変になります。道外にお住まいのご家族にとっては、なおさらです。だからこそ、根雪になる前の10月から11月にかけて、換気口のまわりに物を置かない、屋根や雨どい、排水口を確認しておく、除雪をどうするか決めておくといった準備が重要になります。雪国の空き家管理は、冬が来る前にどれだけ段取りをしておけるかで、春の状態が大きく変わるのです。
第4章|月1回の空き家管理チェック表|冬を越すために見ておきたい場所
ここからは、冬の空き家を月1回訪れるときに確認したいポイントを整理します。空き家の管理というと、郵便物の回収や庭の手入れを思い浮かべる方も多いのですが、カビの予防という点では「湿気の出どころ」と「空気の動き」を確認することが中心になります。1回の訪問で家じゅうを細かく掃除する必要はありません。毎回同じ順番で、同じ場所を見て、変化に気づけるようにすることが大切です。
当社がおすすめしているのは、玄関に入ったらまず「におい」を確認することです。カビ臭さや下水のようなにおい、湿った土のようなにおいがする場合は、どこかで湿気がこもっているサインかもしれません。次に、各部屋の窓や押入れ、床下点検口を順に見て回り、最後に建物の外周と屋根まわりを確認します。以下の表は、冬の空き家を想定した月1回のチェック項目の例です。
チェック場所 | 確認すること | 気になるときの対応 |
玄関・室内全体 | カビ臭さ、下水臭、湿った土のにおいがないか | においの強い部屋を特定し、窓や押入れを重点的に確認 |
窓・サッシ | 結露の跡、窓枠やパッキンの黒ずみ | 水分を拭き取り、カーテンの裏側も確認 |
押入れ・クローゼット | 壁や床板のしみ、布団・衣類の湿り気 | 戸を少し開けて空気を通す、湿気を吸う物は整理を検討 |
水まわり | 水抜きの状態、床のしみ、蛇口や配管の異常 | 漏水の疑いがあれば通水前に設備業者へ相談 |
天井・壁の上部 | しみ、変色、クロスの浮き | すが漏りの可能性を考え、屋根まわりの状態を確認 |
床下点検口 | カビ臭さ、土台や断熱材の濡れ | 異常があれば専門業者による床下調査を検討 |
建物の外周 | 床下換気口・換気フードが雪でふさがっていないか | 換気口の前の雪をよけ、物を置かない |
屋根・軒先 | つらら、氷の堤、雪の偏った積もり方 | 安全を最優先し、屋根作業は専門業者に依頼 |
訪問の頻度は月1回を目安にしつつ、冬の入口と出口は少し手厚くするのがおすすめです。根雪前の11月には水抜きや換気口まわりの片付けを、雪解けが進む3月から4月には天井や床下、外壁の足元の確認を重点的に行います。とくに雪解け期は、冬のあいだに入り込んだ水が表に出てくる時期です。この時期の点検で異変に気づけるかどうかが、カビを広げないための分かれ目になります。
訪問のたびに、窓や押入れの戸を開けて短時間でも空気を入れ替えると、よどんだ湿気を外へ逃がす助けになります。ただし、豪雪期に窓を長く開けたままにすると、室内が冷え込みすぎたり、雪が吹き込んだりすることがあります。窓を開けるのは訪問中だけにとどめ、帰るときには必ず閉めて施錠しましょう。晴れて外気が比較的乾いている日を選ぶのも一つの方法です。
また、チェックの結果は写真とメモで残しておくことをおすすめします。同じ場所を同じ角度で撮影しておくと、しみや黒ずみが広がっているかどうかを比べやすくなります。ご家族で空き家を共有している場合は、写真を共有しておけば、売却や賃貸の相談をするときにも建物の状態を説明しやすくなります。温度と湿度を記録できる小型の記録計(データロガー)を部屋に置いておけば、訪問しない日の変化も把握できます。
道外にお住まいで月1回の訪問が難しい場合は、札幌に住む親族やご近所の方にお願いする、空き家管理サービスを利用するなどの方法があります。依頼するときは「何を見てほしいか」をこの表のように具体的に伝えることが大切です。郵便物の回収と外観の確認だけでは、押入れや床下、天井のしみといったカビの兆候は見落とされがちです。室内まで入って確認してもらえるか、写真で報告してもらえるかを事前に確認しておきましょう。
管理を依頼する場合も自分で通う場合も、鍵の管理と、訪問した日付・天候・確認した内容を一枚のメモにまとめておくと便利です。冬のあいだの記録が残っていれば、春に異変が見つかったときに「いつごろから起きていたのか」を推測しやすくなり、原因の調査にも役立ちます。
チェックのときに、手の届く範囲でカビを見つけることもあると思います。小さな範囲であれば、市販のカビ取り剤で対応できることもありますが、換気の悪い空き家で薬剤を使う場合は、換気と手袋・マスクの着用を忘れないようにしてください。広い範囲に広がっている、何度拭いても戻ってくる、床下や天井裏など見えない場所が疑われるといった場合は、無理に自分で対処せず、原因の調査から専門業者に相談することをおすすめします。カビによる体調への影響が気になる場合は、医療機関にご相談ください。
第5章|売却・賃貸・解体の前にカビ調査をしておく意味
空き家をどうするかは、大きく分けて「売る」「貸す」「解体する」「当面はそのまま管理する」のいずれかになります。どの道を選ぶにしても、決める前に一度建物のカビの状態を確認しておくことには意味があります。なぜなら、カビの状態は見た目だけではわかりにくく、しかも空き家の期間が長くなるほど、目に見えない場所で広がっている可能性があるからです。
まず売却の場合です。中古住宅として売り出すとき、買主は内覧で押入れや床下点検口、窓まわりなどを確認します。カビ臭さや目に見える黒ずみがあると、買主の不安につながり、価格交渉や契約の判断に影響することがあります。また、売却後に床下や壁の中のカビが見つかると、売主と買主のあいだで話し合いが必要になることもあります。事前に建物の状態を把握しておけば、補修してから売るのか、現状を説明したうえで売るのかを、根拠をもって判断しやすくなります。
次に賃貸の場合です。相続した実家を貸し出す場合、入居者が暮らし始めてからカビが出ると、入居者の生活に影響するだけでなく、苦情や退去につながることもあります。空き家の期間に床下や押入れにカビが根を張っていると、入居後に暖房で室温が上がり、生活で水蒸気が増えたタイミングで一気に目立つようになることがあります。賃貸に出す前にカビの状態を確認し、必要に応じて除去と湿気対策をしておくことは、入居者に安心して住んでもらうための準備といえます。
道外にお住まいのご家族にとっては、調査結果が報告書や写真として手元に残ることにも意味があります。現地に何度も足を運べなくても、どの部屋のどの場所にどの程度のカビがあるのかを、離れた場所にいるご兄弟やご親族と共有できるからです。空き家の方針を家族で話し合うとき、共通の資料があるだけで話が進めやすくなるという声を、当社でもよく伺います。
空き家の活用方法 | カビ調査をしておく主な意味 | 確認しておきたい場所の例 |
売却 | 補修するか現状で売るかの判断材料、買主への説明の根拠 | 床下、押入れ、北側の部屋、天井のしみ |
賃貸 | 入居後のカビトラブルの予防、必要な処置の範囲の把握 | 水まわり、窓まわり、クローゼット、換気設備 |
解体 | 解体作業時の粉じんへの配慮、残す家財や部材の判断 | 家財が多く残る部屋、天井裏、床下 |
当面は管理を続ける | 現状の記録、管理方法の見直し、次の冬の対策 | においの強い部屋、雪の影響を受けた外周部 |
解体する場合にも、カビの状態を知っておく意味はあります。カビが広がった建物を解体すると、作業中にカビを含む粉じんが舞い上がることがあります。近隣の住宅との距離が近い住宅街では、解体業者と相談しながら散水などの配慮を検討するきっかけになります。また、解体前に家財を持ち出す場合、カビの付いた布団や衣類、書籍などをそのまま新しい住まいに持ち込まないよう、何を残し何を処分するかを判断する材料にもなります。
リフォームして住み続ける、あるいは活用する場合には、断熱改修と組み合わせて考えるご家庭もあります。札幌市の資料によると、令和8年度の札幌市住宅エコリフォーム補助制度は、省エネ改修やバリアフリー改修の費用の一部を補助する制度で、札幌市民が対象となり、市内に主たる営業所がある建設業許可業者が施工することが条件とされています。令和8年度の第2回受付は9月4日から17日までで終了しており、抽選は9月30日の予定です。外壁や屋根の塗装は対象外とされています。また、環境省の先進的窓リノベ2026事業は、断熱窓への改修を支援する事業で、2025年11月28日以降に着手した工事が対象です。いずれも条件や受付状況が変わることがありますので、公式サイトで最新の条件を確認してください。
なお、空き家の期間が長い場合、カビだけでなく、床下の湿気による木材の傷みや、配管まわりの劣化などが同時に見つかることもあります。カビの調査は、建物全体の状態を見直すきっかけにもなります。必要に応じて工務店や設備業者など他の専門家とも連携しながら、優先順位をつけて対応していくことが大切です。
ここで大切なのは、カビ調査は「売れない家を探すため」ではなく、「判断するための情報をそろえるため」に行うということです。空き家の状態がわからないまま話を進めると、あとから想定外の補修が必要になり、ご家族の話し合いが振り出しに戻ってしまうこともあります。当社では、売却や賃貸を検討されている段階でのご相談もお受けしています。不動産会社や工務店と並行して、建物のカビの状態を客観的に確認しておくことで、ご家族が納得して次の一歩を決めやすくなると考えています。
第6章|空き家のカビ調査はどう進める?|検査の組み合わせと除去・再発予防の考え方
では、実際に空き家のカビ調査はどのように進めるのでしょうか。当社では、まず建物の履歴をお伺いするところから始めます。いつから空き家になっているのか、冬のあいだの水抜きや暖房はどうしていたのか、雨漏りやすが漏り、漏水の経験はあるか、どの部屋でにおいや黒ずみが気になるか、といった情報です。空き家の場合、ご家族もすべてを把握しているわけではないことが多いので、わかる範囲で構いません。
そのうえで、目視での確認と各種の検査を組み合わせて、カビがどこに、どのくらい広がっているのか、原因となっている湿気はどこから来ているのかを調べていきます。空き家では、見えている黒ずみだけでなく、床下や壁の中、天井裏など、普段目にしない場所の確認が重要になります。以下は、空き家の調査でよく組み合わせる検査の例です。なお、菌検査(付着菌・落下菌・浮遊菌など)は有料オプションです。
検査の種類 | わかること | 空き家で役立つ場面 |
含水率測定 | 木材や建材にどれくらい水分が含まれているか | 漏水やすが漏りの後、床下や天井の下地が乾いているかの確認 |
付着菌検査 | 表面に付いているカビの種類や量の傾向 | 押入れや壁の黒ずみがカビかどうか、どの程度かの確認 |
浮遊菌検査 | 室内の空気中に漂うカビの量の傾向 | 閉め切っていた部屋の空気環境の確認 |
ファイバースコープ調査 | 壁の中や床下の状態を小さな穴から目で見る | 壁を壊さずに内部の状態を確認したいとき |
同定検査 | カビの種類を特定する | 除去方法の検討や、売却・賃貸時の説明資料として |
含水率とは、木材などの材料に含まれている水分の割合のことです。空き家では、漏水やすが漏りのあとに材料が十分に乾いていないことがあり、含水率を測ることで、見た目では乾いているように見える部分の状態を数値で確認できます。カビ対策は、カビを取り除くことと同時に、原因となる湿気を断つことが欠かせません。原因が残ったままでは、除去してもカビが戻ってくる可能性があるからです。
調査の結果、除去が必要と判断された場合には、当社ではMIST工法®による除去と、カビが生えにくい環境づくりをご提案しています。MIST工法®は、素材の性質に合わせて薬剤を調整し、こすったり削ったりすることを極力避けながらカビにアプローチする方法です。木材や畳、古い建具など、素材を傷めたくない部分が多い実家の施工でも検討しやすいのが特長です。費用や施工期間は、カビの範囲や建物の状態、現地状況により異なりますので、調査のうえでお見積りをご提示しています。
空き家の場合、施工のタイミングも大切です。売却や賃貸の予定が決まっているなら、そのスケジュールに合わせて調査と施工の時期を決めることになります。一方、まだ方針が決まっていない場合は、まず調査だけを行って現状を把握し、方針が決まってから施工を検討するという進め方もあります。冬のあいだは雪で建物の外周や床下の確認がしにくくなることもあるため、根雪前の秋か、雪解け後の春に調査を行うご家庭が多い傾向があります。これは当社の現場での傾向であり統計ではありません。
相続した実家では、家財の整理と調査の順番に迷う方もいらっしゃいます。家財が多く残っていると、押入れの奥や家具の裏、床の状態が確認しにくいため、ある程度片付けてから調査したほうが全体像をつかみやすくなります。一方で、片付けの途中でカビの付いた物を別の部屋へ移すと、そこにカビを持ち込むことにもなりかねません。気になる部屋があれば、片付けを始める前に一度ご相談いただくのも一つの方法です。
施工後も、空き家のままであれば湿気がたまりやすい環境は変わりません。除去施工を行ったあとも、第4章でご紹介したような月1回の管理を続け、換気口をふさがない、水抜きを確実に行う、屋根まわりを点検するといった基本を積み重ねていくことが、カビを繰り返さないための土台になります。
各検査の詳しい内容や、中古住宅として売り出す前後の確認ポイントについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:中古住宅の内覧でカビを見抜く12のチェックポイント
まとめ|札幌の空き家は「冬の前の段取り」と「売る前・貸す前の調査」でカビを防ぐ
札幌市の資料によると、令和5年住宅・土地統計調査で札幌市の空き家は155,800戸、空き家率は13.8%となり、平成30年の11.9%から1.9ポイント上昇しました。そのうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は31,800戸(2.8%)で、使い道が決まらないまま置かれている家が多く含まれる区分です。相続した実家や施設入所で空いた家は、まさにこの中にあり、所有者のご家族が道外に住んでいることも珍しくありません。
冬の空き家では、住んでいる家とは違う形で湿気とカビのリスクが高まります。気象庁の平年値では、札幌の初霜は10月25日、初雪は10月28日、根雪は12月6日です。そこから春までの長い期間、暖房も換気もない家では、水抜きを忘れた配管の凍結・破損、低温で相対湿度が上がりやすい室内、雪でふさがれた床下換気口、屋根雪によるすが漏りなどが重なり、押入れや北側の部屋、床下、天井裏にカビが広がっていくことがあります。しかも、誰も住んでいないために、異変に気づくのが春の訪問まで遅れがちです。
対策の基本は、根雪前の段取りと、月1回の定期的な確認です。秋のうちに水抜きの手順を確認し、換気口のまわりを片付け、屋根や排水口を点検しておくこと。冬のあいだは、においや結露の跡、天井のしみ、床下の状態、換気口の雪を、毎回同じ順番で確認し、写真で記録すること。道外にお住まいで訪問が難しい場合は、何を見てほしいかを具体的に伝えたうえで、親族や管理サービスに依頼することが大切です。
そして、売却・賃貸・解体のいずれかを考え始めたら、その前に一度カビの状態を調べておくことをおすすめします。調査の結果は、補修するかどうか、どの範囲を処置するか、買主や入居者にどう説明するかを判断するための材料になります。ご家族が離れて暮らしていても、報告書や写真を共有することで、同じ情報をもとに話し合えるようになります。
Q. 冬のあいだ一度も空き家に行けなかった場合、春に最初にすることは何ですか?
A. いきなり通水せず、まず水まわりや床に漏水の跡がないか、天井にしみがないかを確認してください。配管の破損が疑われる場合は、通水前に設備業者へ相談することをおすすめします。室内に入ったら窓を開けて換気し、カビ臭さが強い部屋や床下点検口の状態を確認しましょう。カビが広範囲に及んでいる場合は、無理に自分で掃除せず、専門業者にご相談ください。
Q. 売却する予定なら、カビの除去までしておいたほうがよいのでしょうか?
A. 一概には言えません。現状のまま説明して売るのか、除去してから売るのかは、カビの範囲や建物の状態、売却の条件によって変わります。まずは調査で状態を把握し、不動産会社とも相談しながら判断されるのがよいと考えています。
空き家の管理は、一度にすべてを完璧に行う必要はありません。水抜き、換気口の確保、月1回のにおいと水まわりの確認という基本を続けるだけでも、春に家を開けたときの状態は変わってきます。そのうえで、気になる兆候が見つかったときに早めに専門家へ相談することが、結果として建物を長持ちさせ、売却や賃貸の選択肢を広く残すことにつながります。空き家を「決めるまでの時間」を、家を守る時間として使っていただければと思います。
中央区のマンションの一室でも、南区や手稲区の山沿いの一戸建てでも、空き家のカビは「誰も見ていない時間」に進んでいきます。今年の冬を越す前に、そして次の一歩を決める前に、建物の状態を一度確かめてみてはいかがでしょうか。
カビバスターズ北海道では、空き家や相続した実家のカビについて、含水率測定や付着菌検査などの各種調査から、MIST工法®による除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案までをワンストップでご相談いただけます。札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応しておりますので、「冬の前に空き家の状態を確認したい」「売却や賃貸の前にカビを調べておきたい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。※菌検査は施工前に行う有料オプションです。
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カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
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