札幌市立学校のエアコン整備とカビ|令和9年夏の全校設置に向けた教室の湿気・結露管理
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。2026年の夏も札幌では暑い日が続き、教室の暑さ対策が保護者や学校関係者の大きな関心事になりました。札幌市の資料によると、市立学校・幼稚園の普通教室等では令和9年(2027年)夏までのエアコン使用開始を目標に、PFI方式による冷房設備の整備が進められています。熱中症対策として心強い一方で、当社がカビの現場を見てきた立場から気になるのが、これまで冷房設備のなかった校舎に「冷房→停止→冬季休止」という新しいサイクルが入ることです。冷房運転中の室内機の内部では空気中の水分が結露し、その水をきちんと排出・乾燥できないまま秋に停止すると、長い冬のあいだ湿った状態で放置されることになります。さらに冷媒配管まわりや天井裏では、冷たい配管の表面に結露が生じ、断熱材や天井材を湿らせることがあります。本記事では、札幌市立学校の教頭先生・事務職員の方、教育委員会の施設担当の方、PTAの皆さまに向けて、エアコン新設後に起こりやすい湿気・結露とカビの仕組み、秋の停止前・冬の休止中・春の再開前の管理、そしてPFIの維持管理と学校側で見ておきたい点を、実務目線で整理します。夏の冷房そのものより、夏以外の季節の扱い方が教室の空気を左右するというのが、本記事でお伝えしたい要点です。
この記事の結論 札幌市立学校では令和9年夏までのエアコン使用開始に向けPFI方式で整備が進んでいます。冷房・停止・冬季休止のサイクルで起きる室内機内部や配管・天井裏の結露とカビ、季節ごとの管理と学校側の確認点を解説します。
第1章|札幌市立学校のエアコン整備はいまどこまで進んでいるのか(2026年秋時点)
まず、2026年秋時点で公表されている整備の枠組みを確認しておきます。札幌市「市立学校・幼稚園の暑さ対策について」(2026年7月17日更新)によると、札幌市は幼稚園・小学校・中学校・中等教育学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校の普通教室等について、令和9年(2027年)夏までにエアコンの使用を開始することを目標としています。整備手法はPFI方式で、事業名は「札幌市学校施設冷房設備整備事業」です。PFIとは、民間事業者の資金やノウハウを活用して公共施設の整備や維持管理を行う手法のことで、設計・施工から一定期間の維持管理までを一括して民間に委ねる形が一般的です。また、体育館については令和15年度までに整備し、中学校を優先する方針が示されています。
つまり令和8年度(2026年度)は、校舎内で工事が進む学校、すでに一部で運転が始まった学校、これから工事を迎える学校が混在している時期にあたります。当社にも「エアコンが付いたあと、教室の維持管理で何に気をつければよいのか」「冬の間はどうしておけばよいのか」といったご相談が少しずつ寄せられるようになりました。これまで冷房設備を前提にしてこなかった学校にとって、夏以外の季節の扱いは、まだ手順が固まっていない分野だといえます。
もう一つ押さえておきたいのが、校舎そのものの状態です。札幌市の学校施設維持更新基本計画によると、札幌市の学校は300校以上あり、その多くが1970〜80年代に建てられ老朽化が進んでいます。築年数の経過した校舎では、天井裏の断熱が現在の基準と比べて薄かったり、既存の配管や梁が入り組んでいたりすることがあります。そこへ新たに室内機と冷媒配管、ドレン配管が加わるわけですから、どこに結露が生じやすいかは建物ごとに異なります。新設の設備が新しくても、それを受け止める建物が古いという組み合わせは、カビを考えるうえで見落とせない条件です。
さらに、札幌市の資料によると、市立小中学校は区体育館などとともに基幹避難所に位置づけられています。災害時に地域の方が長く過ごす可能性がある建物だという意味でも、教室や体育館の空気環境を健全に保つことは、学校だけでなく地域全体にかかわるテーマです。体育館の冷房整備は令和15年度までという中長期の計画ですから、今後十年近くをかけて、学校の空調とその維持管理は段階的に広がっていくことになります。
この移行期に学校側で意識しておきたいのは、「設備が付いたら終わり」ではなく「付いた年から管理が始まる」という考え方です。たとえば中央区の学校で先に運転が始まり、手稲区の学校では工事がこれから、というように、同じ市内でも状況は学校ごとに異なります。先に運用を始めた学校で気づいた点を、教頭会や事務職員の研修、教育委員会の施設担当との情報交換で共有していくことが、市全体の教室環境を整える近道になると当社は考えています。
項目 | 公表されている内容 | カビ対策の視点で意識したいこと |
対象 | 市立の幼稚園・小・中・中等教育・義務教育・高校・特別支援学校の普通教室等 | 学校種ごとに教室の使い方や長期休業の長さが異なる |
目標時期 | 令和9年(2027年)夏までに使用開始 | 令和8年度は工事中・運転開始・未着手が混在する移行期 |
整備手法 | PFI方式(札幌市学校施設冷房設備整備事業) | 維持管理の担い手と学校側の役割分担を確認しておく |
体育館 | 令和15年度までに整備、中学校を優先 | 避難所機能も踏まえ、長期的な湿気管理を視野に |
建物 | 300校以上、多くが1970〜80年代築 | 古い天井裏・断熱と新しい配管の取り合い部に注意 |
当社の見立てとしては、エアコンの設置そのものがカビの原因になるわけではありません。問題になりやすいのは、設備が生み出す「水」の扱いと、運転を止めたあとの「乾燥」の不足です。次章では、冷房運転と停止、冬季休止というサイクルの中で、具体的にどの部位で何が起きるのかを見ていきます。なお、ここで紹介する内容は当社の現場での傾向であり統計ではありません。個別の設備仕様や管理方法は、一律ではない点をあらかじめご了承ください。
第2章|「冷房→停止→冬季休止」のサイクルで起きる結露とカビ
エアコンの冷房運転は、室内の空気を冷たい熱交換器に通して温度を下げる仕組みです。熱交換器とは、冷媒と空気のあいだで熱をやり取りする金属のフィンの集まりのことです。冷やされた空気は含んでいた水分を保てなくなり、フィンの表面で水滴になります。これが冷房運転中の結露水で、室内機の下にあるドレンパン(結露水を受ける皿)に集められ、ドレン配管を通って屋外などへ排出されます。つまり冷房運転中の室内機の中は、常に濡れている状態だと考えてください。
運転を止めると、フィンやドレンパン、送風ファンの表面には水分が残ります。そこに教室内で舞ったほこりやチョークの粉、衣類の繊維などが付着すると、カビにとって水分と栄養がそろった環境になります。家庭用のエアコンであれば、夏が終わっても時々送風や暖房で使うことがありますが、学校の教室用エアコンは用途が冷房中心になりやすく、秋に止めたまま翌年の初夏まで使わない、という運用も考えられます。この「濡れたまま長く止まる」状態が、学校に新しく入るサイクルの特徴です。
室内機の外側でも結露は起こります。冷媒配管は運転中に冷たくなるため、周囲の空気が湿っていると配管の表面に水滴がつきます。通常は断熱材で覆われていますが、断熱材の継ぎ目にすき間があったり、壁や天井の貫通部で断熱が途切れていたりすると、そこだけ結露が起きやすくなります。天井裏を通る配管であれば、結露水が天井材や既存の断熱材に落ち、目に見えないところで湿った状態が続くことがあります。ドレン配管も、勾配(水が流れるための傾き)が不足していたり、途中で詰まったりすると、水が滞留して逆流や漏水につながります。
ここに北海道ならではの条件が重なります。北海道では暖房期間が長く、概ね10月から4月にかけて暖房を使います。冬のあいだ教室は暖房で暖められる一方、外気は氷点下になるため、室内外の温度差が大きくなります。天井裏や外壁に近い配管の貫通部は、室内側の暖かく湿った空気が入り込むと、冷えた部分で結露しやすい場所です。しかも豪雪期は窓を開けて換気しにくく、教室に児童生徒が集まると呼気による水蒸気も増えます。夏に濡れた設備と、冬に結露しやすい建物の条件が、一年の中で交互にやってくるわけです。
部位 | 起きやすいこと | 問題が表に出やすい時期 |
熱交換器(フィン) | 冷房停止後に水分とほこりが残る | 翌シーズンの運転再開時 |
ドレンパン | 水が残り、ぬめりや汚れがたまる | 夏の運転中〜停止直後 |
送風ファン | 湿った状態でほこりが付着する | 運転再開時の吹き出し |
ドレン配管 | 勾配不足・詰まりによる滞留や漏水 | 夏の運転中 |
冷媒配管の断熱材まわり | 断熱の切れ目で配管表面が結露 | 夏の運転中(湿度の高い日) |
天井裏・貫通部 | 夏の配管結露と冬の室内空気の侵入による結露 | 夏・冬の両方 |
当社の現場での傾向として、設備内部のカビは「使い始めた年」よりも「二年目、三年目の運転再開時」に気づかれることが多い印象があります。一年目は設備が新しく汚れも少ないため、多少湿っていても目立ちません。しかし停止と休止を繰り返すうちに、ほこりと水分が少しずつ蓄積していきます。令和9年夏に向けて全校で使用が始まれば、その後の数年間が管理の習慣を作る大切な時期になるといえるでしょう。
学校ならではの使い方も、設備内部の湿り方に影響します。授業のある時間帯だけ運転し、放課後や土日、夏季休業中は止まるため、一日のうちでも「冷やして濡らす」「止めて放置する」が細かく繰り返されます。給食の配膳で教室に湯気がこもる時間帯や、雨の日で窓を閉め切った日には、室内の湿気が多い状態で運転と停止が切り替わります。また、普通教室と使用頻度の低い特別教室とでは、同じ機種でも内部の状態がまったく違ってくることがあります。教室ごとの使われ方の差を把握しておくことが、次章以降で紹介する季節ごとの管理の前提になります。
なお、エアコンから出るにおいの原因や家庭での洗浄方法については、別の記事で扱っていますので本記事では詳しく触れません。ここでは、学校という施設に固有の「長期休止」と「建物との取り合い」に焦点を絞って話を進めます。家庭の一台と違い、学校では同じ時期に多数の設備が同じサイクルで止まり、また動き出します。一台ごとの小さな不具合でも、校舎全体で見れば見過ごせない量になるという点を、施設管理の立場から意識しておきたいところです。
第3章|札幌の季節で見る「夏以外」のリスクカレンダー
学校のエアコン管理を考えるとき、夏の冷房期間よりも重要になるのが、その前後の季節です。札幌の季節の移り変わりを、気象の目安と重ねて整理してみましょう。気象庁の平年値(札幌管区気象台、1991〜2020年)では、札幌の初霜は10月25日、初雪は10月28日、根雪の始まりは12月6日です。また、日本気象協会(tenki.jp)では、雪虫(トドノネオオワタムシ)を見かけてから10日から2週間ほどで平地に初雪が降る、という経験則が紹介されています。校庭で雪虫が舞い始めたら、冬支度の合図と考えるとわかりやすいかもしれません。季節の観察を扱う授業と結びつけて、子どもたちに結露や換気の話をするきっかけにもなります。
この時期の札幌は、日中はまだ暖かい日がある一方で、朝晩の冷え込みが急に強くなります。暖房を入れ始める前後の教室では、窓ガラスや外壁側の壁、天井の隅に結露が出やすくなります。エアコンの冷房はすでに使わなくなっている時期ですが、設備の内部には夏から残った水分とほこりがそのまま残っています。秋の停止前にしっかり乾燥させておかないと、湿った設備のまま寒い季節に入ることになります。つまり秋は、夏の後始末をする最後の機会だといえます。
冬は、暖房期間の中心です。前章でも触れたとおり、北海道の暖房期間は概ね10月から4月と長く、そのあいだ教室は暖房で暖められ、外気との温度差が大きい状態が続きます。豪雪期は窓を開けての換気がしにくく、教室に多くの人が集まれば室内の水蒸気も増えます。エアコンは休止していても、室内機は教室の空気に触れ続けていますし、天井裏の配管の貫通部には暖かい室内の空気が入り込むことがあります。冬のあいだは設備に触れないとしても、教室全体の結露の出方を観察しておくことが、翌年の対策につながります。
春は、雪解けとともに湿気が戻り、暖房を止めるタイミングで室内の温湿度が大きく変化する時期です。長く休止していたエアコンを初夏に動かす前に、内部の状態や排水の経路を確かめておく必要があります。いきなり暑い日に一斉運転を始めると、内部の汚れやドレンの詰まりに気づくのが遅れ、授業中に水漏れやにおいが出てから対応に追われることになりかねません。
時期 | 札幌の目安 | 教室・設備で起きやすいこと | 主な管理 |
初夏〜夏 | 冷房の使用期間 | 室内機内部の結露、配管表面の結露 | 排水の確認、フィルター清掃 |
秋(初霜・初雪の前) | 初霜10月25日・初雪10月28日(平年値) | 濡れた設備のまま気温が下がる | 停止前の送風乾燥、清掃・点検の依頼 |
冬(根雪以降) | 根雪12月6日(平年値)、暖房期間の中心 | 窓・外壁・天井隅の結露、天井裏への湿気侵入 | 休止中の状態維持、結露の観察と記録 |
春(暖房停止前後) | 雪解け、温湿度が変化しやすい | 休止明けの汚れ・詰まりに気づきにくい | 運転再開前の点検、試運転 |
こうして並べてみると、エアコンに手をかけるべきタイミングは「秋の停止前」と「春の運転再開前」の二つに集約されることがわかります。そして冬は、設備そのものよりも教室と天井裏の結露を観察する季節です。当社の現場での傾向ですが、札幌市内の豊平区や白石区で当社が関わってきた施設でも、秋の片付けを丁寧に行ったかどうかで、翌年の設備内部の状態に差が出やすいと感じています。ここでの傾向は統計ではありませんが、学校の年間行事予定に、この二つの節目を組み込んでおくことをおすすめします。
年間行事に組み込む際は、既存の行事と重ねると負担が増えにくくなります。たとえば秋の停止前の乾燥と点検は、2学期の中ごろに行う校内の環境整備や、暖房設備の試運転の時期と合わせて段取りを組むと、担当者の動きが一本化できます。春の点検は、年度替わりで担当者が交代しやすい時期と重なるため、前年度の記録を引き継ぎ資料に入れておくことが大切です。教頭先生や事務職員の方が異動しても、「どの教室で、いつ、何が起きたか」が残っていれば、翌年の担当者が同じ場所に注意を向けることができます。季節のカレンダーと人の引き継ぎを一緒に考えることが、学校のカビ対策を続けるうえでの現実的な工夫です。なお、季節の区切りは年によって前後しますので、平年値はあくまで目安として、その年の天気予報や校内の様子を見ながら柔軟に日程を調整してください。
第4章|秋の停止前の送風乾燥と、冬季休止中の管理
秋の停止前に行いたいのが、室内機内部の乾燥です。冷房の使用を終える時期に、送風運転や、機種によっては内部クリーン機能などを使って、フィンやドレンパンに残った水分を飛ばしておきます。内部クリーン機能とは、運転停止後に自動で送風などを行い、内部を乾かすための機能のことです。どの運転をどのくらい行うのが適切かは機種によって異なるため、メーカーの取扱説明書や、維持管理を担う事業者の案内に従ってください。学校の場合、教室ごとに担任の先生が個別に操作するよりも、日を決めて学校全体で一斉に行うほうが、実施漏れを防ぎやすくなります。
送風乾燥の前後には、フィルターのほこりを確認しておくと効果的です。フィルターが目詰まりしていると、風が通りにくく内部が乾きにくくなります。フィルター清掃を学校側で行うのか、維持管理の事業者が行うのかは、契約や運用ルールによって異なる可能性がありますので、事前に確認しておきましょう。また、脚立を使う高所作業になる場合は、安全面の配慮も欠かせません。児童生徒が在室していない時間帯に、複数人で作業するといった基本を守ることが大切です。
停止前には、ドレン配管の出口まわりも見ておきたいポイントです。屋外に排水している場合、落ち葉や泥でふさがれていないか、排水口の周囲に水たまりや苔が広がっていないかを確認します。札幌では冬に積雪があるため、雪に埋もれる位置にドレンの出口があると、春先まで状態を確認できません。秋のうちに周囲を片付け、位置を記録しておくと、春の点検がスムーズになります。
冬の休止期間中は、エアコン本体に何かをするというより、教室の結露と湿気の観察が中心になります。室内機の吹き出し口の周囲や、天井の配管の貫通部付近に、しみや変色が出ていないか。窓ぎわや外壁側の壁、掲示物の裏にカビが出ていないか。こうした点を、定期的な校内巡回の中で見ておくと、異変に早く気づけます。天井材にしみが出た場合は、夏の配管結露や漏水の跡である可能性も、冬の結露である可能性もあるため、原因を決めつけずに記録を残してください。
作業 | 時期 | 学校側で行いやすい確認 | 事業者・専門業者に相談したいこと |
送風乾燥・内部クリーン | 冷房の使用終了時 | 全教室で一斉に実施、実施日を記録 | 機種に合った運転方法 |
フィルターの確認 | 停止前 | 目視でほこりの量を確認 | 清掃の担当範囲、分解が必要な清掃 |
ドレン出口の確認 | 停止前(積雪前) | ふさがり・水たまりの有無、位置の記録 | 詰まりや勾配の不具合 |
天井・壁のしみの観察 | 冬の休止中 | 校内巡回で写真と日付を記録 | しみの原因調査、天井裏の確認 |
教室の結露の観察 | 暖房期間中 | 窓・外壁側・掲示物の裏を確認 | 換気や暖房運用の見直し |
冬の間に注意したいのは、休止中のエアコンに厚いカバーを掛けたり、吹き出し口の周りに掲示物を密着させたりすることです。ほこりよけのつもりでも、空気の流れがなくなることで、かえって湿気がこもる場合があります。カバーの使用可否も機種や設置状況によりますので、事業者に確認してから判断するのが安心です。また、冬休みなどで校舎を閉める期間は、暖房を止めることで教室内が冷え、再開時に結露が一気に出ることがあります。閉庁前後の教室の様子を見ておくと、建物側の弱点が見えてきます。特に、北側の教室や最上階の角部屋など、もともと冷えやすい場所は、休止中のエアコンまわりにも結露が出ていないかを重点的に見ておくと安心です。
観察を続けるには、先生方が気づいたことを気軽に伝えられる仕組みも役立ちます。たとえば職員室に「教室の結露・しみ・においの気づきメモ」を置き、教室名と日付、気づいた内容を一行書いてもらうだけでも、事務職員の方が全体を把握しやすくなります。担任の先生は毎日同じ教室にいるため、わずかな変化に最初に気づく立場にあります。一方で、日々の授業に追われる中で報告の手間が大きいと、気づきが埋もれてしまいます。書く項目を絞り、写真はスマートフォンで撮って共有フォルダに入れる程度にしておくと、負担をかけずに情報が集まります。こうして冬のあいだに集めた記録は、春の点検で「どこを重点的に見るか」を決める材料になります。記録は翌年度以降も同じ形式で続けると、年ごとの変化を比べやすくなります。
第5章|春の運転再開前点検と、教室・図書室の湿気管理
長い冬の休止を終えて、初夏に冷房を使い始める前には、運転再開前の点検を行っておきたいところです。暑くなってから一斉に運転を始めると、不具合が同時に表面化し、対応が追いつかなくなるおそれがあります。気温が上がりきる前の穏やかな時期に、試運転を兼ねて状態を確かめておくことで、授業への影響を抑えることができます。点検の日程は、維持管理を担う事業者の巡回予定とも早めにすり合わせておきましょう。試運転とは、本格的な使用の前に短時間運転して、動作や排水、においなどに異常がないかを確かめることです。
点検で確認したいのは、まずフィルターと吹き出し口の汚れです。吹き出し口のルーバー(風向きを変える羽根)の裏側に黒い点々が見える場合は、内部にもカビが広がっている可能性があります。次に、運転中の排水です。ドレン配管の出口から水が出ているか、室内機から水が垂れていないかを確認します。冬のあいだに雪や氷で出口がふさがれていた場合、春先に詰まりが残っていることもあります。さらに、運転を始めたときにかび臭さや普段と違うにおいがないかも、再開時の重要な手がかりです。異常を感じた場合は、学校側で分解や薬剤の使用を試みるのではなく、維持管理を担う事業者に連絡することが基本です。
教室の湿気管理という点では、エアコンの冷房には室内の湿気を減らす働きもあります。ただし、冷房の設定や運転と停止の切り替えによっては、室内の空気が冷やされたあとに換気で湿った外気が入り、窓や壁が冷えている場所で結露することもあります。換気は感染症対策の面でも欠かせませんから、冷房と換気のどちらかを選ぶのではなく、両立させる運用を考えることが大切です。教室の窓の開け方や換気扇の使い方は、学校ごとの設備や方針に沿って決めてください。
湿気に特に気を配りたいのが、図書室や資料室です。国立国会図書館では、書庫の環境について「人が作業できる温度」と「湿度65%以下」を目安とし、恒常的に65%を超えるとカビが発生する確率が高まるとしています。あわせて、温湿度を急に変化させないこと、書架の最下段と床のあいだを空けること、データロガー(温湿度を自動で記録する小型の機器)で監視することが紹介されています。学校図書館は書庫とは使い方が異なりますが、紙の資料を多く扱う場所として、この考え方は参考になります。エアコンの運転と停止で温湿度が大きく揺れないよう、図書室は運転のルールを別に考えるのも一つの方法です。
春の点検を効率よく進めるには、冬の記録を手元に置き、気になる教室から順に見ていくのが現実的です。すべての教室を同じ密度で見るのは負担が大きいため、冬にしみや結露が記録された教室、外壁に面した角部屋、最上階の教室、使用頻度の低かった特別教室などを優先するとよいでしょう。校舎の規模が大きい学校や、増築で棟が分かれている学校では、階ごと・棟ごとに担当を分けると作業が進めやすくなります。点検の結果は、異常がなかった教室も含めて「確認済み」と記録しておくと、夏に不具合が出たときに、いつの時点までは問題がなかったのかをたどることができます。
点検項目 | 確認のしかた | 異常があったときの対応 |
フィルター・吹き出し口 | 目視でほこりや黒い点々の有無 | 事業者に清掃・点検を依頼 |
排水(ドレン) | 試運転中に出口から水が出るか、室内機から垂れないか | 運転を止めて事業者に連絡 |
におい | 運転開始時にかび臭さがないか | 無理に使い続けず相談 |
天井・壁のしみ | 冬の記録と見比べて広がりを確認 | 天井裏を含めた原因調査を検討 |
図書室・資料室 | 温湿度の記録、書架下段と床の間隔 | 運転ルールや配架の見直し |
なお、カビに関連して体調の変化が気になる児童生徒や教職員がいる場合、原因を設備だけに結びつけて判断することはできません。健康面の不安は学校医や医療機関に相談していただき、建物や設備の側では、湿気と汚れの管理を着実に続けることが大切です。当社では、点検で気になる箇所が見つかった場合に、含水率測定や各種の菌検査(有料オプション)などで状態を客観的に確かめることをおすすめしています。数値や記録に基づいて判断することで、対策の優先順位をつけやすくなります。限られた予算と人手の中で、どこから手をつけるべきかを関係者で合意するためにも、感覚ではなく記録に基づく判断が役立ちます。
第6章|PFIの維持管理と、学校側で見ておきたいポイントの整理
札幌市の学校冷房はPFI方式で整備されるため、設置後の維持管理にも民間事業者が関わる形になると考えられます。ただし、どこまでが事業者の業務で、どこからが学校や教育委員会の役割なのかは、事業の契約や要求水準(発注者が求める業務の内容や水準を定めた文書)によって決まります。本記事では契約の具体的な中身を断定することはできませんので、学校側で確認しておきたい観点を整理するにとどめます。実際の範囲は、教育委員会の担当部署や事業者から示される資料で確認してください。
学校側でまず把握しておきたいのは、「誰に、何を、どう連絡するか」です。水漏れやにおい、天井のしみを見つけたとき、学校が直接事業者に連絡するのか、教育委員会を経由するのか。定期点検や清掃の予定は学校にどう知らされるのか。フィルター清掃のような日常的な作業を学校側で行う必要があるのか。こうした基本的な運用ルールが教職員に共有されていないと、異常に気づいても報告が遅れたり、善意で行った清掃が機器の扱いとして適切でなかったりすることがあります。
次に意識したいのが、エアコン本体と建物との境目です。室内機や冷媒配管、ドレン配管は整備事業の対象設備であっても、配管が通る天井裏や壁、天井材そのものは既存の校舎の一部です。配管の結露で天井材にしみが出た場合、原因が設備側にあるのか建物側にあるのかによって、対応の窓口が変わる可能性があります。札幌市のストックマネジメントの資料によると、市有建築物は約2,300施設・延べ約550万㎡にのぼり、1970〜80年代に建設されたものが多く築30年以上の割合が高いこと、2008年度から保全計画に基づく計画的な修繕を一元的に実施していることが示されています。学校の建物側の修繕はこうした保全の枠組みの中で進むため、設備と建物の両方にまたがる問題は、記録を添えて早めに共有することが大切です。
確認したい観点 | 学校側で把握しておきたいこと | 確認先の例 |
連絡の流れ | 異常を見つけたときの連絡先と手順 | 教育委員会の担当部署、事業者の案内 |
日常の手入れ | フィルター清掃などを学校で行うかどうか | 運用ルール・取扱説明の資料 |
定期点検・清掃 | 実施時期と学校側の立ち会いの要否 | 事業者の点検計画 |
季節の運転 | 停止前の送風乾燥、冬季休止、再開時の試運転の扱い | 事業者・教育委員会 |
設備と建物の境目 | 天井裏・天井材・壁のしみの対応窓口 | 教育委員会の施設担当 |
記録の保管 | 点検結果や学校側の観察記録の保管と引き継ぎ | 学校内の担当者間 |
体育館の冷房整備は令和15年度までという計画ですから、普通教室で数年間運用してきた経験は、体育館の管理を考えるときにも生かせます。体育館は天井が高く、避難所として使われる可能性もある空間です。普通教室で「どの季節に、どこで、何が起きたか」を記録として積み重ねておけば、将来の体育館の運用ルールを検討する際の貴重な資料になります。いまの段階から記録の形式をそろえておくことをおすすめします。
PTAの皆さまにとっては、こうした役割分担は見えにくい部分かもしれません。保護者として気づいたこと、たとえば参観日に教室でかび臭さを感じた、天井にしみがあった、といった情報は、学校に伝えていただくことで記録の一部になります。一方で、原因の特定や対応の判断は、設備と建物の管理者に委ねるのが基本です。学校、教育委員会、事業者、保護者がそれぞれの立場で気づきを共有することが、教室の空気を守ることにつながります。
当社のような調査・施工の専門業者が関わる場面としては、天井裏や壁の内部にカビが広がっている疑いがある場合や、設備と建物のどちらに原因があるのかを客観的に確かめたい場合などが考えられます。含水率測定で建材の湿り具合を数値で確かめたり、空気中や表面の菌の状態を検査で確認したりすることで、関係者が同じ情報をもとに話し合えるようになります。検査の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:オフィスビル・テナントの空調とカビ|建築物環境衛生管理基準の湿度40〜70%
まとめ|エアコンが付いた年から、教室の「乾かす管理」を始めましょう
札幌市の資料によると、札幌市立学校の普通教室等では令和9年(2027年)夏までのエアコン使用開始を目標に、PFI方式による整備が進められています。2026年秋のいまは、その移行期のただ中です。エアコンの設置は、夏の教室環境を大きく改善する取り組みです。そのうえで、カビの視点から大切なのは、設備が生み出す結露水をきちんと排出し、使わない季節に入る前に内部を乾かし、長い冬の休止を経て、春に状態を確かめてから再開する、という一年のサイクルを学校の習慣として根づかせることです。
本記事で整理したポイントを振り返ると、まず冷房運転中の室内機の内部は濡れた状態にあり、熱交換器やドレンパン、送風ファンに水分とほこりが残りやすいこと。次に、冷媒配管の断熱の切れ目や天井裏の貫通部では、夏の配管結露と冬の室内空気の侵入による結露の両方が起こりうること。そして北海道では暖房期間が概ね10月から4月と長く、豪雪期に窓を開けにくいこと、室内外の温度差が大きいことが、建物側の結露を招きやすい条件になっていることです。気象庁の平年値では札幌の初霜が10月25日、初雪が10月28日ですから、秋の停止前の乾燥と点検は、雪虫を見かけるころまでに済ませておくと段取りがつけやすいでしょう。
冬の休止中は、設備そのものよりも教室と天井の観察が中心になります。天井のしみ、窓ぎわや外壁側の結露、掲示物の裏のカビなどを、日付と写真とともに記録しておくことが、春の点検で重点を決める材料になります。春の運転再開前には、フィルターと吹き出し口、排水、におい、天井・壁のしみを確認し、異常があれば無理に使い続けず、維持管理を担う事業者に相談してください。図書室や資料室では、国立国会図書館が示す書庫の目安である湿度65%以下という考え方を参考に、温湿度の急な変化を避ける運用を検討するとよいでしょう。
PFIの維持管理については、契約や要求水準によって範囲が決まるため、学校側では連絡の流れ、日常の手入れの担当、定期点検の予定、季節の運転の扱い、設備と建物の境目、記録の保管といった観点で、教育委員会や事業者から示される内容を確認しておくことが大切です。役割分担がわかっていれば、異常に気づいたときに迷わず動けます。先に運用を始めた学校の経験を市内で共有していくことも、令和9年夏の全校設置を見据えた大切な備えになるでしょう。
また、エアコンの管理は教室の結露対策と切り離して考えないことも大切です。冷房の季節に設備が生んだ水分と、暖房の季節に建物が抱える結露は、同じ校舎の中で一年を通してつながっています。夏だけ、冬だけと区切らずに、季節ごとの節目に「乾かす」「観察する」「記録する」「確かめる」を積み重ねることが、学校の教室を健やかに保つ基本だと当社は考えています。
Q. エアコンの吹き出し口に黒い点が見えたら、学校で拭き取ってもよいですか?
A. 表面の軽い汚れであっても、薬剤の使用や分解は機器を傷めたり、カビを広げたりするおそれがあります。まずは運用ルールを確認し、維持管理を担う事業者や教育委員会の担当部署に相談することをおすすめします。内部まで広がっている可能性もあるため、見える部分だけで判断しないことが大切です。
Q. 天井にしみが出ましたが、エアコンが原因かどうかわかりません。どうすればよいですか?
A. 配管の結露や漏水、冬の結露、屋根や外壁からの雨水など、原因はいくつか考えられます。しみの位置と広がりを写真と日付で記録し、教育委員会の施設担当に共有してください。原因の切り分けには、含水率測定などで建材の湿り具合を確かめる方法も役立ちます。
カビバスターズ北海道では、学校をはじめとする公共施設や民間施設のカビについて、含水率測定や付着菌・落下菌・浮遊菌などの各種調査から、素材を傷めにくいMIST工法®による除去、カビが生えにくい環境づくりまでをワンストップでご提案しています。天井裏や壁内のカビが心配な場合や、設備と建物のどちらに原因があるのかを客観的に確かめたい場合も、現地の状況を拝見したうえで最適な方法を検討いたします。費用は現地状況により異なりますので、まずは調査のご相談からお受けしています。札幌市内はもちろん、旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応していますので、学校関係者の皆さま、教育委員会・施設管理のご担当者さまも、お気軽にご相談ください。
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