学校体育館は冬の避難所|札幌の基幹避難所で起きやすい結露・カビと備蓄品の守り方
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。2026年の秋を迎え、札幌でも朝晩の冷え込みが強まってきました。この時期になると、区役所の防災担当の方や学校の管理職の方、町内会で避難所運営委員を務めている方から「冬に避難所を開設したら、体育館の中はどうなるのか」「備蓄倉庫の毛布や段ボールが湿っぽい気がする」といったご相談をいただくことが増えてきます。札幌市の資料によると、市の基幹避難所には市立小中学校や区体育館などが指定されています。つまり、ふだん子どもたちが授業や部活動で使っている学校体育館が、災害時には地域の方が寝泊まりする生活の場になるということです。冬の体育館に大勢の方が滞在すると、人の呼気や暖房器具から出る水蒸気が一気に増え、冷えた天井や窓、床で結露が起きやすくなります。その水分がマットや毛布、段ボールベッドに移ると、数日のうちにカビ臭や黒い点が目立ち始めることもあります。本記事では、札幌の学校体育館を冬の避難所として使う場面を想定し、結露とカビが起きやすい場所、運営中の湿気対策、備蓄倉庫やステージ下の平時の管理、体育館エアコン整備で変わる点、そして撤収時の乾燥と点検の手順までを、施設管理の実務目線で整理します。
この記事の結論 札幌の基幹避難所となる学校体育館は、冬に多くの人が滞在すると呼気や暖房で結露が起きやすくなります。寝具のカビ、備蓄倉庫の湿気管理、体育館エアコン整備で変わる点、撤収時の乾燥・点検手順を実務目線で解説します。
第1章|札幌の基幹避難所としての学校体育館|冬の開設で何が変わるのか
札幌市の資料によると、市の基幹避難所は市立小中学校や区体育館などが中心です。地震や大雪、長時間の停電などが起きたとき、地域の方がまず身を寄せる場所として、学校の体育館が想定されているわけです。ふだんの体育館は、授業や部活動で使われたあとは無人になり、夜間は暖房も止まります。人がいる時間といない時間がはっきり分かれた、いわば「日中だけ使う大空間」として設計・運用されてきました。ところが避難所として開設されると、この前提が大きく変わります。昼も夜も多くの人が滞在し、寝具を床に敷き、暖房器具を連続して動かし、場合によっては食事の準備や湯沸かしも同じ空間の近くで行うことになります。
当社が施設の方からお話を伺っていて感じるのは、避難所の備えというと「寒さ」への意識は非常に高い一方で、「湿気」への意識はまだ高くないという点です。冬の札幌で寒さ対策が最優先になるのは当然ですし、低体温を防ぐことは命に直結します。ただ、寒さ対策として暖房を入れ、人が密集し、窓を閉め切るという状態は、そのまま室内の水蒸気を増やし、逃がしにくくする条件でもあります。寒さ対策と湿気対策は、実は同じ場面で同時に考えなければならないテーマなのです。
体育館で水蒸気が増える主な要因は、大きく分けて三つあります。一つ目は人の呼気や皮膚からの水分です。人は呼吸をするだけで水蒸気を出しており、滞在人数が多いほどその総量は増えます。二つ目は暖房器具です。灯油やガスを燃やす開放式のストーブは、燃焼にともなって水蒸気を室内に放出します。開放式とは、室内の空気を使って燃やし、排気もそのまま室内に出す方式のことです。三つ目は生活行為で、濡れた衣類や靴、雪を払いきれなかった上着、炊き出しの湯気などがこれにあたります。
項目 | 平常時の学校体育館 | 冬の避難所として開設した体育館 |
滞在時間 | 授業・部活動の時間帯が中心で夜間は無人 | 昼夜を通して人が滞在する |
暖房 | 使用時間帯のみ、または使わない日もある | 連続運転になりやすい |
床の使い方 | 運動用、寝具は置かない | マット・毛布・段ボールベッドを敷き詰める |
主な水蒸気の発生源 | 運動時の発汗程度 | 呼気、開放式暖房、濡れた衣類・靴、湯気 |
換気 | 使用後に窓や扉を開けやすい | 寒さと雪で窓を開けにくい |
もう一つ見落とされがちなのが、体育館の建物そのものの特徴です。体育館は天井が高く、屋根面や外壁の面積が大きい建物です。札幌市の学校施設維持更新基本計画では、市の学校は300校以上あり、その多くが1970〜80年代に建てられて老朽化が進んでいるとされています。建設された年代によっては、屋根や外壁の断熱が現在の建物ほど厚くない場合もあります。断熱とは、外の冷たさが室内側に伝わりにくくする性能のことで、これが弱い部分ほど内側の表面が冷え、結露が起きやすくなります。
つまり冬の避難所では、「水蒸気が増える」「逃げにくい」「冷たい面が多い」という三つの条件が重なります。これが体育館で結露が起きやすい基本的な構図です。結露そのものは物理現象であり、どの建物でも起こり得ます。問題は、その水分が寝具や段ボール、床材などに移り、乾かないまま時間が経つことです。カビは水分と栄養分と適度な温度がそろうと増えやすく、毛布の繊維や段ボールの紙、人の皮脂やほこりは、カビにとって栄養源になり得ます。
現場でよく目にするのが、避難所の訓練は秋や春の比較的過ごしやすい時期に行われ、冬の夜間に長時間滞在した場合の湿気の状態までは確認されていないケースです。訓練のときは問題がなかったのに、実際の冬の開設では窓際の毛布がしっとりしていた、という話は、施設の方からもよく伺います。これは当社の現場での傾向であり統計ではありませんが、「冬の夜に人が集まった状態」を具体的に想像しておくことが、備えの第一歩になると考えています。
避難所運営の手引きや訓練計画には、受付や名簿、物資の配布、トイレの確保など、優先すべき項目がたくさん並びます。その中に湿気とカビの項目を大きく割り込ませる必要はありません。ただ、「寝具をどこに置くか」「暖房器具をどこで使うか」「撤収時に何を乾かすか」という三点を、既存の手順に一行ずつ書き加えておくだけでも、開設後の状況は変わってきます。次章では、体育館の中で具体的にどこに結露が起きやすいのかを、札幌の冬の気象条件とあわせて見ていきます。
第2章|体育館結露はどこで起きる?札幌の冬の条件と天井・窓・床の要注意ポイント
まず札幌の冬の始まりを確認しておきます。気象庁の平年値(札幌管区気象台、1991〜2020年)では、札幌の初霜は10月25日、初雪は10月28日、根雪の始まりは12月6日です。根雪とは、積もった雪が春まで解けずに残る状態のことです。また日本気象協会のtenki.jpでは、雪虫(トドノネオオワタムシ)を見かけてから10日〜2週間ほどで平地に初雪が降る、という経験則が紹介されています。2026年も、雪虫が飛び始めたら「避難所の冬支度の点検時期」と考えておくと、準備のきっかけをつかみやすくなります。
北海道では暖房を使う期間が長く、概ね10月から4月ごろまで続きます。この間、屋外は冷え込み、室内は暖房で温められるため、室内外の温度差が大きくなります。温度差が大きいほど、建物の内側で冷えやすい部分と暖かい空気との差も大きくなり、結露が起きやすくなります。さらに豪雪期には、窓の外に雪が積もっていたり、吹雪で窓を開けられなかったりと、換気のために窓を開けること自体が難しくなります。本州の避難所の考え方をそのまま当てはめにくいのは、この点が大きいと当社では考えています。
では、体育館の中で結露が起きやすいのはどこでしょうか。一つ目は天井と屋根まわりです。暖かく湿った空気は上へ昇り、天井付近にたまります。屋根面は外気で冷やされているため、天井の裏側や鉄骨の梁、天井材の継ぎ目などで結露が起きることがあります。天井の結露は下から見えにくく、水滴が落ちてきて初めて気づくこともあります。「雨漏りかと思ったら結露だった」というご相談は、体育館や倉庫のような大空間でよく伺う内容です。
二つ目は窓とその周辺です。体育館の高窓や、アリーナ両側の窓は、壁の中でもっとも冷えやすい部分です。窓ガラスやサッシの枠に結露が付き、流れ落ちた水が窓台や壁の下部を濡らします。窓際に寝具を敷いた場合、壁とマットの間で空気が動かず、ここが湿気のたまり場になりやすい点に注意が必要です。三つ目は床です。体育館の床は、冷えた床下の空気の影響を受けやすく、特に1階の体育館や、床下の通気が十分でない建物では床面が冷たくなります。その上に寝具を直接敷くと、寝ている人の体温で温められた湿気が、冷たい床との境目で結露することがあります。
場所 | 結露が起きやすい理由 | 起きやすい症状 | 運営中の確認方法 |
天井・屋根まわり | 暖かく湿った空気が上昇し、外気で冷えた屋根面に触れる | 水滴の落下、天井材のしみ | 朝の時間帯に床の水滴跡や天井のしみを見る |
窓・サッシ | 壁の中でもっとも冷えやすい | ガラス・枠の結露、窓台の水たまり | 朝夕に窓台と壁の下部を触って確認 |
床と寝具の境目 | 冷たい床と体温で温まった寝具の間に湿気がこもる | マット裏・段ボール底の湿り | 1日1回、寝具の一部をめくって裏面を見る |
外壁沿い・隅 | 空気が動きにくく冷えやすい | 壁際の毛布の湿り、におい | 壁際の区画を重点的に見回る |
出入口付近 | 雪や濡れた靴が持ち込まれる | 床の濡れ、段ボールの変形 | 雪払い場所と靴置き場を分ける |
四つ目は外壁沿いと部屋の隅です。体育館の隅やステージの脇、壁沿いに物資を積み上げた場所は、空気が動きにくく、冷えやすい場所です。物資の段ボール箱が壁に接していると、その接触面が湿っていることがあります。五つ目は出入口付近です。冬の札幌では、外から入ってくる人の靴や上着に雪が付いており、それが解けて床を濡らします。受付の段ボール机や、入口近くに置いた物資が水を吸って変形することもあります。
札幌市内でも、地域によって冬の条件は少しずつ異なります。たとえば南区や手稲区の山側の地域では雪が多く、窓の外の雪で換気口がふさがれていないかも確認したいところです。東区や白石区のような平地の住宅街でも、学校の敷地内で体育館の周囲に除雪した雪が積み上げられ、低い位置の窓や換気口が埋まっていることがあります。換気口が雪で埋まると、換気扇を回しても空気が入れ替わりにくくなります。
結露の見回りは、専門の機器がなくても始められます。朝の時間帯に、窓台、壁の下部、寝具の裏面、天井からの水滴跡の四か所を目で見て手で触れるだけでも、状況の変化に気づきやすくなります。可能であれば、市販の温湿度計を体育館の中央と壁際、備蓄倉庫に置き、朝夕の数値を記録しておくと、あとで乾燥や点検の判断をするときの材料になります。次章では、こうした結露の水分が、マットや毛布、段ボールベッドにどのように移り、カビにつながっていくのかを見ていきます。
第3章|避難所カビはなぜ寝具から始まるのか|マット・毛布・段ボールベッドと冬の寒さ対策・湿気の両立
避難所のカビというと、壁や天井の黒い汚れを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし当社の現場での傾向として、避難所のような使い方をした空間で最初に問題になりやすいのは、壁よりも寝具や床に近い物品です。これは統計ではありませんが、人が長時間接し、湿気を吸いやすく、しかも床の冷たさの影響を受ける場所に置かれるためだと考えられます。マット、毛布、段ボールベッド、段ボールの間仕切りは、どれも避難生活に欠かせない物資である一方、湿気の影響を受けやすい素材でできています。
段ボールは紙でできているため、周囲の湿気を吸うと強度が下がり、表面にカビが生えやすくなります。段ボールベッドは床からの冷えを和らげる効果が期待され、寒い体育館ではとても役立つ物資です。ただ、床に直接置いた底面は、冷たい床との温度差で結露が起きやすく、しかも人が上に乗っているため裏面を確認する機会がほとんどありません。数日使い続けたあとで持ち上げてみると、底面がしっとりと柔らかくなっていた、という例も耳にします。
毛布は繊維のすき間に水分を含みやすく、一度湿るとなかなか乾きません。冬の体育館は室温が上がりにくいため、夜に吸った湿気が日中のうちに抜けきらないまま、また夜を迎えることになります。この繰り返しで、毛布の内部に湿気が蓄積していきます。マットについては、表面が樹脂で覆われたものは水を吸いにくい反面、裏面と床の間に水分がたまりやすいという特徴があります。ウレタンなどの中材が露出している部分や縫い目からは、湿気が内部に入り込むことがあります。
物資 | 湿気の影響の受け方 | 起きやすいトラブル | 運営中の工夫 |
段ボールベッド | 紙が湿気を吸い、底面は床の冷えで結露しやすい | 強度低下、底面の変色・カビ | 床との間に断熱シートやすのこを挟む、壁から離す |
段ボール間仕切り | 壁際や窓際で結露水を吸う | 下端のふやけ、黒い点 | 窓や外壁に直接触れさせない |
毛布 | 繊維が湿気を含み、冬は乾きにくい | しっとり感、におい | 日中に一部を広げて空気に当てる、交換用を確保 |
マット | 表面は吸水しにくいが裏面に水がたまる | 裏面の湿り、縫い目からの浸水 | 定期的に立てかけて裏面を乾かす |
紙製品(トイレットペーパー等) | 湿気を吸うと変形・劣化しやすい | 波打ち、におい移り | 寝る区画から離し、床から浮かせて保管 |
冬の避難所では、寒さ対策と湿気対策が対立するように見える場面が多くあります。窓を開ければ寒くなる、暖房を強めれば水蒸気が増える、寝具を重ねれば暖かいが乾きにくい、といった具合です。ここで大切なのは、どちらか一方を選ぶのではなく、「寒さを優先しながら、湿気が一か所にたまらないようにする」という考え方です。たとえば換気は、長時間窓を開け放すのではなく、短時間で空気を入れ替える方法を時間を決めて行うほうが、室温の低下を抑えやすくなります。
暖房器具の選び方と置き方も重要です。開放式のストーブは燃焼で水蒸気を出すため、使う場合は一酸化炭素への注意も含めて定期的な換気が欠かせません。体育館にもともと設置されている暖房設備がある場合は、その設備の運転方法や換気との組み合わせを、施設管理者と事前に確認しておくと安心です。寝具の配置は、外壁や窓から少し離し、壁との間に空気が通るすき間をつくるだけでも、壁際に湿気がこもりにくくなります。
床からの冷えと結露を減らすには、寝具を床に直接敷かず、断熱シートやすのこ、段ボールベッドなどで床から浮かせる方法が考えられます。ただし前述のとおり段ボールベッドの底面は湿りやすいので、床との間にもう一枚、水を通しにくいシートを挟むといった工夫が有効です。濡れた上着や靴は、居住区画に持ち込まず、入口付近に専用の置き場と乾燥スペースを設けることで、寝具への水分移動を減らせます。
健康面について、当社はカビの専門業者として施設の衛生環境を整えるお手伝いをしていますが、医療の専門家ではありません。カビのにおいや湿気が気になる環境で、せきや鼻の症状、体調の変化を感じる方がいる場合には、その原因を決めつけず、避難所の救護担当や医療機関に相談していただくようお願いしています。特に高齢の方や小さなお子さん、持病のある方がいる区画は、寝具の湿り具合をこまめに確認し、気になる場合は交換を優先していただくとよいと思います。
運営中の見回りでは、寝具を全部めくる必要はありません。区画ごとに一枚ずつ裏面を確認する、窓際と壁際の区画を重点的に見る、においの変化に気を配る、といった点検を運営委員の交代時の引き継ぎ項目に加えておくと、負担を増やさずに続けやすくなります。こうした運営中の工夫は、備蓄物資がもともと乾いた状態で保管されていることが前提になります。次章では、平時の備蓄倉庫やステージ下、器具庫の湿気管理を取り上げます。
第4章|備蓄倉庫カビを防ぐ平時の湿気管理|毛布・段ボール・紙製品・非常食の箱とステージ下・器具庫
避難所のカビ対策で、実はもっとも効果が期待できるのは平時の管理です。災害が起きてから備蓄倉庫を開けたら、毛布にカビ臭が移っていた、段ボールベッドの箱が波打っていた、という状況では、開設直後から物資の選別に追われることになります。当社がご相談を受ける中でも、「数年ぶりに倉庫を開けたらにおいがした」という内容は少なくありません。これは当社の現場での傾向であり統計ではありませんが、備蓄品は長期間動かさないという性質上、湿気の影響が静かに積み重なりやすいといえます。
学校の備蓄倉庫は、校舎の一角の空き教室、体育館のステージ下、器具庫の奥、敷地内の屋外倉庫など、さまざまな場所に設けられています。いずれも人の出入りが少なく、換気がされにくい場所です。特にステージ下は、床下に近い空間で空気が動きにくく、体育館の床下の冷えや湿気の影響を受けやすい場所です。器具庫は、マットや跳び箱など体育用具と一緒に物資が置かれていることがあり、授業で使って汗を吸った用具の湿気がこもる場合もあります。
保管環境の目安として参考になるのが、紙資料を長期保存する図書館の考え方です。国立国会図書館では、書庫の環境について「人が作業できる温度」と「湿度65%以下」を目安とし、湿度が恒常的に65%を超えるとカビ発生の確率が高まるとしています。あわせて、温湿度を急に変化させないこと、書架の最下段と床の間を空けること、データロガーで温湿度を監視することが挙げられています。データロガーとは、温度や湿度を自動で記録し続ける小型の計測器のことです。毛布や段ボール、紙製品が中心の備蓄倉庫にも、この考え方はそのまま応用しやすいと当社では考えています。
保管場所 | 湿気がこもりやすい理由 | 点検のポイント | 平時の対策例 |
ステージ下 | 床下に近く空気が動きにくい、床の冷えの影響 | 奥の壁際・床面のにおいと湿り | 床に直置きせず、すのこや棚で浮かせる |
器具庫 | 体育用具の湿気、扉を閉め切る時間が長い | マット類と物資の接触部 | 用具と物資の区画を分ける |
校舎内の空き教室 | 暖房が入らない期間が長い、窓際が冷える | 窓際の箱の変形、結露跡 | 窓や外壁から離して積む |
屋外倉庫 | 外気の影響を直接受け、温度差が大きい | 屋根・壁の結露、床の水たまり | 湿気を吸いやすい物資は屋内に置く |
平時の管理として、まず取り組みやすいのは「床から浮かせる」「壁から離す」「詰め込みすぎない」の三点です。段ボール箱を床に直接積むと、床面の冷えと湿気を底面が吸い込みます。すのこや樹脂パレット、棚を使って床との間にすき間をつくるだけで、底面の湿りは起きにくくなります。壁際にぴったり積むことも避け、壁との間に手が入る程度のすき間を空けると、空気が回りやすくなります。倉庫にすき間なく詰め込むと、奥の箱の状態が確認できなくなるため、点検用の通路を確保しておくことも大切です。
次に、温湿度の記録です。倉庫にデータロガーや温湿度計を置き、季節ごとに数値を確認することで、どの時期に湿度が上がりやすいかが見えてきます。札幌では、暖房を使い始める前の秋口や、雪解けが進む春先に、倉庫内の湿度が上がりやすいと感じる施設が多いようです。湿度が高い状態が続くようであれば、除湿機の設置や、定期的に扉を開けて空気を入れ替える日を決めるといった対策を検討します。
物資の種類ごとの注意点も押さえておきましょう。毛布は、圧縮袋や密閉袋に入れて保管すると外からの湿気は入りにくくなりますが、湿った状態で封をすると中で湿気が逃げられません。封入前によく乾いていることを確認することが前提です。段ボールベッドや間仕切りは、箱のまま長期保管されることが多く、外箱が湿気を吸うと中の製品にも影響します。トイレットペーパーなどの紙製品や、非常食が入った段ボール箱も同様で、外箱にカビが出ると中身が無事でも取り扱いに困ります。非常食の箱は、賞味期限の確認と入れ替えのタイミングで外箱の状態も一緒に見ると、点検の手間を増やさずに済みます。
点検の頻度は施設の体制によって異なりますが、少なくとも冬を迎える前の秋に一度、倉庫の扉を開けて、においと箱の状態、床と壁際の湿りを確認していただくことをおすすめします。前章で触れた雪虫の季節は、ちょうどよい目安になります。においが気になる、箱に黒い点がある、床が湿っているといった場合は、物資を移して乾燥させるとともに、倉庫そのものの湿気の原因を確認することが大切です。
第5章|体育館エアコン整備(令和15年度まで)で変わること・変わらないこと|札幌の学校施設の老朽化と湿気
札幌の学校施設では、ここ数年で空調の整備が大きく動いています。札幌市の「市立学校・幼稚園の暑さ対策について」(2026年7月17日更新)によると、市立の幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、義務教育学校、高校、特別支援学校の普通教室等では、令和9年(2027年)夏までにエアコンの使用開始を目標としており、PFI方式による札幌市学校施設冷房設備整備事業として進められています。PFIとは、民間の資金やノウハウを活用して公共施設の整備や維持管理を行う手法のことです。そして体育館については、令和15年度までに整備を進め、中学校を優先する方針が示されています。
体育館にエアコンが入ることは、夏の熱中症対策として大きな意味があります。同時に、避難所としての体育館の環境にも影響が考えられます。空調設備は、機種や運転方法によっては室内の空気を循環させたり、湿気を取り除いたりする働きが期待できます。これまで空気が動きにくかった天井付近や隅の空気がかき混ぜられれば、湿気が一か所にとどまりにくくなる可能性もあります。ただし、冬の避難所で暖房や除湿としてどこまで使えるかは、導入される設備の仕様や電源の確保、運用ルールによって異なります。整備後に避難所として使う場合の運転方法は、施設管理者と区の防災担当、設備の維持管理を担う事業者との間で、事前に確認しておくことをおすすめします。
観点 | 空調整備で変わる可能性があること | 空調整備後も変わらないこと |
夏の室内環境 | 暑さと湿気がこもりにくくなる | ステージ下や倉庫など空調の届かない場所の湿気 |
空気の流れ | 天井付近や隅の空気が循環しやすくなる | 物資を詰め込んだ場所の奥は空気が動きにくい |
冬の避難所運用 | 設備仕様によっては暖房・除湿に使える場合がある | 停電時や設備が使えない場合の備えは必要 |
新たな管理項目 | 空調機内部の清掃、ドレン(排水)まわりの点検 | 寝具・段ボール・紙製品の乾燥と点検 |
工事期間中 | 工事にともなう物資の移動・仮置き | 仮置き先の湿気管理と記録 |
一方で、空調が整備されても変わらない点もあります。まず、ステージ下や器具庫、備蓄倉庫など、体育館の中でも区切られた空間には、空調の風が届きにくいことが多いという点です。アリーナの空気が快適になっても、扉を閉め切った倉庫の中の湿気まで改善するとは限りません。また、災害時には停電が起きることも想定されるため、空調が使えない状態での寒さ対策と湿気対策は、引き続き準備しておく必要があります。
空調設備そのものにも、新しい管理項目が加わります。冷房運転では、空気を冷やす熱交換器で結露水が発生し、それをドレンと呼ばれる排水経路で外へ流します。ドレンとは、エアコン内部で生じた水を排出する管や受け皿のことです。この部分の清掃や排水の状態が不十分だと、機器の内部に湿気がたまり、カビの原因になることがあります。体育館は天井が高く、空調機の点検や清掃には足場や高所作業が必要になる場合もあるため、維持管理の計画に清掃の周期を組み込んでおくとよいでしょう。
工事の期間中にも注意が必要です。体育館の空調工事では、ステージ下や器具庫に保管していた物資を一時的に別の場所へ移すことがあります。仮置き先が暖房の入らない教室や屋外倉庫だった場合、その期間に湿気を吸ってしまうことも考えられます。移動の際には、物資の一覧と仮置き先、移動した日付を記録し、戻すときには状態を確認してから元の場所に戻すという手順を決めておくと安心です。
もう少し視野を広げると、札幌市のストックマネジメントの資料では、市有建築物は約2,300施設、延べ約550万㎡あり、1970〜80年代に建てられたものが多く、築30年以上の割合が高いとされています。市では2008年度から、保全計画に基づく計画的な修繕を一元的に実施しています。学校の体育館もこうした施設の一部であり、屋根や外壁の改修、断熱や窓の改修が行われる機会に、結露やカビの状況をあわせて確認しておくことは、避難所機能の維持という観点からも意味があると当社では考えています。
たとえば、改修前に天井や壁際、ステージ下にカビの跡や結露の跡があるなら、その位置を記録しておくことで、改修の設計や工事の際に配慮しやすくなります。施設の改修に関わる方からは、「どこが湿りやすいのかの記録がないので判断しにくい」というお声を伺うこともあります。平時の点検記録は、避難所運営だけでなく、施設の維持更新の判断材料としても役立つものです。
第6章|避難所撤収時の乾燥・点検手順|体育館と備蓄品を次の災害と授業再開に備えて戻す
避難所の運営が終わり、撤収の段階に入ると、関係者の皆さんは心身ともに疲れ切っていることが多いものです。一日も早く体育館を授業や部活動に戻したいという気持ちも強く、寝具や段ボールをまとめて倉庫に戻したくなります。しかし、冬の避難所で使った物資や体育館の床は、見た目以上に湿気を含んでいることがあります。湿ったまま倉庫に戻すと、次に開けたときにはカビが広がっていた、ということにもなりかねません。撤収の手順に「乾かす」「確かめる」「記録する」の工程を入れておくことが、次の災害への備えになります。
撤収時にまず行いたいのは、物資の仕分けです。使用した寝具や段ボールを、そのまま再利用できるもの、乾燥させてから再利用するもの、処分を検討するものの三つに分けます。明らかに濡れているもの、黒い点やにおいがあるもの、変形しているものは、ほかの物資と一緒に戻さないようにします。段ボール製品は、湿気で強度が落ちている場合があるため、再利用するかどうかは慎重に判断します。毛布は、洗濯や乾燥の手配ができるかどうかを区の担当課と相談し、可能であれば十分に乾かしてから保管します。
次に、体育館の床と壁際、ステージ下、器具庫の乾燥です。寝具を撤去したあとの床面は、寝具の下で湿気を受けていた可能性があります。体育館の木製の床は、水分を含むと反りや変色の原因になることもあります。撤去後は床を乾いた状態で清掃し、換気を十分に行って乾燥させます。窓際や壁の下部、出入口付近は、結露や雪解け水で濡れていた可能性が高いため、重点的に確認します。空調設備がある場合は、施設管理者の判断のもとで乾燥のために活用することも考えられます。
工程 | 主な作業 | 確認するポイント | 記録しておくこと |
仕分け | 再利用・乾燥後再利用・処分検討に分ける | 濡れ、におい、黒い点、変形 | 品目ごとの数量と状態 |
乾燥 | 寝具・マットを広げて乾かす、床を換気で乾燥 | 裏面・縫い目・底面の湿り | 乾燥させた日と方法 |
体育館の点検 | 床・窓際・壁の下部・天井のしみを確認 | 結露跡、変色、床材の反り | 気になる箇所の位置と写真 |
倉庫・ステージ下の点検 | 物資を戻す前に空の状態で確認 | 床と壁際の湿り、におい | 温湿度の数値 |
再保管 | 床から浮かせ壁から離して戻す | 点検用通路の確保 | 保管位置と次回点検日 |
備蓄倉庫やステージ下に物資を戻す前には、空の状態で倉庫の中を確認することをおすすめします。物資が入っている間は見えなかった床面や壁際に、湿りやカビの跡がないかを見ておくと、倉庫そのものに湿気の問題があるかどうかを判断しやすくなります。このときに温湿度計の数値も記録しておくと、次の点検との比較ができます。物資を戻す際は、第4章で触れたように、床から浮かせ、壁から離し、点検用の通路を確保します。
撤収時の点検で、天井にしみがある、壁の下部に黒い点が広がっている、ステージ下からカビ臭がするといった状況が見つかった場合は、表面を拭くだけで済ませず、原因を確認することが大切です。含水率測定で床材や壁の水分状態を確かめたり、落下菌検査(有料オプション)で空気中のカビの状況を把握したりすることで、授業再開に向けてどの範囲の対応が必要かを判断しやすくなります。含水率とは、材料にどのくらい水分が含まれているかを示す割合のことです。当社では、状況に応じてこうした調査を行い、施設の方と相談しながら対応の範囲を決めていきます。
学校体育館のように床材や設備を傷めたくない施設では、施工方法の選び方も重要です。当社のMIST工法®は、素材を傷めにくいことを重視したカビ除去の施工方法で、学校や公共施設のように建材や設備への影響に配慮が必要な場所でも検討しやすい方法の一つです。ただし効果の出方は、カビの状態や素材、環境によって異なるため、事前の調査にもとづいて施工の範囲や方法をご提案しています。
撤収の記録は、次の避難所運営の手引きを見直すときにも役立ちます。どの区画で寝具が湿りやすかったか、どの物資が傷みやすかったか、倉庫のどこに湿気の問題があったかを残しておくことで、次回の配置や備蓄の見直しにつなげられます。学校と区の担当課、町内会の運営委員の間で、この記録を共有しておくとよいでしょう。
まとめ|札幌の冬の避難所は「寒さ対策と湿気対策をセットで」備える
ここまで、札幌の学校体育館を冬の避難所として使う場面を想定して、結露とカビが起きやすい理由と、その備え方を見てきました。札幌市の資料にあるとおり、基幹避難所は市立小中学校や区体育館などが中心です。ふだんは日中だけ使われる体育館が、冬の災害時には昼夜を通して多くの方が過ごす生活の場になります。人の呼気、暖房器具、濡れた衣類や靴から水蒸気が増え、豪雪期で窓を開けにくく、室内外の温度差が大きい。この条件が重なることで、天井や窓、床と寝具の境目で結露が起きやすくなり、その水分がマットや毛布、段ボールベッドに移ってカビにつながることがあります。
対策の考え方は、大きく三つの段階に分けられます。一つ目は平時の備えです。備蓄倉庫やステージ下、器具庫では、物資を床から浮かせ、壁から離し、詰め込みすぎないことが基本になります。国立国会図書館が書庫の目安として示している「湿度65%以下」や、データロガーによる温湿度の監視といった考え方は、毛布や段ボール、紙製品、非常食の箱を保管する倉庫にも応用しやすいものです。気象庁の平年値では札幌の初雪は10月28日ごろですから、雪虫を見かける秋のうちに一度、倉庫の扉を開けて点検しておくと安心です。
二つ目は運営中の工夫です。寒さ対策を優先しながら、短時間の換気を時間を決めて行い、寝具を外壁や窓から離し、床から浮かせて敷きます。濡れた上着や靴は居住区画に持ち込まず、入口付近に乾燥スペースを設けます。見回りの際に寝具の裏面や窓台、壁の下部を確認する項目を、運営委員の引き継ぎに加えておくと続けやすくなります。三つ目は撤収時の乾燥と点検です。物資を仕分けし、乾かし、倉庫を空の状態で確認してから戻し、その結果を記録しておくことが、次の災害と授業再開への備えになります。
段階 | 主な担い手の例 | 取り組みのポイント |
平時(秋の点検) | 学校管理者、区の防災担当 | 床から浮かせる・壁から離す・温湿度を記録する |
運営中 | 避難所運営委員、町内会 | 短時間の換気、寝具の配置、裏面の見回り |
撤収時 | 学校管理者、区の担当課、運営委員 | 仕分け・乾燥・空の倉庫の点検・記録の共有 |
また、札幌市の「市立学校・幼稚園の暑さ対策について」では、体育館の空調整備を令和15年度までに進め、中学校を優先する方針が示されています。空調の整備で空気の流れや夏の環境が変わる可能性がある一方、ステージ下や倉庫の湿気、停電時の備え、空調機そのものの清掃といった管理項目は引き続き、あるいは新たに必要になります。2026年度の今のうちに、避難所として使うときの設備の運用を関係者で確認しておくことをおすすめします。
Q. 備蓄倉庫の毛布からカビ臭がします。まだ使えますか?
A. においの程度や、目に見えるカビの有無、素材によって判断が変わるため、一概にはいえません。まずはほかの物資から分けて保管し、洗濯や乾燥が可能かを区の担当課と相談してください。あわせて、倉庫そのものに湿気がこもっていないかを確認することが大切です。体調面で気になることがある場合は、医療機関にご相談ください。
Q. 体育館の天井にしみがあります。結露と雨漏りの見分け方はありますか?
A. 冬の暖房使用時や人が多い日のあとに増える場合は結露、雨や雪解けのあとに増える場合は雨漏りの可能性が考えられますが、両方が重なっていることもあります。しみの位置と出た時期を記録し、専門の業者による調査を検討してください。
カビバスターズ北海道では、学校や公共施設、避難所として使われる体育館や備蓄倉庫についても、含水率測定や落下菌検査などの各種調査から、素材を傷めにくいMIST工法®によるカビ除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案までをワンストップでご相談いただけます。施工内容や費用は現地の状況により異なりますので、まずは調査から丁寧にご提案いたします。札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応しております。冬を迎える前の点検や、避難所運営後の体育館の確認など、お気軽にご相談ください。※菌検査は施工前に行う有料オプションです。
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カビバスターズ北海道(MPソリューション株式会社)
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