北海道の住宅はなぜカビが生えやすい?高気密高断熱住宅と結露の関係
更新日:1 日前
こんにちは、カビバスターズ北海道です。北海道全域でカビの調査・除去を行っている当社には、毎年秋から春にかけて「新築して数年しか経っていないのに押し入れの奥にカビが出た」「北海道の家はカビが多いと聞いたけれど本当なのか」「高気密高断熱の家を建てたのに、なぜ結露するのか」といったご相談が数多く寄せられます。寒さの厳しい北海道では、住宅の性能はここ数十年で大きく進歩しました。一方で、暖かく密閉性の高い家になったことで、湿気の逃げ場やたまり方が変わり、目に見えない場所で結露とカビが進むケースも現場ではよく目にします。カビは気候だけで決まるものではなく、建物の造り方と暮らし方の組み合わせによって発生しやすさが大きく変わります。本記事では、北海道の住宅でカビが生えやすいと言われる理由を、高気密・高断熱住宅の仕組み、壁内結露のメカニズム、築年数や断熱工法による違い、新築住宅での相談事例という順に整理します。そのうえで、原因を感覚ではなく数値で確かめるための各種検査を紹介し、当社のシリーズ記事への道案内もまとめました。これから家を建てる方、リフォームを考えている方、すでにカビにお困りの方が、ご自宅の状態を考える手がかりにしていただければ幸いです。
この記事の結論 北海道の住宅でカビが生えやすい理由を、高気密高断熱住宅の仕組み、壁内結露のメカニズム、築年数・断熱工法別のリスク、新築住宅での相談事例から解説。原因を数値で確かめるための各種検査もあわせて紹介します。
第1章|北海道の住宅でカビ相談が多い理由|寒さ対策の裏にあるリスク
結論から言うと、北海道の住宅でカビ相談が多いのは「寒いから」だけではなく、「寒さを防ぐための工夫が、湿気をため込みやすい条件も同時につくっているから」です。北海道の家は、冬の厳しい寒さから暮らしを守るために、壁や天井に厚い断熱材を入れ、すき間を減らし、窓を二重・三重にするなど、本州の一般的な住宅と比べて寒さ対策が徹底されています。これは快適さと省エネの面で大きなメリットがある一方で、室内で発生した水蒸気が外へ逃げにくくなるという側面を持っています。
人が暮らしていれば、室内では毎日たくさんの水蒸気が生まれます。呼吸や汗、料理、入浴、洗濯物の室内干し、観葉植物、そして暖房器具の種類によっては燃焼そのものからも水蒸気が出ます。昔のすき間の多い家では、こうした水蒸気の一部は壁や窓のすき間から自然に外へ抜けていました。ところが、気密性を高めた住宅ではその「自然な逃げ道」がほとんどありません。そのため、計画換気が十分に働いていないと、室内の湿度が思った以上に高い状態で保たれてしまいます。
もう一つの理由は、冬の室内と屋外の温度差が非常に大きいことです。札幌や旭川では、真冬の屋外が氷点下になる日が続く一方、室内は20℃前後に暖房されている家が一般的です。暖かい空気は多くの水蒸気を含むことができ、それが冷たい面に触れると水滴に変わります。これが結露です。温度差が大きいほど、窓ガラスやサッシ、外壁に面した部屋の隅、押し入れの奥など、少しでも冷えやすい場所で結露が起きやすくなります。
現場でよく目にするのが、「窓の結露は毎朝拭いているのに、カビは家具の裏や押し入れの中から出てきた」というケースです。目に見える結露は対策しやすいのですが、実際にカビが育つのは、空気が動かず人の目が届きにくい場所であることが多いのです。北海道の住宅では、こうした「見えない結露」が長い暖房期間のあいだ少しずつ積み重なり、春先や梅雨どきになってようやくカビや臭いとして表に出てくることがあります。
寒さ対策の工夫 | 得られるメリット | 裏にあるカビのリスク |
厚い断熱材 | 室温が下がりにくく暖房効率が良い | 施工に欠損があると局所的に冷える部分ができ、そこで結露しやすい |
高い気密性 | すき間風が減り快適、熱が逃げにくい | 水蒸気の自然な逃げ道がなくなり、換気不足だと湿度がこもる |
二重窓・複層ガラス | 窓からの冷気や熱損失を抑える | サッシ枠や内窓と外窓のあいだなど、冷える部分に結露が集中しやすい |
長時間の連続暖房 | 家全体の温度ムラが小さくなる | 暖房器具の種類によっては水蒸気が増え、暖かい空気が壁内へ入り込む原因になる |
また、北海道の住宅には、冬のあいだ家全体をほぼ締め切った状態で過ごす期間が長いという特徴もあります。本州の温暖な地域であれば、冬でも天気の良い日に窓を開けて空気を入れ替えることができますが、北海道の真冬にそれを続けるのは現実的ではありません。その結果、室内の空気の入れ替えはほぼ換気設備だけに頼ることになり、換気が弱い部屋や空気がよどみやすい収納の中では、湿気が少しずつたまっていきます。本州ほどはっきりした梅雨がないと言われる北海道でも、夏場に湿った日が続く時期があり、冬のあいだに湿りを帯びた建材がその時期にカビを表面化させることもあります。「冬の結露」と「夏の湿気」がつながっている点も、北海道の住宅を考えるうえで知っておきたいポイントです。
このように、北海道の住宅は性能が高いからこそ、湿気の管理を住まい手と建物の仕組みの両方で意識する必要があります。当社では、ご相談を受けた際にまず「どこで」「いつから」「どのような条件で」カビが出ているのかをお聞きし、生活習慣と建物の構造の両面から原因を探ります。カビは表面を拭き取るだけでは再発を繰り返すことが多く、背景にある湿気の流れを理解することが対策の出発点になります。ご相談の内容を振り返ると、「カビが出たのは自分の掃除が足りなかったから」と責任を感じていらっしゃる方も少なくありませんが、住宅の構造や気候条件が関わっている以上、住まい手の努力だけで防ぎきれないケースもあります。次の章では、高気密・高断熱住宅の仕組みそのものと、カビが発生する条件について、もう少し詳しく見ていきます。
第2章|高気密・高断熱住宅の仕組みとカビが発生する条件
高気密・高断熱住宅とは、壁・床・天井・窓の断熱性能を高めて熱の出入りを抑え、さらに建物のすき間を小さくして空気の出入りを計画的にコントロールする住宅のことです。断熱性能はUA値という数値で示されます。UA値は「家全体から逃げる熱の量を外皮の面積で割った値」で、小さいほど熱が逃げにくい家という意味です。気密性能はC値で示され、こちらは「家全体のすき間の面積を床面積で割った値」で、やはり小さいほどすき間が少ない家を表します。
こうした住宅は、すき間を減らした代わりに、24時間換気システムで必要な空気の入れ替えを行う前提で設計されています。2003年の建築基準法改正により、シックハウス対策として住宅には原則として機械換気設備の設置が求められるようになりました。つまり、高気密住宅は「換気が計画どおりに働くこと」を前提に成り立っている建物です。給気口を閉じたままにしていたり、フィルターが目詰まりしていたり、寒さを理由に換気を止めていたりすると、湿気の排出が追いつかなくなり、カビが生えやすい環境に近づいてしまいます。
では、カビはどのような条件で生えるのでしょうか。一般にカビの発生には「温度」「湿度」「栄養」「時間」がそろうことが必要だと言われます。多くのカビは人が快適に感じる20〜30℃前後でよく育ち、湿度がおおむね70%を超えるような状態が続くと活発になりやすいとされています。栄養は、ホコリや皮脂、石こうボードの紙、木材、壁紙の糊など住宅の中にいくらでもあります。そして、その条件が数日から数週間続くことで、目に見えるカビへと育っていきます。
ここで北海道ならではの事情が大きく関わってきます。まず、暖房期間の長さです。北海道では概ね10月から4月ごろまで暖房を使う家庭が多く、半年以上にわたって室内が暖かい状態に保たれます。暖かい室内はカビにとっても過ごしやすい温度であり、そこに水蒸気が加われば条件がそろいやすくなります。次に、豪雪期は窓を開けにくいことです。雪が積もり、外気が氷点下になる時期には、窓を開けて換気をすること自体が現実的ではありません。換気を機械に頼る割合が高くなるため、換気システムの不調がそのままカビのリスクにつながります。
さらに、室内外の温度差の大きさも見逃せません。室温20℃・湿度60%の空気は、表面温度がおよそ12℃を下回る場所に触れると結露し始めます。この「結露が始まる温度」を露点温度と呼びます。外気が氷点下になる北海道では、窓まわりや外壁に面した部屋の隅、北側の押し入れなどが露点温度を下回りやすく、そこが結露とカビの発生源になります。
カビの発生条件 | 一般的な目安 | 北海道の住宅で重なりやすい状況 |
温度 | 20〜30℃前後で育ちやすい | 暖房期間が長く、半年以上室温が高めに保たれる |
湿度 | おおむね70%超の状態が続くと活発 | 窓を開けにくく、部屋干しや暖房器具で水蒸気が増えやすい |
栄養 | ホコリ・木材・紙・糊など | 家具の裏や押し入れなど掃除が行き届かない場所に蓄積 |
時間 | 条件が数日〜数週間続く | 冬のあいだ同じ場所で結露が繰り返され、乾く機会が少ない |
つまり、高気密・高断熱住宅そのものがカビを生むわけではなく、「換気の不具合」「局所的な冷え」「水蒸気の過剰な発生」のいずれかが加わったときに、北海道の気候条件と組み合わさってカビが発生しやすくなるのです。当社の現場での傾向としても、性能の高い住宅ほど、原因が一か所ではなく複数の小さな要因の重なりであることが多いと感じます。なお、これは当社の現場での傾向であり統計ではありません。言い換えると、同じ性能の家でも、換気の使い方や家具の置き方、室内干しの量などによって、カビが出る家と出ない家に分かれるということです。建物の性能と暮らし方の両方を見ることが、原因を探るうえでの基本になります。
換気についてもう少し補足すると、24時間換気には大きく分けて、給気と排気の両方を機械で行う第1種換気と、排気だけを機械で行い給気は給気口から自然に取り入れる第3種換気があります。北海道の住宅では、冷たい外気をそのまま取り入れると寒く感じるため、熱交換型の第1種換気を採用する家も増えています。熱交換型とは、排気する空気の熱を給気側に移し、室温を下げにくくする仕組みのことです。どの方式であっても、給気と排気のバランスが崩れると、特定の部屋だけ空気がよどんだり、壁のすき間から湿った空気が出入りしたりする原因になります。次章では、特に厄介な「壁の中の結露」について解説します。
第3章|壁内結露が起きるメカニズム(室内外の温度差・湿気の逃げ場)
壁内結露とは、壁の表面ではなく、壁の内部、つまり断熱材や柱、下地材のあたりで起きる結露のことです。専門的には内部結露とも呼ばれます。窓ガラスの結露のように目で見えないため気づきにくく、長いあいだ放置されやすいのが特徴です。北海道の住宅で「壁紙の裏が黒くなっていた」「床下や壁の中からカビ臭がする」といったご相談の背景には、この壁内結露が関係していることが少なくありません。
壁内結露が起きる仕組みは、次のように整理できます。冬の室内は暖かく、水蒸気を多く含んでいます。水蒸気は、湿度の高いほうから低いほうへ、また暖かいほうから冷たいほうへと移動しようとする性質があります。そのため、室内の水蒸気は壁のわずかなすき間やコンセントボックスまわり、配管の貫通部などから壁の内部へ入り込みます。壁の中は外側に近づくほど温度が下がるため、入り込んだ水蒸気はどこかで露点温度を下回り、水滴に変わります。これが壁内結露です。
これを防ぐために、北海道の住宅では室内側に防湿層を設けるのが一般的です。防湿層とは、ポリエチレンシートなどで水蒸気が壁の中へ入り込むのを防ぐ層のことです。さらに外側には通気層を設け、万が一壁の中に入った湿気を外へ逃がす仕組みがとられます。通気層とは、外壁材と断熱材のあいだに設けたすき間で、湿気を含んだ空気を外へ排出する通り道のことです。つまり「室内側で止めて、外側で逃がす」という考え方が、壁内結露対策の基本になっています。
問題は、この防湿層や通気層が設計どおりに機能していない場合です。防湿シートの継ぎ目の処理が不十分だったり、リフォームでコンセントや配管を増やした際にシートに穴が開いたままになっていたりすると、そこから水蒸気が入り込みます。外側の通気層が雪や施工上の理由でふさがれていると、湿気の逃げ場がなくなります。北海道の長い暖房期間のあいだ、こうした小さな欠陥から少しずつ湿気が入り続けると、断熱材や木材が湿った状態のまま春を迎えることになります。
室内外の温度差も壁内結露の大きな要因です。旭川や帯広のように冬の冷え込みが厳しい地域では、外壁側の下地材や断熱材の外側が長期間低温にさらされます。温度差が大きいほど壁の中の温度の下がり方は急になり、露点温度を下回る位置が室内側へ近づくため、結露が起きる範囲も広がりやすくなります。加えて、豪雪期に窓を開けにくいことで室内の湿度が高止まりすると、壁の中へ向かう水蒸気の量そのものが増えてしまいます。
比較項目 | 表面結露 | 壁内結露(内部結露) |
発生場所 | 窓ガラス・サッシ・壁の表面など | 断熱材・柱・下地材など壁の内部 |
気づきやすさ | 目で見えるので気づきやすい | 見えないため発見が遅れやすい |
主な原因 | 室内の湿度が高く、表面温度が低い | 防湿層の欠損や通気層の不具合、室内外の温度差 |
進行したときの影響 | 窓まわりのパッキンやクロスにカビ | 木材の劣化、断熱性能の低下、壁内部のカビ |
確認の方法 | 目視・拭き取り | 含水率測定・ファイバースコープ調査など |
また、壁内結露は壁だけで起きるものではありません。天井裏や屋根裏、床下といった場所でも、同じ仕組みで結露が起きることがあります。たとえば、暖かく湿った空気が天井の照明器具まわりや点検口のすき間から天井裏に上がり、冷えた屋根の下地で結露する現象は、北海道の住宅で注意したい点の一つです。冬のあいだに天井裏で凍った霜が、春先に一気に解けて天井にシミをつくるというケースも見られます。見えない場所の結露は、季節が変わってから症状が出ることがあるため、原因の特定には時期のずれも考慮する必要があります。
壁内結露でやっかいなのは、表面に症状が出たときにはすでに内部で広がっていることがある点です。当社では、壁紙の浮きやシミ、カビ臭、特定の部屋だけ湿っぽいといったサインがある場合、表面だけで判断せず、壁の内部の水分量や状態を調べることをおすすめしています。壁の中が乾いているのか湿っているのかによって、必要な対策は大きく変わるためです。特に、壁の一部だけ触ると冷たい、冬になると特定の壁紙だけが波打つ、といった変化は見逃さないようにしてください。次章では、築年数や断熱工法によってこうしたリスクがどう異なるのかを見ていきます。
第4章|築年数・断熱工法別に見るリスクの違い
北海道の住宅とひと口に言っても、建てられた時期や断熱の方法によって、カビが出やすい場所や原因はかなり異なります。結論としては、古い住宅ほど「表面の冷えによる結露」が、新しい住宅ほど「換気や施工の小さな不具合による湿気のこもり」が問題になりやすい傾向があります。ここでは、あくまで目安として築年数と断熱工法ごとの特徴を整理します。実際の状態は一軒ごとに異なるため、当てはまるかどうかは調査で確かめることが大切です。
比較的古い住宅では、断熱材が薄かったり、施工時期によっては壁の中に防湿層が設けられていなかったりすることがあります。また、床下や壁の中を冷たい空気が通り抜ける構造になっている場合もあります。こうした住宅は室内の表面温度が下がりやすく、外壁に面した部屋の隅や北側の押し入れ、窓まわりで表面結露が起きやすくなります。すき間が多い分、換気量自体は確保されやすいものの、冷えた面で繰り返し結露が起き、そこにカビが定着するケースが多く見られます。
断熱と気密の考え方が広まり始めた時期の住宅では、断熱材はしっかり入っていても、気流止めが不十分な場合があります。気流止めとは、床下や天井裏から壁の中へ空気が流れ込まないようにふさぐ部材のことです。これが欠けていると、壁の中を空気が通り抜けて断熱材の効きが落ちるうえ、湿った空気が壁内の冷たい部分に運ばれて結露の原因になります。リフォームの際に壁をはがして初めて、内部の黒ずみに気づくこともあります。
比較的新しい高気密・高断熱住宅では、建物の性能は高い一方で、24時間換気が計画どおりに働いているかどうかがカビのリスクを大きく左右します。給気口の閉鎖やフィルターの目詰まり、ダクトの不具合、住まい手が寒さや音を理由に換気を止めてしまうことなどが重なると、湿気が室内にこもります。また、家全体が暖かいぶん、わずかな断熱欠損がある場所は相対的に冷えやすく、そこだけにカビが集中するという現れ方をすることがあります。
断熱工法による違いもあります。柱と柱のあいだに断熱材を詰める充填断熱は、北海道の木造住宅で広く採用されている方法で、室内側の防湿層の施工精度が重要になります。建物の外側を断熱材で包む外張り断熱は、柱などの構造材が冷えにくい一方、断熱材の継ぎ目や窓まわりの処理が重要です。充填断熱と外張り断熱を組み合わせる付加断熱は、北海道の高性能住宅で見られる方法で、性能が高い分、各層の湿気の流れを設計どおりに保つことが求められます。
住宅のタイプ(目安) | 主な特徴 | カビが出やすい場所・原因 |
比較的古い住宅 | 断熱材が薄い、防湿層がない場合がある、すき間が多い | 北側の部屋の隅・押し入れ・窓まわりの表面結露 |
断熱・気密の移行期の住宅 | 断熱材はあるが気流止めが不十分な場合がある | 壁の内部や床下への湿った空気の流入による内部結露 |
比較的新しい高気密高断熱住宅 | 24時間換気前提、すき間が少ない | 換気不良による湿気のこもり、断熱欠損部への局所的な結露 |
リフォーム済み住宅 | 部分的に断熱・内装を更新 | 新旧の取り合い部分や、配線・配管の貫通部まわり |
当社の現場での傾向として、リフォームで断熱窓や内窓を入れて部屋が暖かくなった結果、それまで結露していなかった壁の隅や家具の裏に結露が移ったというケースもあります。これは統計ではありませんが、住まいの一部だけ性能を上げると湿気の行き場が変わることがある、という点は覚えておきたいポイントです。窓の結露が減ったからといって安心せず、リフォーム後の最初の冬は、家具の裏や収納の中、外壁側の部屋の隅などをときどき確認していただくと、早い段階で変化に気づきやすくなります。
また、同じ築年数・同じ工法の住宅でも、立地や間取り、暮らし方によってカビのリスクは変わります。周囲を建物に囲まれて日当たりの悪い北側の部屋、雪が外壁際に長く積もる面、浴室や洗面所に隣接した収納などは、どの年代の住宅でも注意が必要な場所です。反対に、古い住宅でも換気や暖房の使い方を工夫することで、カビの発生をかなり抑えられているお宅もあります。築年数や工法は「リスクの傾向を知るための目安」として捉え、実際の対策はお住まいの状態を確かめたうえで考えることをおすすめします。リフォームや住み替えを検討している方は、工事の前に一度、壁や床下の状態を確認しておくと、見えないカビを新しい内装で覆ってしまうことを避けやすくなります。
第5章|新築でも起こりうるカビ相談の実例
「新築なのにカビが出るのはおかしいのでは」と感じる方は多いと思います。しかし、実際には築浅の住宅からのご相談も珍しくありません。新築時の建材に含まれる水分が抜けきらないことによる、いわゆる初期含水も原因の一つですが、それだけではありません。ここでは、当社が北海道内で対応してきたご相談の中から、初期含水以外の要因が中心だった事例を、個人が特定されないよう内容を一部変えてご紹介します。いずれも当社の現場での傾向であり、統計ではありません。
一つ目は、ウォークインクローゼットの奥の壁一面に白っぽいカビが出た事例です。調べてみると、寝室の給気口が冬の寒さを理由に閉じられており、さらに換気本体のフィルターが目詰まりしていました。空気の入れ替えが少ないクローゼットの中は湿度が高止まりし、衣類やホコリを栄養にしてカビが広がっていました。24時間換気は「動いている」ことと「計画どおりの量が流れている」ことが別問題である、という典型例です。
二つ目は、リビングの外壁側に置いた大型の本棚の裏側だけが黒くなっていた事例です。家具を壁にぴったりつけて置くと、その部分は暖房の暖かい空気が届かず、壁の表面温度が下がります。そこへ室内の湿った空気がゆっくり入り込み、冬のあいだ結露が続いていました。建物の性能ではなく、家具の配置が原因をつくった例で、家具と壁のあいだに数センチのすき間を空けるだけでも状況が変わることがあります。
三つ目は、2階の天井の隅にだけ点状のカビが出た事例です。天井裏を確認すると、その部分だけ断熱材がずれて薄くなっており、天井の表面が周囲より冷えていました。家全体が暖かく湿度も極端に高くはなかったのですが、冷えた一点に結露が集中していました。高性能な住宅ほど、わずかな断熱欠損が目立つ形で現れることがあります。
四つ目は、洗面脱衣室と隣の部屋の壁にカビとカビ臭が出た事例です。冬場の部屋干しを脱衣室でまとめて行っていたうえ、浴室の換気扇を入浴後すぐに止める習慣がありました。水蒸気の発生量が換気能力を上回り、壁紙の裏にまで湿気が回っていました。生活のしかたと換気の使い方の組み合わせが原因となった例です。
事例 | 主な原因 | 調査で確認したこと |
クローゼット奥の壁 | 給気口の閉鎖・フィルター目詰まり | 換気量の不足と、湿度・浮遊菌の状態 |
本棚の裏側 | 家具の密着による壁面の低温化 | 壁の含水率と付着しているカビの種類 |
2階天井の隅 | 天井断熱材のずれによる局所的な冷え | 天井裏の断熱状態と天井材の含水率 |
脱衣室と隣室の壁 | 部屋干しと換気扇の早期停止 | 壁の内部の湿り具合と室内の落下菌 |
Q. 新築のカビはすべて施工不良が原因なのでしょうか?
A. 一概には言えません。施工上の不具合が関わる場合もありますが、換気の使い方や家具の配置、室内干しなど暮らし方が影響しているケースも多くあります。原因を決めつけず、調査で一つずつ確かめることが解決への近道です。
このように、築浅の住宅のカビは原因が一つとは限りません。実際には、ここで挙げた要因が二つ三つと重なっていることも多く、一つの原因を取り除いただけでは改善しきれない場合もあります。だからこそ、調査の段階で考えられる要因を幅広く確認しておくことが大切です。なお、建材の乾燥と初期含水については「新築1年目に出るカビの正体|高気密高断熱住宅の「初期含水」と乾燥期間」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
五つ目として、床下収納から土っぽいカビ臭がすると相談を受けた事例もあります。床下を確認すると、基礎の一部にすき間があり、春の雪解け水が回り込んで床下の湿度が高い状態が続いていました。北海道では雪解けの時期に建物の周囲へ大量の水が集まるため、基礎まわりの排水や勾配も湿気の原因になることがあります。室内だけを見ていてもわからない原因は、建物の外まわりと床下をあわせて確認することで見えてきます。
これらの事例に共通するのは、「高気密高断熱だから安心」「新築だから大丈夫」とは言い切れないという点です。どれだけ性能の高い住宅でも、換気が十分に働いていなかったり、局所的な冷えがあったり、水蒸気の発生が多すぎたりすれば、カビの条件はそろってしまいます。反対に言えば、原因を正しく把握できれば、多くの場合は住まい方の見直しや部分的な補修、適切な除去と環境改善によって、再発のリスクを下げることが期待できます。
第6章|原因を正しく知るための4つの検査(含水率測定・付着菌検査・落下菌検査・浮遊菌検査)
ここまで見てきたように、北海道の住宅のカビは、換気、断熱、温度差、暮らし方といった複数の要因が重なって発生します。だからこそ、見た目や経験だけで原因を決めつけるのではなく、検査によって数値で確かめることが重要です。当社では、状況に応じて複数の検査を組み合わせ、「どこが湿っているのか」「どんなカビがいるのか」「空気中にどれくらい広がっているのか」を順を追って確認しています。
最初の手がかりになるのが含水率測定です。含水率とは、木材や石こうボードなどの建材にどれくらい水分が含まれているかを示す割合のことです。表面が乾いて見えても内部が湿っていることがあり、壁内結露が疑われる場合には特に重要な検査です。次に付着菌検査(有料オプション)では、壁や家具の表面についているカビを採取し、培養して種類や量を調べます。見えているシミがカビなのか汚れなのかを判断する材料にもなります。
落下菌検査は、一定時間シャーレを置いて空気中から落ちてくるカビを培養する検査で、部屋ごとの状態の比較や、空間全体の現状把握に役立ちます。浮遊菌検査は、専用の機器で一定量の空気を吸引し、空気中に漂うカビの量を調べる検査です。換気がうまく働いているかどうかを考える材料にもなります。さらに必要に応じて、カビの種類を詳しく特定する同定検査を行うこともあります。
壁や床下の内部を調べたい場合には、ファイバースコープ調査が有効です。これは、小さな穴から細いカメラを差し込み、壁を大きく壊さずに内部の様子を確認する方法です。また、24時間換気が計画どおりに働いているかを確かめるには、風量計を使った負圧検査で、給気と排気のバランスを数値で把握します。建物の状態と空気の流れの両方を確かめることで、再発しにくい対策を考えることができます。
検査名 | わかること | こんなときに |
含水率測定 | 建材に含まれる水分の割合 | 壁内結露や漏水が疑われるとき |
付着菌検査 | 表面についたカビの種類と量 | 見えているシミの正体を知りたいとき |
落下菌検査 | 空気中から落ちてくるカビの量 | 部屋ごとの比較や現状の確認 |
浮遊菌検査 | 一定量の空気中に漂うカビの量 | 室内の空気環境や換気の効果を確かめたいとき |
同定検査 | カビの種類の詳しい特定 | 原因や対策をより詳しく検討したいとき |
ファイバースコープ調査 | 壁内・床下・天井裏の目視確認 | 壁を壊さず内部を確認したいとき |
負圧検査 | 給気と排気のバランス | 換気不良が疑われるとき |
検査を受けるタイミングとしては、カビが目に見えている場合はもちろん、カビ臭がする、特定の部屋だけ湿っぽい、毎年同じ時期に結露がひどいといったサインがある場合も目安になります。また、中古住宅の購入前やリフォーム前、カビ除去を依頼する前に状態を確かめたい場合にも、検査の結果が判断材料になります。当社では、ご相談内容をお聞きしたうえで必要な検査を選び、結果をわかりやすくご説明することを心がけています。すべての検査を毎回行うわけではなく、状況に合わせて組み合わせを考えますので、まずは気になっている症状をお聞かせください。
検査の結果は、カビを除去したあとの再発防止にも役立ちます。施工前に含水率や菌の量を数値で把握しておくことで、原因と範囲に合った対策を選びやすくなるためです。「きれいになったように見える」だけでなく、数値で変化を確かめられることは、住まい手にとっての安心材料にもなります。
それぞれの検査については、以下のシリーズ記事で詳しく解説しています。気になる検査やテーマからお読みください。
関連記事:ファイバースコープ調査とは?壁を壊さず壁内・床下のカビを調べる方法
関連記事:負圧検査とは?風量計で24時間換気のバランスを数値化する方法
関連記事:二重窓・内窓の結露はなぜ起きる?北海道の窓まわりのカビ対策
関連記事:FF式暖房・灯油ストーブと結露・カビの関係|北海道の冬の暖房と湿度
まとめ|北海道の住宅とカビは切り離せない、だからこそ数値で管理する
北海道の住宅でカビが生えやすいと言われる背景には、寒さを防ぐための高い気密性と断熱性、概ね10月から4月ごろまで続く長い暖房期間、窓を開けにくい豪雪期、そして室内外の大きな温度差という、北海道ならではの条件の重なりがあります。高気密・高断熱住宅そのものが悪いわけではありません。むしろ、快適で省エネな暮らしを実現するための優れた仕組みです。ただし、その性能は「湿気を計画的に外へ出す」ことが前提になっており、換気の不調や局所的な冷え、水蒸気の出しすぎが加わると、カビの発生条件がそろいやすくなります。
本記事で見てきたポイントを振り返ると、まず、カビは温度・湿度・栄養・時間がそろったときに育ちやすく、暖かい室内が長く続く北海道の冬はその条件に近づきやすいこと。次に、目に見える窓の結露だけでなく、壁の中で起きる壁内結露が、発見の遅れやすいリスクであること。さらに、築年数や断熱工法によってカビが出やすい場所や原因が異なり、新築であっても換気の使い方や家具の配置、断熱の小さな欠損などからカビが発生しうることです。
こうした原因は、見た目だけで判断するのが難しいものです。同じような黒いシミでも、表面結露によるものか、壁の内部から湿気が回っているのか、換気不良で部屋全体の湿度が高いのかによって、必要な対策はまったく異なります。原因を取り違えたまま表面だけを掃除したり、市販の薬剤を使ったりしても、しばらくすると同じ場所に再発することが多いのはそのためです。だからこそ当社では、含水率測定や付着菌検査、落下菌検査、浮遊菌検査などを組み合わせ、状態を数値で確かめてから対策を考えることを大切にしています。
日々の暮らしの中でできることもあります。24時間換気を止めずに給気口を開けておくこと、フィルターを定期的に掃除すること、家具を外壁から少し離して置くこと、部屋干しや加湿のしすぎに注意して湿度計で室内の湿度を把握すること、そして押し入れやクローゼットをときどき開けて空気を動かすことです。これらは小さな習慣ですが、長い冬のあいだ積み重なると大きな違いにつながります。
一方で、住まい手の工夫だけでは解決が難しいケースもあります。壁の中や天井裏、床下で湿気がたまっている場合や、換気設備の給気と排気のバランスが崩れている場合、断熱材の欠損がある場合などは、表面の掃除や除湿だけでは根本的な改善につながりにくいものです。「拭いてもすぐに戻る」「毎年同じ場所に出る」「臭いが消えない」といった状態が続く場合は、建物の側に原因がある可能性を考え、早めに専門業者へ相談することをおすすめします。放置する期間が長くなるほど、建材の劣化やカビの広がりが進み、対応が大がかりになることがあります。北海道の住宅とカビは切り離せない関係にあるからこそ、感覚ではなく数値で状態を把握し、必要なときに必要な対策をとることが、長く快適に暮らすための近道です。
Q. 室内の湿度はどれくらいを目安にすればよいですか?
A. 一般的には40〜60%程度が目安とされています。ただし、北海道の冬は湿度が低めでも窓や壁の冷えた部分で結露することがあるため、湿度の数字だけでなく、結露が出ている場所がないかもあわせて確認してください。
なお、カビによる健康への影響には個人差があり、咳や鼻炎、皮膚の症状などが気になる場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。住まいの側の対策と、体調面の相談は分けて考えることが大切です。
カビバスターズ北海道では、素材を傷めにくいMIST工法®によるカビの除去、カビが生えにくい環境づくりのご提案と、含水率測定・付着菌検査・落下菌検査・浮遊菌検査(菌検査は有料オプション)などの各種調査をワンストップで行っています。調査結果をもとに、原因と状態に合わせた施工内容をご提案し、施工後は換気・湿度管理など、カビが生えにくい環境づくりもご案内しています。費用は現地の状況や施工範囲により異なりますので、まずは現地調査でお住まいの状態を確認させてください。札幌・旭川・函館・帯広・釧路・北見をはじめ北海道全域に対応しています。「新築なのにカビが出た」「毎年同じ場所にカビが出る」「壁の中が心配」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
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